62話 オーパスポーカス
やっと帰ってきた。
おっさん達が住む街、オーパスポーカスに。
軽く街を見て回ってみたが、あの賄賂を受け取った女将の宿はなくなっていた。
適当に宿を取り、馬を預けてから飲み屋に行ってみる。
そう、おっさんがお気に入りだった飲み屋だ。
まだ陽も高く客もまばらで席は選び放題だったので奥の席を取った。
ここからなら入口も良く見える席だ。
軽めのツマミでエールをチビチビとやる。
時間が経つにつれて1人2人と客が増えていく。
が、見知った顔は現れない。
何の調査も無しにこんなサプライズドッキリは成功しないか・・・。
そう諦めかけた時に見知った顔が入ってきた。
「いらっしゃい」
「いつもの」
「あいよー」
カウンターに座り、いつもので通じるくらいの常連。
こそーっと、そいつの元に行きシレっと横に座る。
「よお」
「ん?」
「あー、あー、名前が出てこねぇ」
「俺も覚えてねぇ。何て名乗ってたっけ?」
「知らねぇよ」
「久しぶりだなエーリッヒ」
「そうだ。ミトだ」
「あー、ミトだったか」
「どうしてた?何年振りだ?」
「10年はいかないよな?6-7年か?」
「そんなにか。そりゃ年も食う訳だ」
「お互いにな」
「ん?いや、お前はあん時から変わってなくねぇか?」
「スキンケアにはこだわりがあるからな」
「女みてぇなやつだな」
とか、適当な事を言ったが嘘だ。
最近、気付いたがこっちの世界に召喚されてから年を取ってないっぽい。
最初は社畜をしていて食生活も生活リズムも最悪だったのがこっちの世界に来て真っ当な生活をするようになって若返ったのかと思っていた。
これが召喚者特典なのか魔王の討伐ボーナスなのかどっかのタイミングで得たスキルの効果なのかは分からない。
更に言うと見た目が老けないだけなのか不老なのかも分からないから怖くはある。
「どうしてたんだ?」
「ずーーーーーと旅だな」
「ずっとか」
「ずっとだな」
立ち寄った色々な国の話を酒の肴という事で盛って脚色して捏造して面白おかしく話した。
「すげーなぁ」
「お前はどうしてたんだよ」
「俺か?俺もずーーーーと採集だな」
「それもすげぇなぁ」
「だろ?」
「そういや」
「おう」
「おっさんはどうしてる?」
「ジョッコさんか?」
「あー、それニックネームだっけか?」
「ジョッコさんは・・・」
「え?」
死んだか・・・?飲み過ぎで?
「ツケが溜まり過ぎて出禁だ・・・」
「何してんだよっ」
「いや、息子さんがツケは払ったから店は大丈夫だ」
「え?いや、そういう話か・・・?」
「どういう話だ?」
「今はおっさんどうしてるんだ?」
「家で飲んでんじゃねぇか?」
「なるほど・・・」
ってか、仲の良いやつにだけ呼ばせてるんじゃなかったっけか?ジョッコって。
俺がきっかけで知り合ってそこから仲良くなったとかか?
いや、でも、知り合って早々にジョッコって呼んでも良いとか言ってたから誰にでも呼ばせてるな。あのおっさん。
「そうだよ、今から行こうぜ」
「え?あ、おっさんのトコか?」
「他に行くトコあるか?」
「まぁ、確かに」
エーリッヒに背中を押されおっさんの家に向かう。
「頼む、行かせてくれっ」
「ダメに決まってんだろっ」
「老い先短い年寄の頼みだぞっ!?」
「うっせぇ、その老い先を今ここで終わらせてやっても良いんだぞ!」
玄関をノックしようと思ったタイミングで家の中からこんなやり取りが聞こえてきた。
ガチャ───。
何か、もう良いや。と、思ってドアを開けた。
「こんばんわ。お久しぶりですジョーさん」
「え?あ、あれ?ミトさん?」
「おー、覚えてくれてましたか」
「そりゃ覚えてますよ」
「うおおおおおおおおお」
「!?」
と、おっさんが奇声を上げながら抱きついてきた。
「お、おっさん・・・」
「頼むうううううう、またあのウイスキーを飲ませてくれえええええええええ」
「久しぶりに会って第一声がそれかよっ!」
おっさんを引っ剥がし、家に上がらせて貰う。
「この数年、どうされてました?」
「いやぁ、ずっと旅してました」
「はぁ~、ここから離れられない身からすると羨ましい話ですが。やっぱり大変なんでしょうねぇ」
「どちらも良し悪しですよね」
「あ、そうだ。ちょっとお待ち下さい」
「??はい」
そう言えば、マーシーさんの姿が見えない。
「お久しぶりです」
「あ、マーシーさんお久しぶりです。え?」
と、マーシーさんの腕の中には赤ん坊が居た。
「えー!おっと、息子さんですか?娘さんですか?」
大きな声を出しそうになったが寝ているので声を潜めた。
「息子のジャコです」
「ジャコくんかー。跡継ぎの誕生ですね」
「継ぎたいと言えばですけどね」
「なるほど」
中々、子供が出来ず。諦めかけていたタイミングでようやく授かったそうだ。
この両親の元ならばしっかりした子に育つだろう。
ジジイは反面教師にしてくれ。決して見習ったりはしないように。




