85話 開店
エレノアが優秀なのか師匠の指示が良いからなのかは分からないが順調にダンジョンを進む。
何事も無く進んで行くので逆に心配になってくる。
「順調だな」
「不満か?」
「いや、なんか順調な時ほど何か起きたりしないか?」
「不憫な人生送ってんな・・・」
「同情すんなっ」
「そりゃ、ダメだろ」
「何がだよ」
「調子が良い時こそ調子に乗れよ」
「えー?」
「良い流れの時にダメになった時の心配ばっかして。悪い時には更に悪くなった時の事考えんのか?」
「いや、そうは言ってない・・・何ていうか保険的なもんだよ」
「良い時は楽しんで、悪い時は良くなった時の事を考える」
「うーん・・・」
「その方が精神衛生上良いだろ」
「それは確かにそうかもな」
「だろ?」
「でも、性格的なもんだから、そこまでポジティブにはなれないな」
後ろでこんなどうでもいい話をしていてもエレノア達はどんどん進んでいく。
そこそこ離れているけどちょこちょこ話の内容は聞こえていると思う。
それでよく集中出来るなー。と、まるで他人事の様な事を考えていた。
「よーし、ここらで長めの休憩にするか」
「「「「はい」」」」
何度かの小休止を挟んだ後に睡眠も取るガチの休憩になった。
「設営もするよな?」
「おう、ちょっと向こう行って来るから飯の準備とかも頼む」
「おう」
反省会だろうか?
エーリッヒがエレノア達の元に向かったので俺は俺で野営やら食事の準備をする。
まずはエーリッヒのテント。これは小ぶりの1人用のテントなのでサクっと組み立てて設置してしまう。
地面が比較的平らな場所を探し小石等は取り除くがそれでもそのまま寝転ぶと色々刺さって痛いのでマットを敷く。
続いて、俺のテントだけどまだ試しで1回しか組み立てた事が無かったのでかなり手間取った。
サイズも大きくて1人で組み立てる物じゃない気もしたが・・・次からはバラさずにこのままアイテムボックスに放り込んでおこう。
そして、俺とエーリッヒのテントの間にタープも設置する。
タープの下には椅子やテーブルも設置した。
ダンジョン内でタープなんて意味が無いと思うかもしれないが本当に意味は無い。気分だ。
テント自体も賛否両論あるが俺はダンジョン内であってもテントは欲しい派だ。
寝る時にある程度狭い方が安心感があるし、何よりも異物の侵入をある程度防げる。
物理的にも虫は入ってきにくくなるし、殺虫剤というか忌避剤をテントに塗れば更に確率は上がる。
虫除けの御香を少し焚くのもアリだ。
そんな感じで手間取りつつも野営の準備は終わった。
「ん?どうかしたか?」
「いや、お前バカだろ」
「は?」
「そのテントはバカ丸出しだろ」
「なんでだよ。デカくて良いだろ」
「デカ過ぎだろバカ」
「こんくらいある方が快適だろ」
「中で何するつもりだよ」
「寝るんだけど?」
「寝るだけならそんな要らんだろ」
「いや、いっその事ベッド置こうと思って」
「はぁ?」
そう。気付いてしまったのだ。
ハンモックを設置する手間もベッドを設置する手間も大差無いという事に。
「まぁ、いいや・・・好きにしろよ。で、飯は?」
「もう食うか?」
「あ、いや、ちょっと待て」
すると、後ろにエレノアの面々が鍋や桶を持ってやって来た。
「水だろ?」
「「「「お願いします」」」」
エーリッヒの手から水が出る。
さっき見た時よりも水量が多い。さっきのチョロチョロだけではなく水量をコントロール出来るようだ。
「「「「ありがとうございます」」」」
「おう」
鍋と桶を満たすとエレノアの4人は戻っていった。
「ダンジョン内で料理するのって普通だったりすんの?」
「普通だろ?」
「へー」
「お前みたいな能力があったらする必要無いだろうが、普通はするな」
「いや、そういう意味じゃなくて。匂いで魔物が寄って来たりとか」
「無くは無いな。でも、普通の話をするぞ?」
「嫌にトゲがあるな」
「普通はテントを持ち込む事もあんまり無い」
「へー、そうなんだ?」
「マントだけで済ませるって言ったろ?」
「おう」
「魔物と戦って、罠を警戒して、寝る時は座ってマントに包まって浅くしか寝れない」
「ふむ」
「それで飯が干し肉齧るだけとか心が折れると思わねぇか?」
「確かに」
「温かいスープでも飲んだ方がリラックス出来て良いんだよ」
「へー」
「っても、大抵が干し肉を茹でた塩っぱいだけのスープだけどな」
「じゃあ、エーリッヒもそんな感じの飯にするか?」
「なんの為にお前を雇ったと思ってんだよ!」
「えー」
「フルコースだフルコース。1品ごとに違う酒を出しやがれっ」
「それは流石に面倒臭い」
「いや、俺もめんどい」
「まぁ、最初はエールか?」
「いや、今日はトリアエズナマな気分だ」
「おーけー」
よし、ダンジョン居酒屋ミトの開店といくか。




