閑話:紫と赤とほんの少しの白
紫のバンシー、ハイロ目線の話になります。
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まだ私の花が蕾だった頃。
お父様に何度も聞かせてもらったお話がある。
旅人様が魔人族のために戦い世界を平和にする。
よくある英雄譚の1つだと思ってた。
でも、なぜか忘れられなくて
何度も何度も思い出していた。
それから月日が経って大きな戦争があった。
たくさんの家族が殺された。
人間が憎くて憎くて仕方なかった。
大きな足枷(隷族の首輪)と人質をとられ
もう戦うことさえできなくなっていた。
そんなとき、一人の人間と出逢った。
瞬間、頭の中が真っ白になり
気づいたら槍を人間に向けていた。
また、わたしから家族を奪うのが赦せなかった。
殺そう。
例え、私が死ぬことになっても。
そう思った時。
そいつは私の槍に自分から飛び込んできた。
なぜ、殺そうとした私をそんな悲しそうな目で見るんだ。
なぜ、血だらけの手で「なにもなかった」と言えるんだ。
なぜ、私を庇ったときの姿がお父様と被るんだ。
その人は旅人様だった。
私が憧れ、何度も夢に見た英雄だった。
そして聞いてしまった。
なぜ、自ら槍の穂先に飛び込むような馬鹿な事をしたのかを。
「理不尽なアイツらと同じ人間」だとさ。
殺そうとした私を、殺さないために
槍を向ける私に飛び込んだんだとさ。
そんな事する人間が、アイツらと同じわけないのに。
人間は憎いし、きっとこの殺意は消えないだろう。
それでも、もし旅人様になにかあったら
次は私があなたを守ろう。
私があなたの盾になろう。