96話 呂蒙
「またのご利用お待ちしてます」
「はーい」
やっとオーパスポーカスに帰って来た。
エーリッヒは冒険者ギルドに依頼達成の報告をしに行き。俺はおっさん達に帰って来た報告をしに来た。
「おかえりなさい」
「ただいまです」
「ご覧になりました?」
「何をですか?」
帰ったその足でここに来たので何も見ていない。
「驚きますよ」
と、ジョーさんに連れられ向かった先は。
「どうですか?」
「おぉー・・・」
ダンジョンに向かう前は更地にして地均しをして杭を打ち込む所まで見ていたが2ヶ月振りくらいに見た俺の家は枠組みが出来上がっていた。
この世界の建築は石造がメインだと思っていたが実は木造と石造の合せ技で枠組みは木造で周りを石造で組み上げる事が多いそうだ。
2階建てで1階は3部屋、2階は2部屋と1人で住むには広すぎる家に仕上がるようだ・・・。
「手狭になれば他に土地を融通しますから。その時はまた仰って下さい」
「あ、はい」
手狭に?なるのか?
彼女が出来て同棲する事になったり結婚して2人で住む事になったとしてもまだ余裕がある。
子供が1人居てもまだ余裕か?2人以上になってきてようやく手狭に感じるんじゃないだろうか?
っても、子供が小さいウチはそうでも無いのか。1人部屋を与えるような年になってようやく。
うん。手狭になる未来が想像出来無い。
「ダンジョンはどうでしたか?」
「いやぁ、中々大変でしたね」
「移動も大変ですよね」
「あー、そっちは慣れてるんで大丈夫です」
しかも、今回は御者さんを雇ったから本当に楽だった。
「ダンジョン攻略もそんなにだったんですけど。向こうのスケジュールに合わせて動くのが面倒で」
「なるほど」
「昔、一時期ですけど冒険者やってたんですよ。その時の事を思い出しましたね」
「でしたら、問題は起こらず?」
「ですね」
「冒険者に復帰されるんですか?」
「どうだろう?今回はエーリッヒに誘われたからやったけど・・・復帰する予定は無いですね」
「そうですか」
「こっちは変わらずですか?」
「そうですね。あの、ミトさん」
「はい?」
「ウチで働きませんか?」
「え?」
「いえ、あの、ミトさんが既に資産をお持ちで。能力的にもウチみたいな農家なんてとは思うんですが・・・」
うーん。
農家というか、土いじりを趣味にしてみたいと考えた事はある。
考えた事はあるが年を取ってからの趣味として面白いと聞いたからで。仕事にするにはキツいだろうし、まだ早い気がしないでもない。
「なんで俺ですか?」
「まずはアイテムボックスですね」
「あぁ」
「収穫も簡単に行えて、脱穀や精米も1人で大量に出来ますよね?」
「そうですね」
「更には精米後の米をアイテムボックスで保存すれば劣化もしない」
「なるほど」
そう言われると天職のように思える。
「雇わんぞ」
「「え?」」
「ミトは雇わん」
「親父!?なんでだよっ!?」
「そいつ雇ったらウチの従業員はどうなる?」
「いや、ミトさんは規模拡大の為に・・・・」
「拡大っつってもミトが居りゃあ、従業員のほとんどは要らなくなるぞ?」
「そんな事・・・」
「あるだろ。従業員の大半をクビにして事業拡大して。そこでミトに辞められたらどうする?」
「それは・・・」
「1人に依存するな。皆で回す仕組みを作り上げろ」
「でもっ・・・」
「でもじゃない。つーかミトが1人居りゃ俺等も要らんだろ。そんなやつにいくら給料払うんだ?」
「それは短期で働いて貰うとかアイテムボックスの使用料を払うとかって契約で」
「お前の都合だけだな。もっと俯瞰で全体を見ろ。搾取せずに全員がなるべく納得出来る形を目指せ」
男子、三日会わざれば刮目して見よ。って言葉が浮かんだ。
2ヶ月振りに見たおっさんは真っ当な経営者の顔をしていた。
「お前・・・おっさんの偽物だろっ」
「はぁ?」
「おっさんはそんなマトモな事言わないっ」
「俺だってたまにはマトモな事ぐらい言うわっ」
「ジョーさん、これ絶対偽物ですよね?」
「いえ、本物です」
「マジか・・・」
「2-3年に1回くらいですけど真人間になる時があるんです。一瞬ですけど」
「はぁ?もっとあるわっ。てか、ずっとだわっ」
「まぁ・・・おっさんもこう言ってますし止めておきます」
「そうですか・・・」
「いや、ちょっと待て。2-3年に1回ってなんだっ」
「手が足りない時に普通の従業員みたいな感じだったら手伝いますから」
「はい」
「いや、一瞬ってなんだよ」
「その時は声掛けて下さいね」
「ありがとうございます」
「いや、ちょ、無視すんな」
おっさんが言ってる事は正しいと思う。
でも・・・普段、むちゃくちゃなやつが言う正論は納得が出来無い。
そして、正しい事とそれを納得出来るかどうかはまた別の話。




