大同契 【その6】
本日、一話の投稿です
元均達が海を渡ってから程なくして小競り合いが始まったようだ。
風に乗って歓声や怒号が聞こえて来る。
初めは小さかった歓声や怒声が段々と大きくなって来た。
加えて、乾いた破裂音も時折聞こえて来る。
「……これは、鳥銃の音。倭寇も鳥銃を使うのですか」
「まあ、倭寇でも鳥銃位持っているものも居よう」
「なるほど」
オイオイ、関心するなよ……名前忘れた。
義禁府の従事官、そんな筈は無いだろ。
大体、ウチの国……朝鮮王国ですら、
鳥銃を持っているのは、氷雨商団の護衛団位だろうが。
倭国……日本で幾ら安価になったとは言え、たかが海賊が持っている筈がないだろ。
逆に言えば、間違いなくこれで決まりだ。
巽竹島を占領している連中は只の倭寇じゃない。
何処かの大名が裏で糸を引いている。
それが何処かを確かめる必要があるな……
できれば、何人かを生け捕りにしたい。
指揮官クラスと兵士……足軽クラスを何人かだな。
まずは、ここの戦いを収める事を考えるか。
雰囲気からして、元均は順調に負けているようだ。
もう暫くしたら、撤退を始めるだろう。
日没までに撤退を始めなければ、海を渡れないからね。
案の定、歓声や怒声が小さくなってきた。
元均が撤退を開始したのだろう。
気をつけなければならないのは、追い討ちが掛かれば此方も対応が必要になる事。
そうこうしている内に元均達が船に乗って撤退してきた。
敵は元均達を完全に舐めているのか、追い討ちすらかけていない。
元均は、それ相応の損耗を出しつつも何とか帰って来たようだ。
「……申し訳もありません」
空耳か??謝っている……
普通、この国の人間だったら言い訳から始まるだろ。
元均、実はいい奴なのか??
「将軍の責では無い。戦いは時の運、
将軍が無事に帰っただけで良い」
「……王世子様……」
おっさん、泣くなよ。
いや〜〜人の噂と言うか、歴史書なんて当てにならないね。
元均、実はとても良い人じゃん。
扱い易さ満点だよ。
さて、倭寇だけど追い討ちは掛けて来なかったけど、
ここに攻めて来ない筈は無いよな。
体制を整えたら、今度は向こうから攻めて来るだろうな。
まあ、それが此方の目論見でもあるけど。
「将軍、余はここで引き返す訳には行かぬ」
「王世子様、それはなりませぬ!
御身に何かあればこの元均万死に値致します!」
「余は悔しいのだ。国の大切な民を傷つけた連中に一矢報いぬ訳に行かぬ!」
「……王世子様……」
おっさん、もとい元均の顔が急に引き締まったよ。
「この元均、
一命に掛けましても王世子様には指一本も触れさせませぬ!」
「将軍、頼もしいぞ」
あの……パク・シル、そこで「あ〜あ」って顔をするの辞めてくれないかな。
せっかく、盛り上がっているのにさ。
いや、分かっているよ、完全な猿芝居だっていうにはさ。
でもさ、何事にも「様式美」ってあるじゃん。
これがそうなの。主従の契りを確かめる王世子と将軍。
かっこ良くね?
あっ、また冷たい目をする。
そんな事するとそっちにも振るからね。
「朴実、そちも頼んだぞ。将軍と共に余を支えてくれ」
「……御意」
ああ!!一拍空いた、一拍空いたよね。
「王世子様、私も微力ながら王世子様に従います」
ほらほら、義禁府の従事官の方がノリがいいよ、パク・シル。
頼むよ、お互い短い付き合いじゃ無いんだから。
「金従事官、王世子様は十分に貴様の武威をご存知だ」
「金従事官、余は頼もしい者達に囲まれているようだ。」
ナイスフォロー!!ナイスフォローだよ、パク・シル。
流石に長い付き合いだけあるよね。
やっと名前が分かったわ。
さて……この時間、夕刻に迫る頃にやって来ていないと言うことは明日の朝か?
まさかね、そんな甘い事はないだろう。
まず、間違いなく夜襲をかけて来る。
此方が油断していると思われる時に攻めるのは戦いの必須だからね。
となると、連中……倭寇は何を目印に船を進めるのか。
簡単な事だ。こちらの篝火を頼りに船を動かす筈。
なら、どうするか。
来て欲しい場所に篝火を焚いておけば良いと言う事だな。
さて、お迎えの準備を始めるとしましょうか。
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