109 動き出した黒ローブ
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シャトロワ王国のとある場所に集まる人々。
彼らはその場所を訪れ建物の中に入ると、皆同じように黒いローブを羽織った。
そして、地下にある薄暗い部屋に入ると、部屋の中央にあるテーブルの上に小さな黒いガラス玉……クリスタルを乗せた。
黒いクリスタルの数は10個。
「遂に揃ったな」
「いよいよですね」
黒ローブの中の1人が、テーブルの上に並べられた10個の黒いクリスタルを袋の中に入れて行く。
そして、透明なクリスタルを取り出すと、そのクリスタルに手を翳して魔力を込めた。
クリスタルの上に1人の姿が浮かび上がる。
それは、騎士の格好をした男の姿だった。
「いよいよ動きますか?」
「必要なものは揃った」
「わかりました。私が次に夜勤で門番を務めるのは、5日後から3日間です。その間に来れますか?」
「5日後の夜に到着するようにしよう」
「わかりました。門をくぐった後は、閉ざされた町の見張り役の騎士とご相談ください。こちらからも連絡をしておきます」
「わかった」
その後も打ち合わせを続け、最終確認を済ませて通信を切った黒ローブの男は、不敵な笑みを浮かべて集まった者達を見回した。
「では、出発するとしよう」
黒ローブの者達の人数は10人。
黒いクリスタルを入れた袋をカバンにしまって持った男を先頭に、ぞろぞろと薄暗い部屋から出て行った。
部屋に残されたものは、中央に置かれたテーブルと灯りをともした燭台のみ。
ここに、誰かがいた痕跡などは何もなくなった。
全員黒ローブを脱いでカバンにしまい、別の上着を羽織って10人は建物から外へと出て行った。
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―――
「魔王の封印が解除された時って、魔物の数はこんなもんじゃないですよね、たぶん……」
「そうだろうな。全く想像はつかないが」
訓練場で魔物との戦闘訓練をしながら、ミオは隣に座っているカミーユにぽつりと呟いた。
小説やアニメなんかだと、魔王なんかが現れたら数千~数万などという数の魔物達が押し寄せて来るのが定番だった。
ここは小説でもアニメの世界でもないわけだけれど……そういうところは同じような気もしている。
「うーん……シャトロワ王国で魔物達が押し寄せて来た時は、魔法陣が10個くらいありましたよ?」
「凄い数だな」
「私はそんな数の魔法陣は設置できないし、今出してる魔物の数がたぶんマックスなので……ラウルさん達に手伝ってもらってもこれ以上は無理ですし、そんな数の魔物が出せる場所もないですしね」
「今は出来る訓練をするしかないだろう。その時はその時だ」
「まぁ……そうですね」
それにしても、騎士団に入って来た新入団員は今年も大変だなと思う。
去年はルシヨット魔導国との戦いがあったし、今年は魔王の封印が解かれるかもしれないなんて状況に陥っている。
去年と今年の新入団員は、本当に気の毒だなと思いつつ、なかなか経験出来ることでもないし、貴重な経験と思えばラッキーなのか?などと思わなくもない。
ルシヨット魔導国との戦いの時は、新人騎士達は門の向こう側で支援に回っていたので、直接戦ったわけではなかったけれど、今回の魔王の件では新人も戦場へと借り出されるはずだ。
トラウマになって辞めてしまう人が増えないといいけれど……騎士達の中には、魔物や敵との戦いで重傷を負った人が騎士団を辞めてしまうということも少なからずある。
魔王の封印が解かれた時には、きっと負傷者も想像できないくらい多くなるだろう。
ポーションや回復魔法で治療は出来るけれど、負傷する際の痛みは普通にあるのだから、否応なしに恐怖心というものは植え付けられてしまうのだ。
