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どういうわけか、この度バレー部エース(美少女)の専属コーチになりまして。  作者: 暦海


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理由

「――お疲れさまです、弥夢ひろむくん。そして、改めてですが本当にありがとうございます」

「……お疲れさまです、蒼那あおなさん。そして、こちらこそ本当にありがとうございます」



 それから、数時間後。

 茜色の空の下、柔らかに微笑みそう口にする清麗な少女。コーチと今日はどちらのお仕事もないので、こうして蒼那さんと帰路を共にしているわけで。



「……それにしても、本当にすごいですね。今日一日だけで、皆さんに入部を認めさせてしまうのですから」


 ほどなく、そう口にする蒼那さん。さて、何のお話かと言うと……いや、言うまでもないか。この度、晴れて僕が女子バレー部のマネージャーとして皆さんから認めていただいたというお話で。




「……ところで、弥夢くん。どうして、マネージャーになってくれようと思ったのですか? ……あっ、もちろん大歓迎ですよ! そもそも、私がお願いしていたことですし! ……ただ、純粋に理由が知りたくて……」

「ふふっ、そう慌てなくても。心配せずとも、誤解なんてしていませんから」

「……そ、それならいいのですが……」



 ややあって、控え目に尋ねる蒼那さん。……まあ、そうなるよね。今までずっと断っていたのに急に今日、女子バレー部のマネージャーを引き受けることにしたのだから。……さて、何とお答えするべきか……うん、ここはやっぱり――



「……その、僕でも少しでも蒼那さん達のお役に立てればいいな、と思いまして」

「……そう、ですか。……ふふっ、ありがとうございます、弥夢くん。本当に嬉しいです」



 そう、躊躇いつつ答える。……うん、嘘じゃない。実際、蒼那さん達の役に立ちたいとは思っているから。だけど……僕の返答に本当に嬉しそうな笑顔を見せてくれる蒼那さんを見てると、身勝手だとは承知しつつも尚のこと胸が痛くなる。だって……マネージャーを引き受けた一番の理由は、他の誰よりも三神みかみさんの役に立ちたいと思ったからだから。




「……それにしても、すごいですよね。皆さん、これほどまでに練習をなさっているのですね」



 その後も歩みを進めつつ、沁み沁みと今日の感想を口にする。今日は終業式で午前中に終わったため、通常の授業の日に比べ練習もかなり早かったのに、こんなにも遅い時間まで――



「……ふふっ」

「……蒼那さん?」

「……ふふっ、すみません。ですが、そういうわけではないんです。本来、今日はもっと早く終わる予定だったんです。ですが……弥夢くんのお陰で、皆さんいつもより張り切っちゃって。それで、結果的にこのような時間になってしまって……なので、すみません。予定より長くなってしまって」

「ああいえ! ……その、お仕事のない日であれば、僕は喜んで何時まででもいますので」

「……ありがとうございます、弥夢くん」


 蒼那さんのお言葉に、暖かな熱が心の中に広がっていく。もちろん頑張っているのは皆さん自身で、僕のお陰だなんて思わないけど……そっか、僕でも少しはお役に立てて――



「――ですが!」

「……ん?」

「……その、人気があるからといって……その、他の子とチャラいこと、とかをしては駄目ですからね? あくまで部の仲間としての、節度ある関係を……」

「……あ、はい、もちろんです」


 そんな感慨の最中なか、ふとじっと見つめそう口にする蒼那さん。だけど、唐突な言葉に驚いたものの、その意味するところは理解できる。つまりは、あくまで同じ志を抱く仲間であり、恋愛どうこうの感情を持ち込むな、ということだろう。なので――


「どうか、ご安心ください蒼那さん。恋愛どうこうというのは、そもそも全く考えていませんので」


 そう、はっきりと伝える。うん、これできっと蒼那さんも安心を――



(……いや、それはそれで困るんですけど……)

「……ん?」

「……いえ、何でも……」


 すると、少し目を逸らし呟く蒼那さん。だけど、何を言ったかまでは聞き取れなくて。……まあ、詮索なんて野暮なことはしないけども。言いたくなったら、その時にまた言ってくれるだろうし。






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