閑話:紫と赤とほんの少しの白 02
赤のバンシー視点の話になります。
時系列は、神崎が初めて村に来たときの話です。
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神聖樹の麓でにある家の扉を私は駆け足でノックする。
「村長。失礼します。」
軽く一礼だけして、返事を聞く前に中へと入る。
「あぁ。赤か。キィの実は無事収穫出来たかな?」
いつも通りの優しい表情。
きっと、私の一言で驚き顔に変わるのだろう。
「村長。それどころではないんです。」
被せるように、勢いよく話してしまった。
少し、はしたなかっただろうか?
矢継ぎ早に、私は事情を説明した。
「旅人様と出逢いました。」
私は村長の驚き顔を楽しみに、言葉を待った。
「ほんとうに旅人様だったのかい?」
少しだけ、不安そうに訪ねる。
「はい。旅人様本人もそう話していましたし。
なにより、共通言語が通じませんでした。
他にも、決定的なことはいくつかありましたが…。」
「そうか…。」
その一言を溢した瞬間、村長の表情が少し悲しそうに見えた。
いつもと変わらない優しい笑顔のはずなのに
なんだか、寂しそうな。それでいて少し儚げな…。
「どんな人だった?」
顔をまじまじと見ていた私に村長は
なにもなかったように、聞くもんだから
それ以上、追求することはできなかった。
「幼くて、少し弱々しく思えました。」
出逢った時の、正直な感想を伝える。
「それだけ?」
紅茶を飲みながら、続きを促すように視線を向ける。
「それでも、すごく優しくて。温かい人でした。
あんな人族様、見たことないです。」
ほんとうに、信じられない光景だった。
魔人が口にした食べ物を食べて「美味しい」と口にしたり、
私たちの今の状況を聞いて、本気で憤怒していた…。
むしろこれで実は人族ですって言われた方が驚きです。
「なら、一緒に迎えに行こう。私もみてみたい。」
身支度を軽く整え始める。
きっとあの方なら、大丈夫。
戦いが終わってから、ずっと無理して笑ってるあなた(村長)のことも
きっと救って下さいます。
まだ、知り合って間もないのに
そんな確信を持ちながら、
二人で旅人様のもとへと駆けつけた。