「今年騎士団に入団した皆さんは、去年の新人さんよりも大変な状況ですよね」
「そうだな。気の毒だとは思うが……乗り越えてもらうしかないだろ」
「そうなんですけど……それにしても、魔導師団は全然新入団員が増えませんね」
「それを言うな」
今はルシヨット魔導国の魔導師達がいるから、魔導師団も潤っていると感じるけれど……所詮、まやかしの潤いだ。
悲しすぎる。
「そういえば、奴隷達が殺される事件ってどうなってるんでしょうね?」
「さぁな。この王国には奴隷制度がないから、何とも言えん」
「魔物達の様子が変わらないってのはいいことなんでしょうけど……何かが起ころうとしている時のこういう静けさって、敵が順調に計画を進めてるのが定番ですよね?」
「どんな定番だよ」
「うーん……ちょっとシャトロワ王国の様子を見に行ってきてもいいです?」
「いいわけあるか!何日かかると思ってるんだ」
「メーヌの森の城壁から行けばすぐですよ?」
「結界を通れるのはお前だけだろうが」
「結界が張られていない場所もあるって言ってましたけど」
「あのな……戦力的にはシャトロワ王国の方が、ペリグレット王国よりも何倍も上だ。それに、お前1人行ったところでどうなる」
「よそ者の方が見えることってあるじゃないですか」
「どんな理屈だよ」
当然のことながら、カミーユからの許可は下りなかったけれど、その日の夜にエリアスに連絡をしてみると、別に来るのは構わないと言われた。
そんなわけで、朝食の席で父親に力説して許可をもらい、カミーユに報告をする。
「エリアス様も来てもいいって言ってたし、父も行ってきてもいいって言ってくれましたよ?」
「はぁ?……何で陛下は許したんだ?」
「さぁ、それは私に聞かれても……」
父親に力説した内容は伏せておくことにする。
こうして、国王が許可したのにカミーユが許可しないわけにもいかなくなり、ミオはシャトロワ王国へと向かうことになった。
王女としてではなく魔導師として行き、明後日には帰って来るという約束で。
もしも魔王の封印に関する何かが起こった場合にすぐに閉ざされた町に向かえるように、同行するのはラウルとヴィクシスの2人だ。
それに関しては、シャルルを納得させるのには時間がかかったけれど、ミオの懸命の説得にシャルルが折れて、ミオ達3人はシャトロワ王国へと向かって出発した。
案外、シャルルはミオに甘い所がある……カミーユはそう思っている。
―――――――
―――――
―――
「え、もうメーヌの森に着いたんすか!?」
「そうだよ」
「こないだより早くなってない?」
「え、そうかな?」
炎帝ロック鳥に乗った3人は、メーヌの森に入りあっという間に城壁を越えた。
ヴィクシスは炎帝ロック鳥を見るのが初めてだったので、ミオが召喚した時には「何すかこの鳥!?」と目を見開いて固まっていた。
炎帝ロック鳥の背中で表情を強張らせながら乗っていたヴィクシスは、初めて入る魔物の森に、相変わらず表情が強張ったままだ。
「大丈夫だよ、ヴィクシスさん。ここの魔物達、たぶん侵入者以外には大人しいから」
「俺達って侵入者っすよね!?」
「ペリグレット王国の人間だし、身内じゃん?」
「そうなんすか!?」
「身内ってのは疑問だけどねー」
こうして、魔物の森の上空を飛んで行くと、シャトロワ王国側の城壁が見えてきて炎帝ロック鳥を下降させていき、城壁の前で待機させるとミオは結界をくぐり抜けて城壁の上に出た。
驚いた騎士が駆け寄って来たけれど、エリアスから連絡を受けていた騎士が慌ててやって来てミオに挨拶をした。
「すみません、この2人が入れる場所ってないですか?」
「それでしたら、もう少し北側に行くと入れますよ」
「ありがとうございます」
ミオは再び結界をくぐって炎帝ロック鳥に乗ると、北側に向かって移動させて、結界が途切れている場所から入った。
先程の騎士が連絡をしてくれていたようで、ここでは問題なく通してもらうことが出来た。
