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低利貸し始めました!

 俺がキム一族から得た農地と自身が遺産として引き継ぐ事になる農地の位置を地図で確認していると、ソン・ヨナが部屋の外から声を掛けて来た。


臨海君イメグン様、少しご相談があるのですが」

「ソン・ヨナか。構わん、入れ」


ソン・ヨナが結構な量の書類を抱えて入って来た。


「何だ、その書類の山は。何かあったのか」

「はい、実は……」


ソン・ヨナが持って来たのは現在闘銭房トウジョンバンを中心に貸し付けている高利貸しの証文と帳簿類だった。闘銭房トウジョンバンが4軒あるので単純に4軒分の貸付残高と言う事になる。

ソン・ヨナが総額を計算した所、五千両を超える様だ。総額があまりに多い様に感じるのでソン・ヨナに聞くと支払えなかった利子が含まれている為で元金だけを単純に足し算をすると二千両そこそこと言う。連中はかなりあくどいやり方をして居た様だ。

キム・トンスに毎月納める分の内で高利貸しからだけで二千両にのぼるらしい。


「二千両!」


俺は思わず声を出してしまった。元金が五千両として十日で二割なら毎月三千両になる。

その内の3分の2を巻き上げて居たと言う事だ。確かにキム・トンスが差し出した資産は現金だけで百万両を超えていた。キム・トンスの金の内の何割かが仁嬪インビンへも渡って居たはずだ。それだけの金があればどれだけの貧民が救われた事か。


「私は利子の上乗せ分を無効にしたいと思います」


証文と帳簿を確認しないとだめだが一番の問題は「基準日」をいつにするかだ。

ソン・ヨナの理想はわかるがいきなり持ち出しから始めるのも良くない。


「契約は契約ですが、キム・トンスが仕切っていた期間は利子をなかった事とします。その上で、元々の元金で5分の日々払いで契約をし直します。帳簿を調べた所ほとんどの借主に利子分の上乗せがありますので文句は出ないと思います」


それはそうだろう、借金を減らしてもらって文句を言う人間はいない。

ただ証文の書き直しが大変だな、事務量が膨大になるからね。ソン・ヨナの相談はそれだろう。


「まだ、事務をお願いする方々も決まっていませんし……」

「証文を印刷すればいい。証文は同じ文面が殆どだから先に印刷しておくのだ。印刷しておけば証文を書く手間を減らせることができるだろう」

「印刷ですか……有難う御座います臨海君イメグン様。先が見えて来た気がします」


 この時代の朝鮮王国の印刷技術は進んでいたし、庶民の職人もいる。

証文なんて予め印刷しておけばいい、いちいち手書きするから手間が掛かるんだ。

次は行首ヘンス達を集めて話を通す事になる。


 はじめ、利子を十日で5分にする話しをすると、かなり反発をされた。

強行突破はしたくないし……と頭をひねっていると例の闘銭房トウジョンバン行首ヘンスと目があった。

俺が借金を背負わせたあの行首ヘンスだ。


行首ヘンス、何とか話をのんでくれないか。当然に行首ヘンスの証文も書き換える」


途端に行首ヘンスの顔色が変わった、それはそうだろう。十日に一度、二千三百両を揃える為に四苦八苦しているのは知っている。それが六百五十両になり、おまけに元金も減る、顔色も変わるだろう。


「儂は賛成だ。新しい大行首デヘンスのお考えに賛成する」


場の雰囲気がいっぺんに変わった。この行首ヘンス、中々発言力がある様だ。

 後から聞いた話では他の三人の行首ヘンスは元々この行首ヘンスの子分だったそうだ。話はトントン拍子に進んで十日で5分の低利貸しが決定した。基本の話が決まると後は早い。

結果的に低利貸しは氷雨商団ヨナ・サンダンの店舗が大きいこともあり本店に集約する事にした。

闘銭房トウジョンバンは本業一本にした。ただし、あまり悪どい事はしないと言う約束だ。

まあ、社会には息抜きも必要だからね。


 集金人兼事務を担ってくれる元妓生の女人は結局二十人近くが集まった。

年齢は30歳位から40代位までの女人が多い。全員が私娼をせずに生活をしていてかなり苦労している様だ。ペク・セックの妹も小間使いで来てくれる事になった。


給金は大人並とは行かないが一定の収入が確保できるのがありがたいと母親から感謝されたらしい。

集金人は基本、元妓生の女人と不良少年の二人で回る事にした。用心に越したことはないからな。ツーマンセルはミッションの基本だと思っている。


不良少年と言いながら、最近は言葉づかいや行いが心持ち丁寧になって来た。

人間は環境に左右されるのだろう。何人かの少年はソン・ヨナに文字を習っている。

氷雨商団は証文に訓民正音フンミンジョンウムを使う事になった。


公文書にはまだ使われていないが、少しでも借主が書かれていることが判る様にとソン・ヨナが決めた。公になる帳簿や公文書は漢文を使っているが氷雨商団ヨナ・サンダンは基本、訓民正音フンミンジョンウムを使っている。訓民正音フンミンジョンウムは前世ではハングル文字と呼ばれた文字の事だ。朝鮮王国で公に使われる様になったのは国の末期の頃だ。


 氷雨商団ヨナ・サンダンが軌道に乗り始めたので俺はいよいよ、次のステップに進めると思った。

だが意に反して邪魔をしやがる奴が現れた。これが仁嬪インビンならまたか〜となる所だが今度は新しい奴だ。本当にいい加減にしてほしい。


 ソン・ヨナが氷雨商団ヨナ・サンダンの一つの目玉にしたのが多重債務者への営業。

前世日本で言う所の「おまとめローン」だ。

庶民が身売りに至るパターンは十日で二割の利子が用意できない→別の高利貸しに借りる→利子が用意できない→また別の高利貸しに借りる……の繰り返しで最後は身売りになってしまう。


帳簿や証文を調べて行くと多重債務者の大半が4軒の闘銭房トウジョンバンの高利貸しで借りていたので利子に利子を上乗せした分を差し引いたりして一つの借金に整理していった。正直言ってかなりの損失金が出たが今後の事を考えて投資だと考えれば良い。


そこで黙っていられないのが他の高利貸し達だ。ソン・ヨナは4軒分の債務者の整理が終わると他で借りている分の処理に乗り出した。氷雨商団ヨナ・サンダンで借金をまとめる事を条件に他で借りた分を借金に組み込んで行ったのだ。初めは他の高利貸しも貸した金が返ってくる分には文句を言わなかった。だが高利貸たちもバカじゃない。客が減って行くにしたがって氷雨商団ヨナ・サンダンの目的が理解できて来た。


高利貸しは正直に言うと利子以上に身売りの時の差額が美味しい儲けになっていたのだ。氷雨商団ヨナ・サンダンは利子を減らす事で身売りする庶民を減らし、合わせて融資を受けやすくして客を増やしている。それに反比例して高利貸したちの客は激減して行ったのだ。おまけに身売りする者も大幅に減って旨味がなくなって来た。

 前世の世界なら自分達も利率を下げたりして「営業努力」をするのが普通だが、今世のこの国では「賄賂」と書いて「えいぎょうどりょく」と読む様だ。ホント、いい加減にして欲しい……



ここまでお読み頂いて感謝致します。

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ホント、嬉しいです。

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今後ともよろしくお願い致します。

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