俺の婚約者シャモ。
数ある小説の中から、この小説に辿り着いていただいてありがとうございます。
連載始めました。よければ読んで感想ください。
訂正:最後から2番目の友達のセリフを「・・・。うふふ」→「・・・。ファッファ」へ訂正。フラミンゴなので。
「ちょっと待って、待って~。シャモ、ちょっと戻ってきて~」
俺は転生者。物心ついた頃、この世界が前世とは違う環境だと理解した。
魔法があり、魔物がはびこり、王がいて貴族がいる縦社会。
俺は神様に合った事はないが、この世界では本当にいるらしい。
実際に神託の為に、たまに協会に現れるそうだ。
俺は王都にある商家の跡取り息子。
王都の学園を去年卒業し、父の指導のもと商売について学んでいる最中だ。
このたび俺に、貴族の婚約者ができた。
相手は、災害で領地が疲弊し、借金まみれになった歴史だけは古い子爵家次女のシャモ。
父は、借金の肩代わりをする見返りに、歴史ある貴族と結びつき、新たな貴族との取引パイプを作りたいらしい。
シャモは、小さく、華奢で、大柄の俺が抱きしめると潰れてしまいそうな大きさだ。
実際抱きしめたことはないが・・・。
顔は、まあまあ可愛い。
この世界に多い茶色の髪をボブに切りそろえいる。目も茶色で、奥二重。小さい鼻に、ぷくり唇。笑うと左頬だけにえくぼができる。本当に幸せそうに笑う元気な子だ。
シャモは、王都の学園に今年から通っている1年生。
当然、貧乏子爵家に娘の王都での衣食住を賄えるほどのお金はなく、シャモは俺の家から学園に通っている。
「ちょっと待って、待って~。シャモ、ちょっと戻ってきて~」
「なに?レイザーさん。友達待ってるんだけど」
朝の登校前のシャモを俺は玄関前で引き留めた。
「・・・おはようございます」
小さい声、友達が玄関前に立っている。
「うん。おはよう。友達その恰好でここまで来たの!」
「・・・はい」
小さな声で返事する友達。
「あー。友達もいいかな、ちょっと二人とも玄関の中に一旦入ろうか。ね。ね。ね。」
俺は玄関の扉を全開にして、笑顔を作って、圧をかけた。
「学校遅れちゃうよ~」
ふくれっ面で、ぶつぶつ言いながら、シャモと友達が玄関の中に入ったので素早く扉を閉めた。。
「うん。シャモ。今日は面白い物履いてるね。これ、どおしたの?最近流行ってるの?」
シャモは、この世界にはないルーズソックスを履いている。そう90年代、安室〇美恵が全盛期だったころ女子高校生の間で流行ったルーズソックス。シャモが履いているのはその劣化版。正確には生地に伸縮性はほとんどなく、白い布を足に履かせただけ、余った布が足首の所に集まり、団子状になっている代物。
「二人で作ったの。凄いでしょ。"白鳥ソックス"って言うんだよ」
”白鳥ソックス”・・・白いからなのか、ネーミングにセンスがなさすぎるぞ。
得意げのシャモは、玄関で一回転。友達も控えめに一回転。
「お、おお。これどうなってるの」
俺が、シャモの劣化版ルーズソックスを触ろうとしたら
「エッチ!許可なく女子に触っちゃダメなんだよ。これはね、こうなってるの」
シャモは、足首の所に溜まっていた布を上に引っ張り、股の付け根まで持ち上げる。
「制服のスカートって、風がすーすー入って寒いんだよね。だから防寒着。寒い時は、この生地を伸ばして股まで上げて暖を取るの、熱くなったら下げるんだよ」
小鼻を膨らまし、小胸を張って、得意げに説明するシャモ。
説明している時点で、パンツ丸見えなんだが・・・。ああ、今日は花柄なのね。
「あああ、友達は上げなくていいよ。うん、機能はわかったから」
「んー2人ともいいかな。あー。今日はそんなに寒くないし、これ履かなくてもいいんじゃないかな」
