第五話『退院』
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──概要──
名前:七原 慎也
年齢:17歳
Lv:1
能力:ガチャ
──装備──
武器:なし
盾:なし
衣装:病院服
──ステータス──
攻撃力:14
防御力:15
持久力:16
素早さ:15
魔攻:0
魔防:0
△▼△▼
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──概要──
名前:アンファン・デュ・シエル
年齢:16歳
Lv:1
能力:なし
──装備──
武器:なし
盾:なし
衣装:フレンチガーリーな服
──ステータス──
攻撃力:16
防御力:25
持久力:36
素早さ:13
魔攻:0
魔防:23
△▼△▼
「全体的にお前のがステータス高いのな」
「うへへ」
「ドヤ顔……」
シエルは純粋で優しい。しかし優越感に浸る悪戯っぽさもある。彼女は二ヘラと口角を上げ笑っていた。
「ガチャも見とくか」
▲▽▲▽
【ガチャ一覧】
・一日六回『食事ガチャ』
・一日一回『アイテムガチャ』
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「俺のアイデンティティがだいぶ微妙なものになってきた……」
俺のアイデンティティ、『ガチャ』スキル。当初は『旅の仲間ガチャ』や『住居ガチャ』もあった。役に立ったし、シエルと出会えたのもガチャのお陰だ。
しかしその二つのガチャが失われ、残ったのは一日六回『食事ガチャ』と一日一回『アイテムガチャ』。俺の能力はほぼ『食料調達』だ。
「ん?」
文章のどこかに違和感があった。
一度目を通した部分を遡ってゆく。
「あ! 六回引けるようになってる!」
その違和感の正体を先に見つけたのはシエルだった。シエルは天真爛漫で子供っぽい。しかし俺よりも何かに気づくのが得意だ。
昨日までは三回までだった『食事ガチャ』が、二倍の六回引けるようになっている。
「シエルの三食分を補うためか?」
「でも昨日は三回だったんだよねー?」
「ああ。けどなシエル、俺の故郷だとガチャには『更新時間』ってのがあるんだ」
「『更新時間』?」
「ガチャの中身や設定が変わったり、引ける回数が戻ったりする時間のことだ」
「なるほど理解!」
「となると更新時間が隅っこに書かれてたり……」
じっくり見る時間がなく、画面の隅々まで目を通せていない。脳内で何となくアタリを付けて、ここら辺だろうと目を動かした。
「ビンゴ!」
「ビンゴ!……ってなに?」
「大アタリってことだよシエル!」
「おお! ガチャみたいだねシンヤ!」
表示される画面の大きさからして、首を少し傾けないと見えづらい右下の角に『更新時間』と書かれていた。ここだよ、とシエルに示すために指をさして、二人で確認する。
「零時か」
「一日の始まりだね!」
つまりは日付が変わると共に更新される訳だ。
ガチャは進化する。その可能性に気づき、少しだけ自分に期待が持てた。
「あ、そういやもう昼か」
昼ごはんが配膳され始めたのを見て、時間を思い出す。
右隣のベッドを見ると、今朝そこにいた兵士の男は既に居なくなっていた。
「ご苦労さまです」
『今日も午後からは門番やれって言われてらあ』──彼が言っていた事を思い出し、労りの言葉を呟いた。
〇
「お二人は次の目的地みたいなのは決めてあるんですか?」
日も暮れて、夕御飯も終わった頃。
背中のガーゼを、いつもの看護婦さんに変えて貰っていた。背中の傷はまだジリジリと激しく痛み、まだ激しい運動は出来そうにない。脚のひどい筋肉痛はほんのりと和らいだ。
「特には……。ただ何か職には就かなきゃな、と」
「兵士のおじさんも心配してたよ!」
「あ……」
今朝看護婦さんに相談した『入院費』の話を聞いていたのだろう。結局『入院費』は無料だったが、これからの事を考えると金銭面の悩みは尽きない。
ステータスから自分の能力を再確認したのも、この悩みあっての行動だ。
「では『冒険者ギルド』に行ってみては?」
ここに来て、異世界ものの定番組織が登場。
しかし他にも職業はある中、なぜ冒険者ギルドを俺に勧めたのか。筋骨隆々という訳でも無いのに。
「あ、すみません突然。シンヤさん、何か特殊な力をお持ちのようなので」
