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大同契 【その5】

本日、一話の投稿になります。

船旅は今世になって初めてだ。

正直、もう少しマシだと思っていた自分を殴ってやりたい。


「なんじゃ、こりゃ!」


と大声を出しそうになる。

こんなボロ船で海に漕ぎ出すってか……

甲板は揺れが激しいし、かといって船倉は臭い。

堪らなく臭い……


俺は出港してから、天気続きもあってずっと甲板にいる。

夜も甲板に近いところで寝た。


船倉には今まで溜まった腐臭が立ち込めている。

換気と言う概念が無いんだよね、この時代。

当然に衛生概念も無い。


「甲板は危のうございます、どうぞ下の方へ」

「余はかまわぬ、皆の勇姿を見ていたいからな」

「……承知いたしました」


船長と言うか、船頭の様な奴が何度目かの声をかけて来た。

流石にあんな船倉には入っていられない。

今世に生まれて10年以上経つが匂いには慣れないわ……


護衛筆頭のパク・シルは流石、海の近くで育っただけあって船は大丈夫な様だ。

ただ、氷雨商団ヨナ・サンダンの護衛団は海が初めての奴も多い。

はじめは興奮しているのか、しっかりしていたがその内に船酔いで船倉でへたる奴が増えた。


しかし、あんな臭い所でヘタっていると余計に酔うのではないか?

まあ、着いてから使えればいいか。


鳥銃と火薬は厳重に封印して積んである。

潮を被ると使い物にならなくなるからね。

後、数日でこの()()()()()も終わり。

騎馬で移動している元均ウォンギュン達と合流だ。


倭寇に占領されている巽竹島ソンジュクトを横目に、

俺たちは麗水ヨスに上陸した。


元均ウォンギュンの率いる騎馬隊はまだ到着していない。

大体、倭寇と言う海賊を相手になんで()()()なのかが理解出来ない。

まあ、餅は餅屋と言うし任せてみるが……


俺たちが上陸して、物資を陸揚げしていると倭寇達の斥候が現れた。

取り敢えず、矢を射かけて追い払っておいた。

鳥銃はまだ使()()()()


上陸した俺達に気付いているが、倭寇は襲っては来ない。

巽竹島ソンジュクトに引き篭もったままだ。

それが、逆に不気味な気もする。


 そうこうしている内に、騎馬隊が到着した。

俺達が上陸してから丁度二日遅れての到着だ。

まあ、相手は生き物なんだから、無理は禁物だよね。


元均ウォンギュン、参上致しました」

将軍チャングン、早い到着だな」


あれ?元均ウォンギュンの顔色が変わった。

嫌味じゃ無くて、本気で言ってるんだがなあ……まあ、いいか。

軽くフォローしとけば良いだろう。


「船と陸を駆ける騎馬とでは当然に速度が違う、

それを僅か二日の差で到着した将軍チャングンの指揮に余は感嘆したのだ」


「!!有難き幸せ、元均ウォンギュン心より嬉しく存じます!!」


いや〜やり易いわ、こいつ。本当に。

この調子で上手く動いてくれたら最高だけどな。


調子に乗った訳でもないだろうが、

このまま巽竹島ソンジュクトへ攻め込むと言うバカを止めた。


「倭寇など、一捻りにしてみせます」

「いや、元将軍ウォン・チャングンの武勇は分かっている。

せっかくなのだから余は将軍チャングンの武勇を聞かせて貰いたいのだ。」

「私のですか。大した事はありませんが」


いや、本当に扱い易いわ。

幕屋に入って、酒を飲みながら咸鏡道ハムギョンドでの戦いを語ってくれた。

確かに実践を経て来た指揮官の話が面白いのも事実だった。


ただし、元均ウォンギュンはやはり、騎兵の指揮官だと言う事も分かった。

この時代、朝鮮では陸と海の軍事行動の違いが明確に分かれていなかった。

どちらが「得意」と言うレベルで指揮官は兼務するのが常だ。

さて……どうするかだな。


ここで、元均ウォンギュンに作戦会議を持ちかけても乗っては来ないだろうし、

かと言ってこちらが先に突入も出来ない。


さりながら、どう考えても只の倭寇で無さげなあの連中に元均ウォンギュンが勝てるとも思わない。

ここは、幾ばくかの被害が出ても先に元均ウォンギュンに突入してもらうか。

そして、その後でこちらの作戦を実行に移せば良い。


「しかし、王世子セジャ様は慎重なお方ですな」

「何がだ」

「普通、兵糧など現地で調達するものです。それをこれだけの兵糧をお持ちになるとは」

「ふふ……余は戦には素人なのでな、ついつい用意したまでだ」

「いや、慎重なのは良い指揮官の素質でございます。流石、王世子セジャ様」


酒が入っても、流石に将軍と呼ばれるだけある。

目の付け所が違うという所か。

兵站と言う考えはまだ無い。

遠征の場合は行程分だけの食料でそれ以外の兵糧は現地調達が原則だ。


俺は今回はかなりの量の兵糧を用意した。

こちらに着いてからは全員にそれを振舞っている。

そして、空いた米袋は()()まとめて置いてある、今は。


更に二日後、武装を整えた元均ウォンギュン率いる部隊が海を渡って行った。

当然に馬に乗る訳にもいかず、船で渡って行った。

さあ、俺も準備を始めようか。


護衛団に空いた米袋に土を詰めて、腰の高さまで積み上げる様に指示をした。

港に向かって手を開くように積み上げさせた。

さて、準備は整った。あとは待つだけだ。













ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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