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稲作への挑戦 【その6】

昨日は体調不良で投稿できませんでした。失礼いたしました。

本日、一話の投稿です。


次回より当面の間、週2回投稿とさせて頂きます。

基本、水曜日と日曜日に投稿いたします。

よろしくお願いいたします。

前世では朝鮮王国の農業は肥料について意識が薄かったと記録にある。

戦国時代を経て江戸時代の日本は「金肥」と言って肥料を購入して使っていた。

江戸の町屋で郊外の農家などが糞尿を下肥の元として()()()()いたのだ。


しかし、朝鮮王国では施肥に関心が薄く、「金肥」などは殆ど無かったようだ。

大日本帝国に併合された後に食料増産施策で日本の農業技術が導入され肥料を使う様になった。


当時の朝鮮王国の水稲の在来品種を調べた記録によると肥料をやらなくても収穫出来る品種が多かったらしい。

逆に肥料を施すと実り過ぎて中折れしてしまう品種が多くを占めてもいた様だ。

俺が入手できる種苗も当然に朝鮮王国の在来種だから、施肥についても注意がいる。


今作は肥料については手に入るもので賄うとして、それ以外の技術の導入でも3〜5倍の収量は見込める。

それ程にこの時代の農業技術は未熟でもあった。


ただし、水利に関しての朝鮮王国の知識は最先端を行っている。

朝鮮王朝、最高の天才国王 世宗セジョンは農耕に切っても切れない「雨量」を記録させた世界初の国王だ。

世宗セジョンによって作られた雨量記録器は測雨器と名付けられた。


世宗セジョンの優れた所は「同じ規格」で測雨器を作らせ、「降雨日時」を記録させた事だ。

測雨器は1441年(世宗23年)8月に初めて作られ、翌年の 1442 年(世宗 24 年)5 月に改良され、使用された。


また水車などのかんがい施設も造られているが、財政上の理由もあり管理がされていない。

世宗セジョンの遺産を無駄に食いつぶしている感じだ。



「どちらにしても今年はこの状態だな」


俺は誰とは無く呟いた。


「……ソン・ジン様、何か仰いましたか」

「いや、独り言だ。気にしないでくれ」


俺の答えに満足したのか、チョヌは家族と共に耕起作業を続けている。

チョヌは妻と娘が一人いる。家族三人で小作人をしている。


「ソン・ジン様、手出しは無用ですよ」

「……分かっている」


隣に立つソン・ヨナが釘を刺してくる。

俺が手を出したくてウズウズしているのを感じているのだろう。

俺は、この国の身分制度の厳格さが嫌になっている。

初めは俺も作業を手伝おうとしたのだが、村長から待ったをかけられた。


地主が小作人と共に働く事は理に反すると言うのだ。

前世の民主国家に育った者からすれば「何それ?」だが今世は違う。

儒学が国是の朝鮮王国で理に逆らう事は罷りならぬのだ。


この点はパク・シルやソン・ヨナまでもが同意した。

この朝鮮王国では俺の考え方が異端なのだ。

結果、俺は技術指導以外はひたすら見学という事になった。

俺よりも体の小さい、チョヌの娘までが泥にまみれて働いているのに。


「土が本当に痩せているな」

「??土が痩せるのですか」


相変わらず、ソン・ヨナはソン・ヨナだ。


「栄養素……滋味の少ない土を痩せていると言うのだ」

「……ソン・ジン様はよくご存知なのですね」


いつの間にか、近くで作業していたチョヌが声を掛けてきた。


「……少しはな。滋味に溢れた土はもっと黒いし粘り気がある」

「……」

「山から腐葉土をとって来て漉き込むか」

「山からですか」

「ああ、山から落ち葉が腐った土を取ってきて漉き込めば、少しは変わる」

「村長が許すでしょうか」


山の入会権は村長の許可が必要になる。

まあ最悪、小銭を握らせれば許可を出すだろう。

そして俺の予想通り小銭を握らせる事で村長は山から腐葉土を採取することを認めた。

腐葉土を惜しんだのでは無く、山へ入る事自体を嫌がった様だ。


土作りが終われば、次は苗づくり……育苗だ。

俺は育苗のために一つの施設を作る事にした。

働いてくれる小作人たちにも少しでも報いる事も出来る施設だ。


この施設の設営には、村長からかなりクレームがついた。

しかし、最後は小銭の力もあって了解を得られた。

村長が()()()()で良い人でよかった。


「……ソン・ジン様、本当に良いのでしょうか」

「問題ない、村長は快諾してくれた」

「……小作人の家の側に井戸を掘るなど」

「気にするな、これも農業に必要だから作るのだ」


そう、俺は井戸を掘ろうとしている。

本来、井戸は集落の共同財産で当然に身分の高い者の利便性の良い所に掘る。

この村の井戸は村長の家の側にあり、小作人達の家からは遠い。


という事は農地からも遠いという事だ。

俺はそれを盾に新しい井戸の掘削を尊重に認めさせた。

当然に費用は俺持ちだ。


井戸、特に深井戸の水温は一定している。

大体、10°Cから20°C位だ。

この一定した水温が育苗には絶対必要なのだ。


はねくり備中を渡した辺りから、チョヌの態度が変わってきた。

何かを隠しているのは変わらないが、こちらに歩み寄ろうとしている。

そして、今回の井戸設置で家族の態度も一変した。


それはそうかも知れない。水は生活の上での必需品だ。

今までは毎日、村の中まで水汲みにいかなければならなかった。

水汲みはかなりの重労働だ。

それが、側に井戸ができて格段に楽になるのだ。


「ソン・ジン様、ありがとうございます」

「いや、気にしなくていい。必要だから作っただけだ」

「それでも、感謝させて下さい。本当にありがとうございます」


家族揃って頭を下げられた。


「そこまで言うなら、感謝を受け取る」

「はい、ありがとうございます」

「これからも頼む」

「……一層、励みます」


恒温水も確保できた。次は育苗の為の施設作りだ。

ここまでお読みいただき感謝いたします。

頂きました、ご感想、ご評価、ブックマークが励みになっております。

今後ともよろしくお願いいたします。

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