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73話 行った来た

邪魔にならないようにしばらく遠巻きに眺めていたがザックリと水平になるよう地均しをしているだけで代わり映えもしなければ映える作業でも無かったので見学は早々に切り上げた。


「差し入れでしたらこちらでやっておきますよ」

「いや、そんな悪いですよ」

「お昼に飲み物を差し入れする程度ですので」

「いや、それでも」

「それに、妻にやって貰おうと思ってますが。どうせ差し入れを貰うなら男からよりは」

「それは確かに」


職人さん達は男しか居なかったから。男からお茶の差し入れを貰うよりも綺麗所からの方が嬉しいか。

こんな事を現代日本で言おうものならセクハラだのジェンダーがどうのと問題発言になるかもしれないが・・・ここは異世界なのでまだ当分は大丈夫だろう。


「マーシーさんの負担になるかもしれないですけどお願い出来ますか?」

「はい」

「あ、それから・・・」

「はい?」

「おっさんに石窯の制作を依頼したんですけど」

「はい」

「相場ってどれくらいですか?」

「石窯制作ですか?」

「はい」

「流石に専門外過ぎて・・・」

「で、ですよね・・・」

「調べておきますね」

「お願いします」


それから、職人さん達への差し入れ用に飲み物と果物を置いてきた。

そして、それを届けて貰うマーシーさんにアイスクリームも置いてきた。


ジョーさんと別れ、街の方へ向かい買い物がてら散策をしているとこっちにもスパイスショップを見つけた。

こちらでもシナモンとクローブはあった。そして、価格は半分だった。

なんという無駄遣い・・・。


大した距離でもないのに向こうは完全なる観光地価格になっている。

フーバスタンクという街がブランド化している証拠でもあるから一概に悪とは言えないが余りに急激な変化は住人からすると苦痛ではあるかもしれない。

これを商機と儲ける人は一部で大半は迷惑しているだろう。


地価も爆上がりしてるだろうから家を売って他所の街に引っ越す人も居るんじゃないだろうか。

そうなると地元の人が減って外部の人間が増える。更なる治安の悪化とブームが去ると同時に人も去る。

そして、衰退が始まる訳か。


って、言うのをカギノ伯爵は懸念していてバランスを取っていたのか。

やっぱり、あの人めちゃくちゃ有能だったな。

先代の・・・いや、今はもう先々代になるのか。先々代が日本から召喚された勇者様だったから。そんなチート持ちの勇者様と比較されて苦しんだんだろうと思う。


でも、もしかしたら自分からそうなるように仕向けたような気もしている。

先代を神格化して自分を落とす。そして、自分をバカにさせる事で市民の溜飲を下げさせる。

それならタダだし、本当の意味でのプライドの高さを感じさせる爺さんだった。そして、それくらいさせそうな(したた)かな爺さんだった気がする。


まぁ、今となってはもう分からない事だし・・・(まつりごと)なんて俺には縁もなければ関わるようなものでは・・・って、俺も元は領主だった。

縁はあった。縁はあったけど縁が無くて追放されて関わりが無くなった。

そして、もう関わりたくない。今後も。一生。


そう言えば、何かを忘れている気がする。

何かをやり忘れているような?

フーバスタンクで買い忘れでもあったかもしれない。

でも、向こうで買える物はここでも大抵が買えるはずだ。

もし、向こうでしか買えないような物があったとしてもデレクかセバスチャンさんに手紙でも書けば送ってくれそうな気がする。


だから、買い忘れがあってもどうにかなるし、忘れているのも大した事じゃな・・・あ・・・カギノ伯爵だ。

仏壇は無いにしろ、お墓はあるはずだ。墓参りをしていない・・・。


その所為でフーバスタンクにとんぼ返りをするハメになった。

その事をデレクに話してもセバスチャンさんに話しても同じ様な反応をされてしまった。


折角、帰って来たのにずっと動き続けている。

むしろ、旅を続けていた時の方がまだゆっくりしていた。


「俺は座ってるだけで良いから。しんどいのはお前か」

「ブルルルル」


コイツっていくつなんだろう?

セバスチャンさんから譲り受けてから10年近く経っている。

譲り受けた時点で10歳だったとしたら20歳。

馬の年齢を人間に当てはめると3倍だっけ4倍だっけ?3倍なら60歳、4倍なら80歳。

おっさんかおじいちゃんか・・・。


「お前もそろそろお役御免でゆっくりするか?」

「ブルルッ」


気持ちスピードが上がった気がする。


「生涯現役か?」

「ヒヒーン」


まぁ、分からないけどまだまだやれるっぽい気がする。



そうして、フーバスタンクとオーパスポーカスとを反復横跳びもしくはシャトルランの様な行ったり来たりがようやく終わった。


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