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憧れの異世界はやっぱりとても大変な世界  作者: 花聖
最終章 魔王と異世界生活
122/132

111 深夜の戦い

のんびり更新中♪

「すみません、騎士団の皆さんいるっすか?……って、何すかコレ!?」


 ヴィクシスが北門にある騎士団の詰所に行くと、夜勤の騎士達は全員眠っていた。

 慌てて駆け寄って肩をゆすりながら声をかけてみるが、全く起きる気配がない。

 ヴィクシスが戸惑いながら門の上に向かってみると、そこで見張りをしていた騎士達も全員眠っていた。

 何が起こっているのかがわからず混乱するヴィクシスだったけれど、ここでアタフタしていてもどうにもならないと思い、急いでミオ達の所に戻ることにした。


 その頃、ミオとラウルも動いていた。


「行くよ、ラウルさん」

「おっけー」


 ミオはカバンからステッキを取り出して垣根の陰から出て行くと、黒ローブ達に向かって走りながら詠唱を唱えた。

 ラウルは黒ローブ達の姿は見えなかったけれど、とりあえずミオを追って走る。


「我が光の裁きをもって、開かれし封印の扉―――」

「え?ミオちゃん!?」


 突然、目の前を走っていたミオの姿が消えて立ち止まるラウル。

 キョロキョロと辺りを見回したけれど、何処にもミオの姿は見えない。

 どういうことだ?

 ラウルは深呼吸をして動揺している自分の頭を落ち着かせると、様々な可能性を考えた。

 そして、ある結論に達した。


「結界か!」


 ラウルが結界を解こうとしたその時、ミオが魔法を発動した声が聞こえ……首に光の輪が装着された。

 ミオが走りながら唱えていた詠唱は、魔力封印の詠唱。


「……ミオちゃん……俺の首輪外してもらえると嬉しいんだけど」

「え?あ、ごめんラウルさん。ちょっと待ってて……ポーションがないと……あ、1つだけ入ってた」


 ミオはカバンに入っていたポーションを飲んで魔力を半分だけ回復させると、逃げようと走り出した黒ローブ達に急いでスノーフロストを放ち、ラウルの魔力封印を解除した。

 ラウルは魔法が使えるようになると結界を解除し、結界の向こう側にいた黒ローブ達の姿をようやく目にすることが出来た。


「え、結界張られてたの?」

「そうだよ」

「あー、だからぼんやりして見えてたんだ」

「普通は見えないんだけどね」


 動けなくなっている黒ローブ達の前で、ヴィクシスが騎士達を呼んで来るのを待つ。

 しばらくすると、こっちに向かって走って来るヴィクシスの声が聞こえてきて、ミオとラウルはヴィクシスの方を振り返った。

 その時、ミオの背後から腕が伸びてきて……ミオは後ろから羽交い絞めにされて、首元にナイフを押し付けられてしまった。


「え?」

「ミオちゃん!?」

「おっと、動くなよ」


 どうやら、ミオが魔力封印を使ってポーションで魔力を回復している間に、木の陰に身を潜めていたらしい。

 ラウルがミオを拘束している人物に向かって攻撃をしようとすると、ナイフの先がほんの少しだけれどミオの首の皮膚を切って、ミオは痛みに顔を歪ませる。

 ミオの首筋に血が流れた。


「ミオさん!?」

「ヴィクシス、騎士団は?」

「それが、全員眠ってたんすよラウルさん!」

「なるほどねー」


 ヴィクシスはラウルの隣に立って拘束されているミオに目を向け、ミオの首筋から流れる血に目を見開いた。

 下手に動けば、黒ローブはミオの首を容赦なく斬り裂くだろう。

 成す術がなく表情を強張らせるラウルとヴィクシス。


「我々を拘束している魔法と、魔力封印を解除しろ」

「するわけないでしょ」

「ミオちゃん!?」

「ミオさん!」

「お前は、自分が置かれている状況がわからないのか?」

「……くっ」


 黒ローブが、ミオの首筋に当てたナイフを少し動かし、ミオの首筋にはさらに血が流れた。

 どうしよう……痛すぎてめまいがしてきそうだ。

 でも、黒ローブ達の拘束を解くわけにはいかない。

 時間の流れがとても長く感じられ、痛みで額には変な汗が滲んできた。

 この状況をどうにかしないととは思いつつ、ミオには何かを考える余裕もなく、ラウルとヴィクシスも動けずにいた。

 黒ローブはミオに魔法の解除を要求しながら首筋のナイフに力を込めていく。

 これぞ絶体絶命のピンチ!……などと思っていたその時。


「ぐはっ……」


 ミオを拘束していた黒ローブがうめき声を発し、ミオを羽交い絞めにしていた腕の力が緩み、ミオが膝から崩れ落ちるように倒れそうになったところを誰かが抱き留めた。


「大丈夫か!?」

「……エリアス……様?」


 ミオを抱き留めたのはエリアスだった。

 エリアスは、外から聞こえて来た物音で目覚め、部屋の窓から結界が解かれるところを目撃し、結界の向こう側にあった人影が見えて慌てて飛び出して来たのだ。

 部屋からははっきりとは見えなかったが、庭園まで来てそれが黒ローブやミオ達だということがわかり、ミオが拘束されているのを見て、気がつかれないよう背後から忍び寄って来て黒ローブを斬り伏せたのだった。


「ミオちゃん!」

「ミオさん!」


 ラウルとヴィクシスが駆け寄り、エリアスはミオをラウル達に託すと、拘束されている黒ローブ達の前に立った。


「何が起きている?」

「誰かが結界を張って、こいつらを通してたんだよ」

「騎士団は何をしている?何故誰も来ない?」

「騎士団の皆さんは、全員眠ってるっすよ!」

「は?どういうことだ?」

「俺、騎士団を呼びに北門の詰所まで行ったんすけど、詰所も城壁の上も皆眠ってたっす」


 ヴィクシスがミオの傷を魔法で回復させながら説明した。

 エリアスはヴィクシスの話を聞きながら眉間にシワを寄せて、黒ローブ達に目を向けた。


「口は割らないだろうが、お前達には拷問をさせてもらう」


 ヴィクシスに傷と魔力を回復させてもらったミオは、念のために凍らせておくようにエリアスに言われて、背中を斬られた黒ローブをスノーフロストで凍らせる。

 そして、全員で北門の騎士団の詰所に向かうと、騎士達はまだ全員眠ったままだった。

 魔法で眠らされているのか?

