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【ガチャ】が運命る異世界生活  作者: マネキ・猫二郎
第一部『天国篇』第一章『スタートライン』
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6/10

第五話『退院』

 ▲▽▲▽

 

 ──概要──

 名前:七原 慎也

 年齢:17歳

  Lv:1

 能力:ガチャ


 ──装備──

 武器:なし

  盾:なし

 衣装:病院服


 ──ステータス──

 攻撃力:14

 防御力:15

 持久力:16

 素早さ:15

  魔攻:0

  魔防:0


 △▼△▼


 

 ▲▽▲▽

 

 ──概要──

 名前:アンファン・デュ・シエル

 年齢:16歳

  Lv:1

 能力:なし


 ──装備──

 武器:なし

  盾:なし

 衣装:フレンチガーリーな服


 ──ステータス──

 攻撃力:16

 防御力:25

 持久力:36

 素早さ:13

  魔攻:0

  魔防:23


 △▼△▼



 「全体的にお前のがステータス高いのな」

 「うへへ」

 「ドヤ顔……」



 シエルは純粋で優しい。しかし優越感に浸る悪戯っぽさもある。彼女は二ヘラと口角を上げ笑っていた。



「ガチャも見とくか」



 ▲▽▲▽


 【ガチャ一覧】

 ・一日六回『食事ガチャ』

 ・一日一回『アイテムガチャ』

 

 △▼△▼



 「俺のアイデンティティがだいぶ微妙なものになってきた……」


 

 俺のアイデンティティ、『ガチャ』スキル。当初は『旅の仲間ガチャ』や『住居ガチャ』もあった。役に立ったし、シエルと出会えたのもガチャのお陰だ。

 

 しかしその二つのガチャが失われ、残ったのは一日六回『食事ガチャ』と一日一回『アイテムガチャ』。俺の能力はほぼ『食料調達』だ。



 「ん?」



 文章のどこかに違和感があった。

 一度目を通した部分を遡ってゆく。



 「あ! 六回引けるようになってる!」



 その違和感の正体を先に見つけたのはシエルだった。シエルは天真爛漫で子供っぽい。しかし俺よりも何かに気づくのが得意だ。

 昨日までは三回までだった『食事ガチャ』が、二倍の六回引けるようになっている。

 


 「シエルの三食分を補うためか?」

 「でも昨日は三回だったんだよねー?」


 「ああ。けどなシエル、俺の故郷だとガチャには『更新時間』ってのがあるんだ」

 「『更新時間』?」


 「ガチャの中身や設定が変わったり、引ける回数が戻ったりする時間のことだ」

 「なるほど理解!」


 「となると更新時間が隅っこに書かれてたり……」

 


 じっくり見る時間がなく、画面の隅々まで目を通せていない。脳内で何となくアタリを付けて、ここら辺だろうと目を動かした。

 


 「ビンゴ!」

 「ビンゴ!……ってなに?」

 「大アタリってことだよシエル!」

 「おお! ガチャみたいだねシンヤ!」

 


 表示される画面の大きさからして、首を少し傾けないと見えづらい右下の角に『更新時間』と書かれていた。ここだよ、とシエルに示すために指をさして、二人で確認する。

 


 「零時(れいじ)か」

 「一日の始まりだね!」

 


 つまりは日付が変わると共に更新される訳だ。

 ガチャは進化する。その可能性に気づき、少しだけ自分に期待が持てた。



「あ、そういやもう昼か」



 昼ごはんが配膳され始めたのを見て、時間を思い出す。

 右隣のベッドを見ると、今朝そこにいた兵士の男は既に居なくなっていた。

 


 「ご苦労さまです」

 


 『今日も午後からは門番やれって言われてらあ』──彼が言っていた事を思い出し、労りの言葉を呟いた。



 〇



 「お二人は次の目的地みたいなのは決めてあるんですか?」



 日も暮れて、夕御飯も終わった頃。


 背中のガーゼを、いつもの看護婦さんに変えて貰っていた。背中の傷はまだジリジリと激しく痛み、まだ激しい運動は出来そうにない。脚のひどい筋肉痛はほんのりと和らいだ。



 「特には……。ただ何か職には就かなきゃな、と」

 「兵士のおじさんも心配してたよ!」

 「あ……」



 今朝看護婦さんに相談した『入院費』の話を聞いていたのだろう。結局『入院費』は無料だったが、これからの事を考えると金銭面の悩みは尽きない。

 ステータスから自分の能力を再確認したのも、この悩みあっての行動だ。



 「では『冒険者ギルド』に行ってみては?」



 ここに来て、異世界ものの定番組織が登場。

 しかし他にも職業はある中、なぜ冒険者ギルドを俺に勧めたのか。筋骨隆々という訳でも無いのに。



 「あ、すみません突然。シンヤさん、何か特殊な力をお持ちのようなので」

 「え」

 「聞いた話だと、『小屋』を一瞬で作り出した、と」



 死霊術師の攻撃から身を守るために『小屋(木製)』を出現させたのを、助けに来てくれた人達に見られていたのか。



 「はい、実は」

 「そーだよ! シンヤ凄いんだよ!」

 「もう夜だから静かにな」

 「あ、ごめんなさい」



 シエルがそう言ってくれたことに内心喜びつつ、声量を抑えるように注意を促す。シエルはハッとして、俺と看護婦さんに囁くような声で謝罪した。

 看護婦さんは微笑みながら「普通に喋る分なら問題ないですからね」と優しく言った。

 

