57話 20と28
ポーカロからの謝罪は商業ギルドからの正式な謝罪という事で。一応、事の終結とはなった。
とは言え、俺を筆頭にこの結末に納得して居ないやつが多数居るので問題は山積みだ。
こういう時はとりあえず簡単なものから消化していくに限る。
「今晩どうだ?」
「お?例のやつか?」
「そ」
「どこにする?」
「オススメは?」
「高いトコでも良いのか?」
「おぉ、全然良いぞ」
「おねーちゃんの居るトコでも?」
「全然」
「マジかよっ」
エーリッヒに声を掛け、約束だった飲みに今晩行く事にした。
「飯食ってから行くよな?」
「あー、オススメの飯屋も教えてくれよ」
「それも奢りかぁ?」
「モチ」
「マジかよっ」
エーリッヒのオススメの飯屋に行き舌鼓を打った後、おねーちゃんの居る店に行く予定だったが・・・。
「1回座っちまうと次の店行くのが面倒だな」
「飯も美味いし酒も美味い。このままここで良いよな」
「だな」
そのまま最初の店で深夜になるまで飲み明かした。
そして、宿への帰り道で。
「んー、俺が言っても信憑性無いかもだけど」
「んー?」
「あの宿止めといた方が良いぞ。他所に移った方が良い」
「理由は?」
「強盗も入るような宿だし?」
「報復されて荒れるって事か?」
「分かるのか?」
「そりゃあなぁ・・・」
エーリッヒは見た目が厳つくてややこしそうなイメージだったが飲みながら話した所。実はそこそこ有名な冒険者らしい。
ランクはCとそこそこって感じだが薬草や鉱物等の採集を専門とした冒険者との事だった。
見た目がゴツくて厳つくて筋骨隆々なのに採集がメイン。
パーティーを組む場合は斥候がポジションになるそうだ。
罠の探知とか解除にその筋肉は邪魔になるだろうに・・・。
鉱物の採集には筋肉は必要かもだけど薬草を丁寧に摘むのにも邪魔そうだ。
まぁ、そんな話は置いといて。
そんなタイプの冒険者だから空気を察する能力には長けているのだろう。
そして、バカには出来無い役割でもある。
だからこそ何かを感じ取っていたのかもしれない。
「あんな二つ巴なんかにされたら報復もするだろ。俺だったら絶対にするわ」
「ふたつ?」
「二つ巴。知らんか?」
「分からん」
「椋鳥って言った方が良いか?」
「それも分からん」
「あんな事しといて下ネタはNGか?」
「いやいや、全然大丈夫だけど分からん」
「あ、でも、そうか。俺が言ってるのは男女での体位の話だから男同士だと俺も分からんな」
「あー、あー、あー、分かった。シックスナインの事か」
「お前のトコだとそう言うのか?」
「たぶん、そうだと思う」
「二つ巴は女が上、椋鳥は男が上でするやつだな」
「なるほど。俺のトコだとそれはどっちも一緒かな」
「まぁ、あんな事されたら誰だってキレるだろ」
「確かに・・・」
思ってた答えと違った。
「お前こそ他所に移った方が良いんじゃないか?」
「いやぁ、返り討ちにしたくて」
「やる気満々かよっ」
「そこそこ?」
「あー、盛大にやる気か・・・なら、他所に移るか」
ありがたい。その方が気兼ねなくやれる。
「悪いな」
「いやぁ、盛大に奢って貰ったから釣りがくるな」
それから数日後にはエーリッヒとその友人等は他所の宿に移っていった。
「いつ来るか分からないし、どこまでやるか分からないから。そろそろ、ここに来るのも止めようかと思ってるんだよなぁ」
「あー?流石にウチにまではやってこんだろ」
「そうか?」
「来ても返り討ちにしてやらぁ」
「おっさんが1番心配だけどな」
「なんでだよっ」
「調子乗って空回りしそう」
「そこは否定出来んな」
「だろ?」
普段から農作業をやっていておっさんは年の割には元気だ。いくつか知らんけど。
「あ、でも、馬はしばらく面倒見て貰っても良いか?」
「いい、いい。気にすんな」
何時、どうなるか分からないのでマーシーさんに作って貰っている料理の代金は毎回払うようになった。
そして、毎回請求額より少し多めに払おうとしてマーシーさんに多いから受け取れないと拒否される押し問答が定番になりつつある。
今日は馬の世話代がここに含まれてるから。と、言って押し付けてきたが・・・そろそろ、その言い訳のネタも尽きてきた。
宿に戻り毎日恒例のアイスクリーム作りをしていると警備隊の人がドアをノックした。
「ちょっといいか」
「入ります?」
「いや、報告だけだからここで良い」
「はい」
「釈放された。無罪放免だ」
「分かりました。ありがとうございます」
「なんで礼を言う?」
「いや?教えてくれたんで」
「あぁ、そっちか」
「責めないって言ったじゃないですか」
「そうだったな・・・まぁ、そういう事だから気を付けろよ」
「はい」
という事は、そろそろ来るだろう。
明日からは事が済むまでおっさんのトコに行けないな。




