バレちゃうかもね?
(……ねえ、弥夢さん)
(……はい、三神さん)
(……私達、なんで隠れてるの?)
(……うん、なんででしょうね……)
それから、ほどなくして。
そう、声と息を潜め会話を交わす僕ら。……うん、ご尤も。でも、申し訳ないけどこのままお付き合いいただけたらと……。
さて、改めてだけど今いるのは廊下の角。そして、視線の先にはドリンクバーの前にて賑やかに会話を続ける六人の女の子。そして、僕らは壁の裏に身を潜め彼女らのご様子を……うん、不審者極まりないね。ほんとごめんね、三神さん。
(……ところで、弥夢さん。あの人達って……)
(……えっと、皆さん全員は分からないのですが……恐らくは、明陽のバレー部の方々かなと)
その後も、ひっそりとやり取りを交わす僕ら。蒼那さんはもちろん分かるとして、他の方々に関しては皆さん全員は分からない。……でも、蒼那さんの他に分かる方がお二人いて、その方々もバレー部なので皆さんバレー部なのかなと……いや、偏見かもしれないけど。ともあれ、我ながら勝手なのは承知だけど、できれば早くその場から――
「――ねえねえ、なんか色々混ぜちゃおうよ! コーラとウーロン茶と、あとオレ――」
……うん、やめて? いや、もちろんご自由なんですけど、今はやめて? その、今ごゆっくりされてしまうと少々困――
「――ええ、どのような組み合わせにしても構いませんが……注いだからには、ちゃんと責任を持って全て飲み干してくださいね? 山口さん」
「……あ、その……うん、やっぱりコーラだけにしよっかなぁ……」
すると、ご宣言通り意気揚々と混ぜようとしていた女の子へ満面の笑顔で注意をする蒼那さん。……まあ、そうなるよね、彼女の性格からすれば。ともあれ、ありがとうございます蒼那さん。後は、皆さんが去るまでどうにかここで身を潜め――
……いや、よくよく考えたらここに留まる必要もないのかな? ひとまず飲み物を諦め部屋に戻る、という選択肢もあるわけだし。……ただ、僕はともかく三神さんの分はちゃんと確保したいわけで……あっ、でもそれなら――
(……あの、三神さん。ひとまず、貴女だけでもお部屋に戻っていてください。皆さんが去った後、二人分の飲み物を持って僕もお部屋に戻りますので。なにがいいですか?)
そう、声を潜めたまま尋ねる。……うん、よくよく考えればそうだ。見られちゃいけないのは、あくまで三神さんと一緒にいるところで。なので、そもそもの予定通り僕が二人分を持って戻れば――
(……ふぅん、そんなに見られたくないんだ? 私と一緒にいるとこ。まあ、誤解されたくないもんね? あの綺麗な幼馴染みに)
(……へっ? あ、いえそういうわけでは……)
すると、ジトッと見つめそう口にする三神さん。……いや、でもそうなるよね。僕の都合でこんな面倒な状況に付き合わせてしまってるんだから、不満がないわけがなくて。……ただ、別に誤解されたくないとかでは――
(……っ!! ……あの、三神さん……)
(……離れたい? でも、今下手に動くとバレちゃうかもね?)
(……いえ、というより……)
刹那、呼吸が止まる。というのも……どうしてか、僕の右腕をその華奢な両腕でぎゅっとホールドしているからで。……あの、どしたの? あと、その状況だと、その……その、僕の腕に何とも柔らかな感触が――
(……あれ、もしかして照れてる?)
(……いえ、そんなことは……)
すると、戸惑う僕が可笑しいのだろう、からかうように尋ねる三神さん。そして、先ほどの不服なご様子から一転、今は何とも機嫌が良さそうで……うん、それならいっか。心臓には悪いけど。
さて、その後の展開だけども……お話に夢中になっていたからか、幸い僕らの方に目を向けることもなく去っていった皆さん。なので、警戒はしつつも僕らも無事ドリンクバーへと……ふぅ、よかった。




