66話 ビーンズ
虚仮の一念、岩をも通す。じゃないけど酒好きが高じて酒造りまで出来るようになったのか。
このおっさん何気に有能なんだよな・・・何をやらせても卒なくこなす。
酒カスだけど・・・。
「もしかして、これおっさんが作ったのか?」
「は?買った酒だ」
「買ったんかよっ」
「最近、フーバスタンクで流行ってるらしくてな」
「カギノ伯爵のトコか」
「材料は米っぽいが・・・正直、物足りないな」
「熟成させたら化けるかもしれんぞ?」
「あー、可能性はあるな。でも、樽の香りは合わなくないか?」
「樽熟成するならウイスキーとかブランデーのが良い気はするなぁ」
「じゃあ、どうやって熟成させんだよ」
「甕かな」
「ふーん」
「甕で定期的に混ぜて撹拌して長期熟成が理想だな」
「そんな手間掛ける価値あんのか?」
「あるんじゃないか?」
「ふむ」
「俺にはサッパリだ。アンタら凄いな」
「エーリッヒは酒に詳しくないのか?」
「飲めて不味くなけりゃそれで良い」
「「それもアリだな」」
「アリなのかよ」
「酒なんて好きに飲めばいいじゃん」「酒なんて好きに飲めばいいだろ」
「アンタらみたいに詳しいやつは飲み方にも煩そうなのに意外だな」
「この飲み方が正しいですよー。って、強制されて飲んでも美味くないだろ?」
「だな」
この手順で飲まないといけないとか、作法が、マナーが、ルールが。って、雁字搦めにされるくらいなら多少味が落ちてでも好きに飲んだ方が美味しいに決まってる。
自分自身に課したこだわりであれば好きにすれば良いと思うけど。
「そうそう。美味い飲み方見つけたんだけど試してみるか?」
「お?どんなだ?」
「エーリッヒも試すか?」
「頼む」
「このエールを2人共ちょっと飲んでみてくれ」
「「おう」」
「どうだ?」
「薄い」「微妙」
「そこに、ちょっとだけブランデーを垂らす」
「ほう」
「飲んでみろよ」
「あー、ちょっとコクが出て美味くなったな」
「分かるんじゃん」
「そうか?こんくらいは分かるだろ」
「おっさんは微妙だったか?」
「足らん。もっとブランデーを足してくれ」
「いや、おっさんは度数を求めてるだけだろ」
「度数?」
「酒精の強さだよ」
「バレたか」
「で、どうだったよ?」
「不味いエールに美味いブランデー入れて平均が上がっただけじゃねぇのか?」
「と、思うだろ?美味いエールに入れるとそんななんだよ。微妙にそこまで美味くないエールの方が美味くなる」
「「へぇ~」」
「それも試させろ」
「いや、おっさんは何でも良いから飲みたいだけだろ」
と、どうでもいいやり取りをしている間にもどんどんと配膳は進み。
いつの間にかジョーさんが挨拶を始めていた。
「・・・という訳で、ミトさんおかえりなさーい」
「「「「「おかえりなさーい」」」」」
「え?あ、ただいまです」
いきなりの大合唱に驚いて何も言えなかった。
「ミトさん」
「あ、マーシーさんこんなに色々作ってくれて大変じゃなかったですか?」
「まだあるんです」
「そうなんですか?」
「これです!」
と、目の前に出された皿の上には。
「アイス?」
「はい!ミトさんが居なくなってからも色々と作ってみてたんですっ」
「おぉー」
「食べてみて下さい」
「はい」
シャーベットっぽいけどちょっと違うような気もする。
「おぉー、サッパリしてて美味しいですね」
「果肉と果汁を入れて作ってます」
「ですね。香りが良い」
「それから、卵は卵白のみを使っています」
「へぇ~。それも、この爽やかさになってるんですね」
「だと思います」
俺が前に作ったやつはブドウの果汁を入れただけだった。
それよりもアッサリしててデザートに良い感じだ。
「俺も作ったんですよ」
「!?」
「まずは、これをどうぞ」
旅の途中で見つけたバニラを使ったアイスクリーム。
「!?」
「良い匂いじゃないですか?」
無言でコクコクと頷いている。
「乳脂肪分を高めにして。アイス自体はもったりというか重たいめにしたんですけど。その方がその香りに合うかと思って」
完全に言葉を失って頷いている。
「あ、あのっ・・・」
「はい」
「この香りはどうやって・・・?」
「この粉末を混ぜてます」
このバニラは宗教国家に立ち寄った際に手に入れた。
そこでは食用ではなくアロマとか御香として使われていたが匂いを嗅いだ瞬間にお菓子作りをするならば出来得る限り買い溜めしないといけないと思った。
なので、アイテムボックスには尋常じゃない量が入っている。
普通には売って貰えずにお布施を大量にしまくってようやく売って貰えた。
そして、そのバニラ自体も尋常じゃなく高かった。
恐ろしきは金がモノ言う宗教国家・・・。
エールビールにブランデーを入れるカクテルがあるかは知らないし飲んだ事も無いです。
ビールにウイスキーを入れるボイラーメーカーと、ジンジャーエールにブランデーを入れるブランデージンジャーに味が近いイメージです。
ボイラーメーカーはお高いビールよりも発泡酒くらいのを使った方が個人的には好みです。