「え」
「聞いた話だと、『小屋』を一瞬で作り出した、と」
死霊術師の攻撃から身を守るために『小屋(木製)』を出現させたのを、助けに来てくれた人達に見られていたのか。
「はい、実は」
「そーだよ! シンヤ凄いんだよ!」
「もう夜だから静かにな」
「あ、ごめんなさい」
シエルがそう言ってくれたことに内心喜びつつ、声量を抑えるように注意を促す。シエルはハッとして、俺と看護婦さんに囁くような声で謝罪した。
看護婦さんは微笑みながら「普通に喋る分なら問題ないですからね」と優しく言った。
「それで『冒険者ギルド』の事ですが、あの組織は、シンヤさんのように特殊な力を持った方を重宝しています。それに、シンヤさんと同じような力を持った方がいるとも聞いています」
「俺と同じ力……?」
「えぇ。『どこからともなく物を出現させる能力』。その他にも共通点として、女性を一人連れている、珍しい服を着ている、最初は金銭的に困っていた、など」
「それは、何か関係があるかもしれませんね」
「なので提案させていただきました」
「貴重な情報、ありがとうごさいます」
「いえいえ、どういたしまして。──はい、包帯巻き終わりました。とにかく今はゆっくりお休みください。命に別状が無いとはいえ、傷は深いです。感染症に掛からない為にも、よく寝てよく食べる、これに限ります」
「はい、ゆっくり休みます」
「では失礼します」
そう言って、看護婦さんは他の患者さんの元へ行った。
「ふぁ〜」
色々考えていたら欠伸が出た。
「ふぁ〜」
釣られてシエルも欠伸をした。
「とりあえず今日はもう寝るか」
「だね」
布団を被って目を瞑った時だった。
モゾモゾと何かが布団の中に入ってくる。
思わず目を開けると、そこにはシエルがいた。
「ぎゃっ!」
驚いて大声が出そうになるのを、理性がギリギリ押し止める。
「な、自分のベッドがあるだろ?」
「一緒の方が暖かいかなあって」
柔らかく温かい身体。ここまで彼女を身近に感じたのは初めてだ。心臓が跳ねるように鼓動し続けている。
しかしここは病院だ。変な風に見られて、周りに迷惑をかける訳にはいかない。
「気持ちはありがたいが、このベッドじゃ二人では寝にくい。身体が当たると背中の傷も痛むから、自分のベッドで寝てくれないか?」
「言われてみれば!」
彼女はコロンと寝返りを打ちながら、布団から出て床に立つ。
「おやすみシンヤ!」
「おやすみシエル」
〇
──入院してから数日が経った。
「うん、傷の調子も大分いいし、明日の朝には退院出来そう」
「それは良かったです。手当から食事まで、色々とありがとうございました」
「はい、どういたしまして。……にしてもシエルちゃん、すごく楽しそうに手伝ってくれて、もっと一緒にやりたかったなあ」
看護婦さんは、夕食の配膳をするシエルを見ながら呟く。自分は動けるから、そういって彼女は三日目から病院の手伝いを始めたのだ。
何もしないまま、ただ受け取るだけは申し訳ない。そういう気持ちが彼女にもあったのだろうか。
いつでも笑顔で接する彼女に、患者さんも看護婦さんも、みんな魅了されたらしい。
「これ、シンヤの分!」
シエルは配膳係として、俺に夕食を持ってきてくれた。この夕食と明日の朝食で、病院食とはお別れだ。収入源を確保するまで、また『食事ガチャ』に頼る生活になる。
「いただきます」
感謝して、いただこう。
〇
「では改めて」そう前置きをして、
「「長らくお世話になりました!」」
シエルと声を合わせて感謝を伝える退院の朝。
「うん、二人とも命大事に頑張ってね」
すっかり見知った看護婦さんともお別れだ。
「僕も、いずれ何かの形で必ず恩返しをします」
「別にそう気負わなくてもいいのよ? 無償とはいえ、お賃金はきちんと頂いているから」
「それでも是非、機会があればさせてください」
俺がそう言うと、看護婦さんはプッと吹き出して、
「もう、あなたたち二人ともお人好しなんだから」
嬉しそうに笑った。
「ではお気をつけて!」
「「はい! 行ってきます!」」
おでこに手のひらを翳し、敬礼する。
すると看護婦さんも敬礼し、
「無事で帰ってくるのよ! 行ってらっしゃい!」
──こうして退院した俺たちは、ついに『冒険者ギルド』へと歩を進めた。




