─しあわせの、なないろ。
桜が咲いている。
しかし、残念ながら、天気は雨だった。
車の窓ガラスから桜を眺めている、少年は明らかに不満そうな顔をしていた。折角の休日に出かける事が出来たというのに、この天気ではそれも無理はない。
晴れる事を願って作ったテルテル坊主は、紫色のお守りと共に、車の正面のガラスに吸盤でくっつけて飾られている。
「……そろそろ、晴れてくれるといいなぁ」
「おでかけなのにぃ」
窓の外を見る事が飽きたのか少年は、車のシートに深く、座り込む。
つまらなそうに、下を向いている。
「あ」
隣から聞こえた声に、少年は思わず顔をあげる。
雨は上がり、どんよりとした分厚い雲の隙間から、光が差し込んでいた。
そして、目の前に大きな、大きな虹がかかっていた。その虹を見て、少年は持ってきていたリュックから何か取り出した。
「父さんがくれた、このパスポートとおんなじ色だ!」
少年は虹色のきれいなパスポートと空にかかった虹を見比べた。
「晴れたぞぉ。よし、どこへ行きたい? どこでも好きなところへ連れて行ってやる」
「やったー! 待ってね、今決めるから!」
「ゆっくりでいいぞ、望」
虹のかかる空の下。父子の笑い声がする。
〈おわり〉
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
この作品、本当は冬童話への参加を目指していました。
残念ながら完成させることがかなわず、1ヶ月以上経った今、ようやく完結ということになりました。
若干、童話……?、という感じになりつつ書いたのでこれが立派な童話かどうかは分かりません。
でも、童話としてお楽しみいただけたのなら幸いです。
今回のお話は「色」がテーマです。
各話のタイトルにあるように色に関係した感じです。じつはテーマはそれだけでも無いのですが。
何にせよ、無事完結出来てよかったです。
本当に、ありがとうございました。
2015/2 秋桜空