王宮がある王都は、ここからかなり北上した場所だ。
町の人々を驚かせないように上空を移動することにして向かう。
「なぁ、あれって炎帝ロック鳥だろ?」
「そうだな」
「あの魔物……乗り物として使えたんだ」
「俺達には無理だろ」
「やっぱ、そうだよな」
ミオを見送る騎士達は皆、何だか凄いものを見てしまった……そんな表情でミオ達が消えた空を見上げていた。
ミオ達が王都に着くのは午後になりそうだったので、通りがかりの町で昼食を食べることにして、炎帝ロック鳥から降りて町へと立ち寄った。
「ねぇ、ラウルさん」
「なぁに?」
「騎士団に潜り込んだ敵を見つける魔法ってないの?」
「さすがにそんな魔法はないよー」
「やっぱり、そうだよね」
「自白させる魔法はあるっすけどね。使うのは相当難しいらしいっすよ?」
「普通に皆が使えてたら、今頃拷問なんてこの世からなくなってるだろうからね」
世の中、そう上手く思い通りに行くものではない。
もしかしたら、この町にも黒ローブが潜り込んでいるかもしれないけれど、それを見つけ出す術はミオ達にはないのだ。
怪しい人物は……なんて思っていると、誰もが怪しい人物に見えてくる。
ここでこうして考えていてもどうにもならないし、今はとりあえず王宮に向かおう。
昼食を食べ終えると、再び炎帝ロック鳥に乗って王都へと向かった。
予定通り、午後には王都へと入ることが出来たので、ここから王宮までは馬車で向かうことにして馬車乗り場を探して馬車に乗り込んだ。
一応、クリスタルでエリアスに連絡し、王都に着いたので馬車で王宮に向かっていることを伝えると、「は?もう王都に着いただと!?」と、とても驚いていた。
まぁ、ペリグレット王国を出発する時に今から向かうと連絡したのだから、驚くのは当然だ。
城壁から王都までは、どんなに馬車を急がせても5~6日はかかるのだから。
―――――――
―――――
―――
「随分と早かったな。その2人は?」
「えーと、こっちが私の魔力回復とかしてくれるヴィクシスさんで、こっちがルシヨット魔導国の王様のラウルさんです」
「は?」
夕暮れ前に王宮へと到着したミオ達。
ミオが2人のことをエリアスに紹介すると、エリアスがラウルの顔を見て固まった。
「お前……何、国王連れて来てるんだよ!先に言っておけ!」
「あー、大丈夫だよ。俺、別に国王として来たわけじゃないしさー。今は、ペリグレット王国の魔導師団の魔導師だから」
「ラウルさんは、王様になる前はペリグレット王国の魔導師団に入っていて、今はペリグレット王国を守るのを手伝いに来てくれてるんですよ」
「そ……そうなのか?……とにかく、部屋に案内する」
戸惑いながらも、エリアスは3人を王宮の部屋へと案内してくれた。
ヴィクシスは王宮に泊るということでとても緊張しながらも興奮していて、移動しながら見ていてとても面白かった。
「ペリグレット王国は大丈夫なのか?」
「はい。なんか、落ち着きすぎていて逆に怖いと言うか……こういう時って、悪いヤツらは計画を推し進めているものじゃないですか」
「そうなのか?」
ラウルとヴィクシスを部屋に案内し、最後にミオの部屋を案内したエリアスは、ミオと一緒に部屋の中に入って来た。
「小説なんかだと、大抵はそんな感じですよ?」
「ここは小説じゃないぞ」
「ま、まぁ……そうですけど。でも、とりあえず気になったので様子を見に来てしまいました」
「私は、お前に会えて嬉しいがな」
徐に、エリアスがミオの腕をつかんで引き寄せると、背中に腕を回してミオを抱きしめた。
奥さんいるのに何やってるんですかこの王子様は!?
「どうした?顔が赤いぞ」
「エリアス様のせいですよ!」
異世界のイケメンの行動には、今だ慣れることなく戸惑うミオだった。
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