「えー。せっかく作ったのにー。履いて行きたい」
ほっぺたを膨らまし、納得いっていないシャモ。
「納得いってない。うん、そうだよね。えーと、じゃあ今日は俺が学校まで送るから、寒くないよね」
「やった!送ってくれるのラッキー。じゃあ、明日は履こうね」
「うん」
シャモと友達は笑顔で頷きあっている。
「あー。あー。この布「白鳥ソックス!」はい、白鳥ソックスね、俺に預からせてくれない。白い布じゃかわいくないでしょ。俺がかわいくアレンジして返すから」
ジト目で俺を見た後、シャモは白鳥ソックスを脱いで俺に渡した。続いて友達も脱いで渡してくる。
俺は白鳥ソックスを受け取り
「じゃあ、学校行こうか」
シャモと友達を学校に送り届けた。
◇◇◇
「どうしたもんか…。」
俺は、白鳥ソックスの前で腕組み。
シャモの事だ、明日になれば、履きたいと言い出すぞ。
ここは異世界、伸縮性のある布は高級で希少価値が高く、今から調達するのは難しい。
んー。布について何も知らない俺が考えても仕方ない。餅は餅屋、服は縫製工場。行ってみるか。
俺は早速、王都の端にある自社の縫製工場に足を運んだ。
「坊ちゃん、よくお越しくださいました」
縫製工場のゲン工場長がお出迎え。
「突然押し掛けてすまない。いいかげん坊ちゃんはやめてくれ、俺は、もう成人した大人なんだ」
この工場長、工場で一番の古参。他の縫製工場で働いていた所を親父が見初めて引き抜き、親父と一緒に縫製工場を立ち上げ、今では王都で一番の大規模縫製工場にした実力者だ。
俺にとっては、幼いころ、よく遊んでくれたゲンおじちゃんだ。
「はははは。今日は何です?わしに相談したい事があるとか」
「そうなんだ。俺の婚約者シャモが、また変な物作ってな、見てくれ」
「何ですかこれ?何に使うんです?」
工場長は布の細部まで目を光らしている。
「これを靴下のように履いて、寒い時には股下まで上げて防寒着。熱くなったら下げて歩きたいらしい」
「また、けったいな物作りましたね。
んー。この布では、股下まで上げてもズレ落ちるでしょう。伸縮性がほとんどない。伸縮性の布はすぐには調達できませんが、糸の編み方である程度の伸縮性を持たせることは出来ます。でも完璧じゃない。始めは良いが、使っていくうちに、布がヘタレてずり落ちてくるでしょう」
「話を聞くと、シャモお嬢さんは、保温の為と、手で持ち運ばず、寒い時にすぐに履ける物を希望のようだ。だったら靴下のように足先を覆う形じゃなく、筒状の形にして下肢を覆えるように長く作る。足先に布がないなら毛糸で編んでもいい。動物の毛で作ってもいい。見た目ふわふわでシャモお嬢さん喜びますよ」
「シャモは、下肢全体を覆うように長く作ると、布を上げる時パンツまで見えるんだ。婚約者としては、他の男に見られるのは許せない」
「まあ~。お熱いね~。坊ちゃんも男だね~。わしは布は膝下までで良いと思いますがね、膝関節まで覆ってしまうと、可動域が大きくなるから布がズレやすくなる。布が短かったらコストも抑えられるし、作るのにも手間じゃねえ、ズレもそれほど出ないでしょう」
「1つ、試作品を作ってくれないか?」
「はいわかりました。今日中ですかい?」
「今日中で、お願いしたい」
「はい、了解しやした。何個か試作品作っておきましょう。ズレの問題はどうします?紐で結んで止めるようにしますか?」
「ああ、2セット頼む。一旦は紐を付けといてくれ。俺にいい考えがあるんだ。夕方また伺うよ」
俺は、その足で王都の端にある、自社の文具製造工場へ向かった。
◇◇◇
ここでは、眼鏡をかけて、少しふっくらした文具制作担当主任の中年女性、リルさんが出迎えてくれた。