 

 「それで『冒険者ギルド』の事ですが、あの組織は、シンヤさんのように特殊な力を持った方を重宝しています。それに、シンヤさんと同じような力を持った方がいるとも聞いています」


 「俺と同じ力……?」


 「えぇ。『どこからともなく物を出現させる能力』。その他にも共通点として、女性を一人連れている、珍しい服を着ている、最初は金銭的に困っていた、など」


 「それは、何か関係があるかもしれませんね」

 「なので提案させていただきました」

 「貴重な情報、ありがとうごさいます」

 

 「いえいえ、どういたしまして。──はい、包帯巻き終わりました。とにかく今はゆっくりお休みください。命に別状が無いとはいえ、傷は深いです。感染症に掛からない為にも、よく寝てよく食べる、これに限ります」

 

 「はい、ゆっくり休みます」

 「では失礼します」

 


 そう言って、看護婦さんは他の患者さんの元へ行った。

 


 「ふぁ〜」

 

 

 色々考えていたら欠伸が出た。



 「ふぁ〜」



 釣られてシエルも欠伸をした。

 


 「とりあえず今日はもう寝るか」

 「だね」



 布団を被って目を瞑った時だった。

 モゾモゾと何かが布団の中に入ってくる。

 思わず目を開けると、そこにはシエルがいた。



 「ぎゃっ!」



 驚いて大声が出そうになるのを、理性がギリギリ押し止める。



 「な、自分のベッドがあるだろ?」

 「一緒の方が暖かいかなあって」



 柔らかく温かい身体。ここまで彼女を身近に感じたのは初めてだ。心臓が跳ねるように鼓動し続けている。

 しかしここは病院だ。変な風に見られて、周りに迷惑をかける訳にはいかない。



 「気持ちはありがたいが、このベッドじゃ二人では寝にくい。身体が当たると背中の傷も痛むから、自分のベッドで寝てくれないか?」

 「言われてみれば!」



 彼女はコロンと寝返りを打ちながら、布団から出て床に立つ。



 「おやすみシンヤ!」

 「おやすみシエル」



 〇



 ──入院してから数日が経った。



 「うん、傷の調子も大分いいし、明日の朝には退院出来そう」

 「それは良かったです。手当から食事まで、色々とありがとうございました」

 「はい、どういたしまして。……にしてもシエルちゃん、すごく楽しそうに手伝ってくれて、もっと一緒にやりたかったなあ」



 看護婦さんは、夕食の配膳をするシエルを見ながら呟く。自分は動けるから、そういって彼女は三日目から病院の手伝いを始めたのだ。


 何もしないまま、ただ受け取るだけは申し訳ない。そういう気持ちが彼女にもあったのだろうか。


 いつでも笑顔で接する彼女に、患者さんも看護婦さんも、みんな魅了されたらしい。



 「これ、シンヤの分!」



 シエルは配膳係として、俺に夕食を持ってきてくれた。この夕食と明日の朝食で、病院食とはお別れだ。収入源を確保するまで、また『食事ガチャ』に頼る生活になる。



 「いただきます」



 感謝して、いただこう。



 〇



 「では改めて」そう前置きをして、

 「「長らくお世話になりました!」」

 


 シエルと声を合わせて感謝を伝える退院の朝。

 


 「うん、二人とも命大事に頑張ってね」



 すっかり見知った看護婦さんともお別れだ。



 「僕も、いずれ何かの形で必ず恩返しをします」

 「別にそう気負わなくてもいいのよ? 無償とはいえ、お賃金はきちんと頂いているから」

 「それでも是非、機会があればさせてください」



 俺がそう言うと、看護婦さんはプッと吹き出して、

 

 「もう、あなたたち二人ともお人好しなんだから」

 

 嬉しそうに笑った。



 「ではお気をつけて!」

 「「はい! 行ってきます!」」

 


 おでこに手のひらを(かざ)し、敬礼する。

 すると看護婦さんも敬礼し、



 「無事で帰ってくるのよ! 行ってらっしゃい!」



 ──こうして退院した俺たちは、ついに『冒険者ギルド』へと歩を進めた。


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