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第79話 敵の道を、こちらから使います

 隣のレバーが下がる。

 赤い核から街中央へ流れ出す魔力が、一気に増えた。


『中央の亀裂、さらに拡大!』


 管理所の報告に、地下扉を打つ音が重なる。

 先遣隊はまだ突破できていない。


『地下扉、開きません!

 破壊を続けます!』


 その直後、ラーヴェイン側の接続に変化が出た。


 これまでは道が残っていても、声や魔力を通すことしかできなかった。

 司祭が赤い核を強制起動したことで、閉じていた接続の先まで開き始めている。


「待っていては、先に門を開かれます」


 ゼクスが振り向く。


「現地へ向かわれるのですか」


「ええ。

 聖会が残した接続を使います」


 王も意図に気づく。


「司教の地下室を経由するのか」


「はい」


 私は残っている接続へ目を向けた。


「敵の道を、こちらから使います」


「ギルム殿」


「はい」


 ギルムは封印箱と固定陣を確認する。


「六本指、杖、司教の右腕――すべて封印を維持しています」


 司教の監視には近衛を残す。

 ベンデル卿の拘束も解かない。


「私はここに残る。

 ギルムも残れ」


 王が続ける。


「ゼクス、連れていく者を選べ」


「はい」


 ゼクスは近衛から4人を選ぶ。


「私たちに続け。

 少女の固定具には触れるな」


「はっ」


 私はギルムを見る。


「私たちが抜けた後は、王宮側の固定陣をお願いします。

 異常が出たら、すぐ知らせてください」


「承知しました」


 王はラーヴェインとの通信を繋いだまま命じる。


「地下扉への突入を続けろ。

 止めるな」


『承知しました!』


 向こうで扉が激しく鳴った。


 私は王宮側の接続へ魔力を流す。


 司教の地下室で止まっている流れ。

 そのすぐそばには、空の台座からラーヴェインへ続く接続が残っている。


「ここを繋ぎます」


 二つの終端を重ねる。


 王宮側から流した魔力が空の台座を抜け、そのままラーヴェイン側へ届いた。

 途中で途切れない。


「繋がりました。

 行けます」


 王宮側の接続口が開く。

 その奥に、ラーヴェイン聖会支部の石床が現れた。


 入口が狭まらないよう固定する。


 向こうから少女の声が届いた。


「止めてはいけない……。

 私が、守らないと……」


 赤い核の前には、固定された少女。

 操作板のそばには司祭がいる。


 地下扉が大きく揺れた。


『もう一度!』


 先遣隊の声が響く。


 ゼクスが接続口の前へ出た。


「私が先に行きます」


「いいえ。

 最初は私が入ります」


「ですが、危険です」


「核と固定具があります。

 最初に触れる場所を間違えれば、少女へ魔力が戻ります」


 ゼクスは少女と赤い核を確認する。


「……分かりました。

 では、私は司祭を押さえます」


「お願いします」


 近衛がゼクスの後ろへ付く。


「戻る道も確保しておけ」


 王の命令に、私は頷いた。


「はい」


 接続口へ足を進める。


 地下で、司祭が顔を上げた。

 赤い核から伸びる接続へ視線を向ける。


「……何をした」


 司祭が操作板へ手を伸ばした。


 端の刻印を押す。


 赤い核から、こちらの接続へ魔力が流れ込む。

 街中央へ向かっていた流れが減り、開いた入口が狭まり始めた。


 私は接続を支える。


 縮みが止まった。


『中央の亀裂、拡大が止まりました!』


 司祭の手が止まる。


「私を止めるほど、門は閉じますよ」


 地下扉が激しく揺れた。

 扉の周囲から石片が落ちる。


『地下扉、もう少しです!』


「続けろ!」


 王の声が飛ぶ。


 司祭が地下扉を見る。

 すぐに操作板へ向き直り、こちらの接続へさらに魔力を回した。


 入口が再び狭まる。


『中央の亀裂、縮小しています!』


 私は流れを押し返す。

 狭まりかけた入口が止まり、元の幅へ戻った。


 地下扉がまた大きく揺れる。


 司祭の視線がそちらへ向いた。


 私はその間に接続口を越える。


 少女はまだ赤い核へ繋がれたまま、祈りを続けている。


「その子を使ったまま、閉じさせません」


 一歩、ラーヴェインの地下室へ踏み込んだ。

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『短編版』婚約破棄で聖女契約が切れました。――この国は“5分後に”崩壊が始まります。
― 新着の感想 ―
洗脳教育はそう教えられらからだけどされた本人も今更間違いだと言われても困るという思いがあるからなぁ、それが悪事であればあるほど罪と向き合うことになるから認められん洗脳は解けているけど解けていない状態…
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