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才色兼備のナナ姫は、恋の作法がわからない!  作者: 日々一陽
第11章 サモスランカの青い風
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第11章 第6話

 コンコンコン


「失礼します。本日のメインはバーナーナ牛のステーキ、キャッスル風です」


 目の前にステーキのお城が現れる。

 暫くその出来栄えを堪能すると給仕の女性がステーキで出来たお城の壁を取り壊し、僕とナナの小皿に取り分ける。


「さあ陽太さん、どうぞお召し上がり下さい」

「あ、うん。これ、ナナが作ったのよりかなり小ぶりだね」

「あれは陽太さんたちのための特別仕様でしたから」


 フォークで一口。

 しかし、さっきのナナの言葉が気になって彼女に目をやる。

 ナナは何も口にせず、自分の皿をじっと見ているだけだった。


「ナナも食べろよ」

「あの、陽太さん。ナナはやっぱりアルタイルへ嫁ぐべき…… かも知れません……」


 ナナが背負っているものの重さ、それは今日痛いほど分かった。

 本当はそれはナナの仕事ではない。

 星の政府の仕事だ。

 しかし彼女は彼女の星を愛している。

 星の人達を愛している。

 みんなを全てを、心から愛している。


 だから……

 だけど……


「本当にごめんなさい、全部わたしのわがままで、命の恩人の陽太さんに、わたしを助けてくれた陽太さんに今更こんな事を言って。わたしを嫌いになりましたよね」

「んなわけないだろっ!」

「!!」


「なあ、まだ何か方法があるはずだ。もう少し、もう少し僕に時間をくれ。何とかする、何とかするからそんなこと言うなよっ! そうしてナナの心配が晴れた暁には僕にプロポーズのチャンスをくれ!」

「陽太さん…… はいっ!」


 突然手を伸ばして僕の手を握りしめたナナ。


 ガシャン!


 持っていたフォークが床に落ちる。


「おいおいナナ、危ないよ」

「だって陽太さんが……」


 僕を離さない彼女の小さな手はとても柔らかで。


 やがて。

 どちらからともなく立ち上がると彼女は僕をゆっくり見上げる。


「よかったです。あの時陽太さんに助けて貰って本当に良かったです……」


 さらりと伸びた金髪に小さく震える彼女の口元。

 透き通るような薄紅色のその頰にはきらり光るひとすじが。


「なあナナ」

「あ、はい。陽太さん」

「ひとつ聞いてもいいかな」


 ナナはゆっくり手を離すとうつむき加減に目許めもとを拭う。


「はい、何でも」

「どうしても気になるんだ。あの時のこと」

「あの時?」

「ナナと初めて出会った時、トラックがナナ目掛けて暴走してきたとき。ナナなら、ナナの運動神経なら僕が時間を止めなくても簡単に逃げ切れたんじゃないか? 本当は僕は命の恩人なんかじゃないんだろ?」

「いいえ、陽太さんは間違いなくわたしの命の恩人です」


 大きな紅い瞳に思わずドキンと鼓動が響く。


「確かにあのトラックから飛び退くことは簡単でした。だけど、誰もバナナを買ってくれなくて。いや、そもそも地球とは取引すらできないって思い知らされて。そしたらわたし、アルタイルに嫁ぐのかなって。殿下に嫁がなきゃいけないのかなって思って。それならいっそのこと…… そんな思いが脳裏をよぎって……」

「思い詰めてたんだ……」

「はははっ。きっと話し相手もいなくて弱気になってたんでしょうね」


 ナナは笑顔を浮かべて息を吐いた。


「だから、陽太さんにはいくら感謝しても感謝しきれません…… あ、お料理冷めちゃいますよ。なんだかわたし、急にお腹が空いてきました」

「そうだな。僕もだ」

「じゃあ座ってください。わたしが食べさせてあげますねっ!」

「いいよ、自分で食べるから」

「ダメです、だって陽太さんのフォークは床に落ちちゃったでしょ!」

「給仕を呼べば」

「ダメです。はい、あ~ん!」

「……」

「あ~ん!」

「…………」

「あ~んっ!!」


 根負けした。

 けど、いいや。

 さっき食べたときは味気なかったそのお肉が、ジューシーで凄く柔らかいことに気が付く。


「ナナも食べろよ」

「はい、いただきますっ」


 結局、ひとつのフォークでふたりメインディッシュを食べ終えると、デザートはナナがレシピを伝えたというバナナのパフェがやってきた。



 第十一章 完




【あとがき】


 こんにちは。日向陽太です。

 急展開な十一章、いかがでしたか。


 僕は今、バーナーナから地球に戻ったばかりなのに作者に捕まりこのあとがきを書かされているわけでして。ホントにもう人使いが荒い小説ですよ。だいたいなんで登場人物があとがきまで書かなきゃなんないの? 作者が書けばいいじゃん!


 さて、バーナーナは温和で平和で幸せいっぱいの星、と言うのは表向きの顔で、その実、農産業は苦境に立たされてました。観光地を見て楽しむ分にはそんなこと全く分からないんですけどね。


 そんな故郷を想うナナの気持ち。

 彼女の助けになりたい、ナナの星の力になりたい……

 って思うんですけどなかなかいいアイディアが見つからなくて。


 そうそう、オリエの星はと言うと、帝国コンツェルンの粉飾スキャンダルで奪われていたシェアを一気に回復したらしいです。デザイン製品とかはイメージが重要らしくって帝国社側は大打撃だとか。しかし、農作物は全くそんな影響を受けないそうです。まあ、考えれば分かりますよね。バナナに生産地表示はあっても「帝国コンツェルン社扱い商品」なんて書かれてませんからね。消費者は気にしないわけです。


 ともかく、ナナの笑顔を取り戻さないと……


 と言うわけで次章予告です。

 ナナへの気持ちを思い知った陽太。

 しかし、バーナード星との正式な国交を開くという彼の思惑が簡単に進むほど日本は甘くなかった……


 次章・最終章『才色兼備のナナ姫は、恋の作法を気にしない』もお楽しみに。

 最後まで是非お付き合いください。日向陽太でした!


 って、最終章なの~っ!?



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