この女性、自他共に認める、文具マニア。いやオタクと言っても過言では無い。
子供が成人した後、どうしても文具に携わる仕事がしたくて、自作の文具を持ち込み、親父に自らを売り込んだ。親父は心意気を気に入り、即採用。
今では、機能的でかわいい文具を開発し、次から次へとヒット商品を生み出す、やり手のウーマンだ。
「すまないな、突然押し掛けて、いつも世話になる」
「いいえ、こちらこそ。インスピレーションがわきます。シャモお嬢さま、なた何か始めましたか」
「そうなんだ。今回は皮膚にやさしいのりを開発してもらいたい」
「皮膚にやさしいのり?皮膚にのりを塗るんですか?何の為に?」
俺は思い出していた、俺が高校生だった時の事を。クラスの女子達はルーズソックスをスティックのりで止めていなかったか。
「足に塗って長い靴下を止めるんだ。液体のりではなく、固形の溶かして使用するスティックタイプのりが欲しい」
「固形のり・・・。スティックタイプ・・・。詳しく」
俺は、俺の知っている範囲で、形状や機能、色や硬さなどを説明した。
「面白そうですね、やってみましょう。少しお時間を下さい。試作品が出来上がりましたらご連絡します」
俺は、リル主任と硬い握手をかわして別れた。
帰りに、裁縫工場へ足を運び、試作品を受け取った。
俺は驚いた。出来上がった物は、まさしくレッグウォーマーだった。
◇◇◇
「ただいまー。学校から帰って来たよー。はあ、疲れたー。」
疲れたと言いながら、学校のバックを俺に渡そうとするシャモ。
「おかえりー。友達もお帰り。バックいらない、いらないよ。自分で持てー」
「・・・ただいま」
小さい声で友達は答える。
「二人とも、手洗いうがいしておいで、朝の”白鳥ソックス”改良したんだ。履き心地を教えて」
「ホント!やった!すぐ手を洗ってくる、行こう」
シャモは友達の手を取って洗面所に向かった。
「これが、白鳥ソックスだよ」
シャモと友達の前には、毛糸で編まれた伸縮性のあるピンク色のレックウォーマーと、白い兎の毛を使用したふわふわのレックウォーマーが並んでいる。
シャモも友達も顔を真っ赤にして、目を輝かせている。
「凄い、凄い、レイザーさん凄い!かわいい、かわいい。触っていい。履いてい?」
「どうぞ、履いた感想教えて」
2人は、おそるおそる兎の毛で作られたレックウォーマーに足を通した。
「柔らか~い。暖か~い。見て、見て、動いてもズレないし、ふわふわで動くたびに白い毛が揺れてかわいい~」
「・・・。うふふ」
シャモも友達も、とてもうれしそうに、リビングを走りまわっている。
「今度はこっち、こっちも暖かい。肌にぴったりくっついて、ズレないし白鳥じゃなくて、ピンク色だからフラミンゴみたい」
「・・・。ファッファ」
シャモと友達は、片足になりバランスをとっている。
「気に入ってくれたら何より。明日はこれ履いて登校するんだよね」
「うん。そうだよ。みんなに自慢しなくちゃ。ありがとうレイザーさん。君は最高の婚約者だよ」
「・・・ありがとうございます」
次の日、ふわふわのレックウォーマーを履いて登校したシャモと友達。その姿を見た女子生徒達から、我が商会に購入の問い合わせが殺到。急遽生産ラインを整え、大量生産。レックウォーマーのブームを巻き起こした。後から皮膚にやさしいスティックのりも発売され、爆発的にヒット。我が商会は業績を伸ばした。
白河・DG・夜舟様に頂きました。レイザーから見たシャモ。(抱きしめたことはありません。レイザーの妄想です)
読んで頂きありがとうございました。
レイザーは19歳。シャモは13歳の設定です。