 ミオがディスぺレーションを使ってみると全員目を覚ましたので、おそらく誰かに眠らされたのだろう。

 王宮の入り口の方も同じように眠らされていたため、ミオがディスぺレーションで目覚めさせた。

 こうして、騎士団が動けるようになったので、黒ローブ達の氷を解除して拘束してもらい、ミオ達は部屋へと戻って行った。






 ―――――――

 ―――――

 ―――






 王宮でミオに魔力を封印された7人の黒ローブのうち6人がミオによって氷漬けにされ、ミオを拘束していた1人がエリアスによって斬り伏せられた頃、北門の向こう側には3人の黒ローブの姿と1人の騎士の姿があった。


「お前の言った通りだったな。本当に結界をすり抜けられるとは……」

「こっち側が見えてたってのは想定外でしたけど」

「だが、作戦は上手くいったのだから良しとしよう」


 ミオが魔力封印を使って魔力を回復している間に、身を隠しながら北門へと向かいくぐり抜けたのだ。

 北門では騎士団は全員眠らされていたため、そのことに気がついている者はいない。


「魔力封じられてるみたいですけど、大丈夫なんです?」

「我々はこのクリスタルを届けるだけだ。魔力が封じられていてもさほど問題はない」

「急ぎましょう」

「そうだな」

「それじゃあ、俺はここで寝たふりしないとなんで」

「では、魔王様の復活後に再会するとしよう」


 3人の黒ローブは森に向かって走って行き、騎士は門の内側に戻って城壁の上に上がると、他の騎士達と同じように倒れて目を閉じた。


「魔王様かぁ……復活したら、やっぱミオ様も戦うのかなぁ?ミオ様には死んでほしくないんだよなー」


 騎士の呟きは、雪が舞い降りる夜空の闇の中へと吸い込まれていった。






 ―――――――

 ―――――

 ―――






 コンコンコン


 朝日が昇って部屋が明るくなった頃、ミオの部屋のドアがノックされて、ミオは眠い目をこすりながら起き上がり、ぼんやりとしながら部屋のドアを開けた。


「まだ眠っていたのか?それは済まないことをした」

「エリアス様?……おはようございます」

「あぁ……中に入ってもいいか?」

「はい、大丈夫ですよ」


 部屋の前に立っていたのはエリアスで、ミオは部屋の中へと招き入れるとドアを閉めた。

 エリアスがソファーに座り、ミオはフリースの上着を羽織って隣に座った。


「昨夜は助かった。礼を言う」

「そんな、お礼だなんて。たまたま部屋から見えたので気がついただけですよ」

「あの結界がか?」

「まさか結界が張られてるとは思いませんでしたけどね。何だかぼんやりと黒ローブが見えたんですよ」

「は?」


 エリアスがよくわからないと言うような顔をミオに向けた。


「ぼんやりと見えただと?何がだ?」

「結界の向こう側がですよ」

「お前、あの結界の向こう側が見えたのか?」

「はい」

「結界は抜けられるし、隠匿結界でも見抜くことが出来るし、お前の体はどうなっているんだ?」

「それは、私にもちょっとわかりませんけど……」

「それよりもだ」

「はい?」


 エリアスはミオの両肩をつかむと、グイッと自分の方を向かせるようにしてジーッとミオを見つめた。


「何故、私を呼びに来なかった」

「え、だって緊急事態だったし、エリアス様の部屋わからなかったし」

「は?わからなくはないだろう。前に私の部屋で紅茶を飲んだだろうが」

「……この広い王宮の中で、たった1回部屋に行ったからと言って、覚えられるわけがないじゃないですか……」

「覚えられるだろ」


 何言ってるんですかこの王子様は。

 そんな簡単に覚えられてたら、モンフォワールの街のだって迷わずに歩けるんですよ!


 エリアスは、黒ローブにナイフを突きつけられて血を流したミオの首筋に手を当てた。


「大事に至らなくて、本当に良かった」

「はい……もう、死んだかと思いましたもん」

「本当に無茶ばかりする奴だな、お前は」

「あれは、無茶したんじゃなくて、想定外の出来事って言うんですよ」

「お前の所の団長……シャルルだったか?彼の気苦労が絶えないことに同情する」

「なんで今、シャルルさんが出て来るんですか……それに気苦労って何なんですか」

「はぁ……本当に気の毒に思う」

「何がですか!」


 何なんだそのため息は?

 その後、エリアスは朝食の時間までミオの部屋にいたのだけれど……朝から女子の部屋に入り浸るってどういう神経してるんだこの王子様。


 深夜に捕まえた黒ローブ達は、騎士団によって拷問にかけられたけれど、以前と同じように誰も目的などを話す者はおらず、結局騎士団の中の誰が黒ローブの仲間なのか、彼らの目的は何なのかを知ることは出来なかった。



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