55話 一箭双雕
「今、構わないか?」
「はい・・・」
警備隊が来た事で詰め所への呼び出しかと思ったら商業ギルドのポーカロも来ていて正式な謝罪をするとの事だった。
謝罪をして、受け入れて、慰謝料的なのを受け取って終了。それが理想だったが・・・。
おっさんも立ち会い、息子のジョーさんも立ち会い、警備隊も立ち会い、そこそこ大事感満載な中での謝罪となった。
「まず、この度は誠に申し訳ございませんでした」
「はい」
「先に経緯の説明をさせて頂きたいと思います」
今回の主犯。宿の俺の部屋に入って来て指示を出していた方。アイツが主犯だそうだ。
そして、犯行の動機は俺が皿を見に行った時にサラっと金貨を出した。皿だけに・・・おっと、それが気に食わなかったそうだ。
その上でポーカロが気にかけている。そこも気に入らなかったそうだ。
アイツは元貴族でポーカロは平民の叩き上げ。平民が上司なのも気に入らないし気に入らないやつと気に入らないやつが絡んでる。気に入らない。
そこで、ポーカロの執務室に忍び込んで俺の事を探らせた書類を見たそうだ。
大容量のアイテムバッグを所持している事をそこで知って下っ端を集めて事に及んだとの事だった。
気に入らないやつが気に入らないやつの顧客で金目の物を持っているから盗んでしまおう。
そうすれば一石二鳥。気に入らないやつは大事な物を失い気に入らないやつは客を失う。そして、自分は懐が潤う。一石三鳥。
二兎追うものは三兎も四兎も得る。を狙ったら全てを失ったって事か。
「そこで本当に申し訳無いのですが・・・」
「はい」
「無かった事にしては頂けないかと・・・」
「は?」
「いえ、元とはいえ貴族でして。実家は今も爵位を保持しております」
「だから、口止め料やるから黙ってろ。と?」
「その方がお互いのためかと・・・」
「脅しか?その実家からの報復があるから黙ってろ。と?」
いや、コイツも被害者といえば被害者だ。
能力は高いんだろう。平民で商業ギルドのサブマスターにまでなっているんだから。
俺なんかよりも普段から理解出来無い理不尽に晒されて生きているはずだ。
だから、これは脅しではなくアドバイス。
「いや、言い過ぎた」
「ご理解頂けましたか?」
「理解はした。納得はしてない」
「そこはもう飲み込んで頂くしか・・・」
「でもさ?」
「はい」
「そういう話って1対1でするもんなんじゃ?警備隊も居て俺の知り合いの2人も同席させてする話じゃないんじゃないかと思うんだけど?」
「そこは、まぁ、なんと言いますか・・・」
そこまで黙っていたおっさんが口を開いた。
「アレだろ?むしろバレて欲しいんだろ?こんだけ人が居りゃあどっかしらから漏れるだろ。って」
「あー、そういう」
「否定はしません」
「お前さんも被害者だもんな。今回の件で1番頭にきてるのはコイツだろ」
「今回に限らず日頃の積み重ねもあるだろうしなぁ」
「否定はしません」
「まぁ、アレだろ。潰せるとは思ってねぇけど、この街から追い出すくらいなら出来んじゃねぇかと思ってそうだな」
ふむ、おっさん鋭いな。
「質問」
「はい」
「俺が口を噤んだ場合。アイツはのうのうとこの街に居続ける感じ?」
「そうですね」
「もし口を噤んで無かった事になったとして」
「はい」
「アイツって大人しくしてるようなやつなの?」
「・・・・・・」
「最低でも嫌がらせはしてくるんじゃないの?逆ギレの責任転嫁で俺が悪い事になってそうじゃない?」
「否定出来ません・・・」
「だったら最低でもこの街に居れない様にしないとだし。出来れば実家諸共ぶっ潰したい」
「それは流石に・・・」
「それと、確認だけど」
「はい」
「この謝罪ってアンタの独断?慰謝料払って示談にするもを含めて」
「はい」
「だったら現時点では俺は動かない」
「え?」
「アイツが罪を認めて収監されるなり刑に服すなら問題無いし」
「・・・・・・」
「そこで実家が報復して来なければこの話は終わり」
「認めないと思いますし、報復もあると思います」
「でしょうね」
「え?」
「向こうが何かしてきたら全力で抵抗します」
「え、いや・・・」
「あー、でも、そうなるとここに住むのは不味いな・・・」
「どこに住んでも不味いだろ」
「おっさん達に迷惑は掛けたくない」
「何か手があんのか?」
「んー、やっぱ変わらずあの宿に住む」
「ふむ」
「あそこなら襲撃されて宿が半壊しても罪悪感が無い」
「おま・・・」
「それと、ぶっちゃけるとさ」
「うん?」
「今回の主犯というか、こうなるように仕向けたのってポーカロさんアンタだと思ってるんだよね」
「わ、私ですか・・・?」
「そう」
じゃないと色々と辻褄が合わないし、余りにも事がスムーズに進み過ぎてる。




