46話 実食
息子さんに連れられて家の方に移動した。
すると居間にはやりかけで放置された書類が散らばっていた。
「あんのクソ親父・・・」
「あ、そうだ。今日も差し入れあるんで後で皆さんで召し上がって下さい」
「すいません、ありがとうございます。でも、そこまで気を使って頂かなくても・・・」
「迷惑じゃなければ貰ってやって下さい」
「いや、そんな迷惑なんて。全然助かってます」
「なら良かった」
その時、玄関が開く音がした。
「妻が帰ったようです」
その言葉の通りものの数秒で奥さんが居間にやってきた。
「ただい・・・あ、いらっしゃいませ」
「お邪魔してます」
荷物を置くのを待ってから奥さんに質問をした。
「セイロってあるじゃないですか。どこに売ってるか知りませんか?」
「セイロ?」
「あー、名前が違ったりするのかな。竹で出来てて」
「タケ?」
「あれ?竹無い?」
「ちょっと分からないです・・・」
そうか。竹もセイロも無いのか。
「木製でも良いんですけど」
「はい」
「蒸す用の調理器具なんですけど」
「はい」
セイロの説明を1からするのは意外と骨が折れた。
竹や木をザルの様に円形に編み込んで意図的に隙間を作り重ねて積み上げた場合でも蒸気が下から上へと万遍なく巡るように出来ている。
知っていればこの説明でも伝わると思うが見た事も無くそんな調理方法も知らない人に説明するのは大変だった。
「何となく理解出来ました」
「どこかに売ってたりは?」
「しないと思います」
「依頼して作れると思います?」
「どうでしょう?」
構造は分かるけど俺では作れないから詰みか?
設計図描いて用途を伝えて作ってくれる職人さんでも居れば良いけど・・・。
「俺が作ろうか?」
「「「え?」」」
「ん?そんくらい作れんだろ」
「親父っ」
「ん?」
「どこ行ってたんだよ」
「いやぁ、そりゃ俺が言いたい」
「は?」
「どうせ今日も来るんだろうと思って迎えに行ったのに居ないんだからよ」
「仕事放っぽってかよ・・・」
「気分転換ってやつだな」
「サボってんじゃねぇよっ」
「お父さんの事は任せておきますか」
「あ、はい」
と、奥さんに連れられてキッチンへ。
「温め直したら完成です」
と、また寸胴いっぱに作られた煮物やスープが3つ。
「あ、そうだ。皿買ってきました」
「助かります」
アイテムボックスから取り出して皿を積み上げていく。
「え?」
まだまだ積み上げていく。
「・・・・・・」
奥さんの身長くらいに積み上げた。
皿タワーが3本。
「あ、それから。野菜は配達して貰えるって聞きましたけど。肉も配達して貰えるんですか?」
「え?あ、肉は買いに行ってます」
「だったらこれ使って下さい」
鳥に兎に猪に鹿に熊といつか食べるつもりでアイテムボックスに入れっぱなしだった肉達を並べていく。
「足りなかったらまだまだあるんで言って下さい」
「は、はい・・・」
「余った分は皆さんで召し上がって下さい」
「こんなに食べ切れないです・・・」
「減らしますか?」
無言で何度も頷いている。
「半分くらいにします?」
「も、もっと・・・」
「更に半分?」
「いえ、あの・・・」
「ん?」
「この大きな塊だけでも十分です」
「あ、それ猪ですね」
という訳で、他の肉は再びアイテムボックスに。
猪の枝肉1個だけで良いのか。
「無くなりそうになったら言って下さいね」
「は、はい・・・」
「あ、そうだ。差し入れあるんですけど」
「そんなにお気遣いなさらずに」
「今日は自作のスイーツを持って来ました」
「スイーツ?」
「お菓子ですね」
「作られたんですか?」
「はい、期待して貰って良いですよ」
「はいっ。あ、そろそろ温まりそうですね」
「早いですね」
「朝作ったばかりで冷めきってた訳じゃないので」
「なるほど」
温め直された物を次から次へとアイテムボックスに放り込んでいく。
「あ、しまった」
「??」
「スプーンってあります?」
「ありますが?あ、そんなに数は無いです・・・」
「人数分あれば大丈夫です」
「でしたら大丈夫です」
積み上げられた皿から小さい物を人数分持ち居間に戻った。
「あれ?おっさ・・・親父さんは?」
「拗ねて部屋に逃げていきました」
「じゃあ、差し入れは要らないですかね」
「要る」
「居るんかよっ」
「要るわっ」
皿にアイスクリームを盛り付けていく。ディッシャーは無いので汚いがそこはしょうがない。
盛り付けたのはバニラとブドウのアイスを2つ。
こうなるとチョコレートとかイチゴでも作りたい。
「何だこれ?」
「アイスクリーム」
「どうやって食えば良い?」
「少しスプーンで掬って食う。一気に食うなよ?頭痛くなるから」
「いただきまーす」
「どうぞ。2人も遠慮せずにどうぞ」
「はい、いただきます」「あ、いただきます」
3人共、初めて食べた様子で目を白黒させていた。




