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番外編・b

 キルは一人考えていた。

 

 森に潜んでいるだけでは何も楽しくない。だからといって、この物語を動かすのはまだ自分の番ではないことくらいキルにはわかっていた。

 

 数日前から感じる波動。懐かしくもあり、とてつもなく不快でもあるそれは、キルを考え込ませるのには十分だった。

 

「なーあぁー? そこにいるんだろー? 少し話し相手になってくれよ」

 

 キルは空に向かって声をあげる。

 

 周りは鬱蒼とした木々が立ち並ぶ森の中。キルの声は暗くなり始めた森に溶けていく。その瞬間、ガサッと近くの木々が揺れ、少し強めの風が吹く。

 

 そしてそこに、先ほどまでいなかったリスがちょこんと座っていた。

 

『きやすく、よぶな』

「お、来たなファル。なぁ、話し相手になってくれよ。どう考えてもあと数分で何かあるわけでもないだろ」

『もうすこし、じぶんのじょうきょうかんがえろ、きる』

「えー? もう十分色々考えたって。あんたのとこの主には、オレもう付いていけないって。よくあんなの奴の使い魔やってるよ」

『……ひていはしない』

「しないんだ」

 

 風の音に乗じて話す声たちは周りからよく聞こえない。

 それを知ってか知らずか、二つの声は互いを隠すように話し続ける。

 

『べつに、すべてをしんじているわけではない』

「んー、それは……どっちの話?」

『……かえる』

 

 キルの返答はファルの感情を乱し、少しの間を置いて風に乗っていった。

 

 ファルが消えゆくのを見届けてから、キルは先ほどまで見ていた方へ目をやる。そこからはなにやら城壁の上で慌ただしく兵士たちが動いているのが確認できた。

 

「おー、動いてきたな。オレは差し詰め使い魔より信用はされてないから安心しな、ファル」

 

 キルの声がファルに届いたのかはわからないが、そう呟いた顔には何とも言えない悲しみが滲み出ていた。

 

 

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