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才色兼備のナナ姫は、恋の作法がわからない!  作者: 日々一陽
第11章 サモスランカの青い風
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第11章 第4話

 ベランダには見慣れたナナの宇宙船。

 運転手はナナ、そして乗客は僕ひとり。


「ごめんなさい陽太さん、せっかくの土曜日なのに」

「何言ってるんだ。ナナは僕の命の恩人じゃないか」

「あれは、アルタイルの一件は、そもそもわたしが巻き込んだことですから……」


 2時になって。

 仕事を終えたナナに月子は彼女の「用事」は何かと問い詰めた。

 口ごもるナナに月子は。


「ナナねえ何か隠してるでしょ! 地球じゃ隠し事は重大な裏切り行為なんだよ!」


 とんでもないハッタリをかます。

 しかし、小学4年生のハッタリにまんまとめられるのがナナのいいところだ。


「えっ、そうなんですか! それじゃ、あのう、実は、でもやっぱり……」

「どうしたナナ、月子が言う通り隠し事は犯罪なんだぞ。懲役3年以下、または先生に怒られて廊下に立たされるんだぞ」

「も、もちろん隠し事なんかしませんよ。あの、ですね……」


 重い口を開けたナナが語るに、彼女の用事というのはバーナーナに戻り星の経済状況を確認することらしい。そして状況によっては皇女としてやるべき事があるのだという。


「あのう陽太さん、もし良ければ、なんですけど……」


 暫くの逡巡しゅんじゅんの後、ナナは僕を向いて。


「陽太さんも一緒に来て貰えませんか?」


 思い詰めたようなその瞳に、僕は首を縦に振ったのだった……


 今回は月子も、そしてオリエも留守番だ。


「では、出発しますね」


 二人を乗せた宇宙船は子供たちの嬌声が響くマンションのベランダから音もなく上空へと舞い上がる。そしてみるみる青い星が小さくなっていく。


「ひとつ陽太さんに相談があるのですが……」


 小さな点になった地球を見ながら彼女はか細い声で。


「バナナを、バーナーナの安全で美味しいバナナをもっとたくさん食べて貰ういい方法はないのかなって……」

「そのためにナナはバナナの美味しい料理法を勉強してるんじゃないのか?」

「はいその通りです。実は先日、地球での勉強成果を元に『誰も知らない! 美味しいバナナ料理20選』と言う本を書いたんです。バナナおにぎり、バナナカレー、かつバナナ丼にバナナのホルモン焼き。わたしが考えつく限りの新メニューを披露したんですが……」

「全然売れなかったんだな」

「いいえ、本はそこそこ売れてるそうです。表紙と巻頭カラーで披露したわたしのスク水写真が好評だったとかで……」


 それ、ホントに料理本か?


「でも、肝心の料理の評判は最悪だったらしくて……」


 そりゃあそうだろう。僕がダメ出ししたメニューも平気で入ってるし、どのメニューも食べたいと思えない。


「出版社から、次の料理本の巻頭カラーはビキニにして、料理のコーナーはなくしましょうと言われる始末で……」

「それ、既に料理本じゃないよな」

「はい、出版社としては売れれば内容はどうでもいいらしく……」


 僕は笑いを堪えてナナを見る。しかし彼女は今にも泣き出しそうな顔をして。


「結局わたしには料理のセンスなんてなかったんです。作戦は大失敗だったと言うことです……」

「それで他の方法を考えたいと?」

「はい、その通りです。先日、丸田・ザ・ジャイアントさんがたくさんのバイトをバーナーナの職業紹介所から採用したと言うので星に確認したんですが、やはりバーナーナの経済は悪くなる一方らしいのです。勿論、星の福利厚生制度は手厚く、食べていくのには困らないはずですが、中には福祉の受益をよしとせず仕事での無理がたたって体を壊す人もいるらしくて……」


 ナナの星の状況を何とかしてあげたい。

 実は、僕はあるアイディアを思いついていた。

 しかしそれは父から無理だと言われている。


「今から星の状況を一緒に見てもらって何かアドバイスを貰えたらと」


 思えばナナが地球に来た目的、それは地球にバナナを売り込むためだった。


「皇女さまの仕事って大変なんだな」

「そんなことありませんよ」

「だって自分の星のバナナを売り込むのもお前の仕事なんだろ」

「えっ? 違いますよ。まだ年端もいかない皇女にそんな仕事あるわけないですよ。わたしは…… その、わたしは好きでやってるだけですよ」


 窓の外に広がる真っ暗な空間。

 やがてその中に赤く輝く星が見えてくる。




 ピンポンパンポ~ン

 皆さま、長らくのご乗船お疲れさまでした。

 当機は間もなく目的地・バーナーナ星第一惑星『バーナーナ』に到着します。




 前回バーナーナに行ったときにも聞いた到着前アナウンスが流れる。

 やおら目の前にスクリーンが現れて、金髪の少女が満面の笑みを振りまく。

 顔アップの映像からカメラが引かれていくと紺のスク水に『ナナ』と書かれたゼッケンが顕わになる…… って、これアルタイルでも着ていたやつじゃん!


「あ、これ夏バージョンなんですよ。火曜の夜、ちょっとバーナーナに行って撮影してきたんです」

「って、水着でバナナ畑の紹介とか場違いだろ!」

「この方が観光客が喜ぶからってリクエストで……」


 美味しい作物や可愛い動物たちの案内が全然頭に入らないほどナナの魅力満開の映像。いや、これ、どう見てもイメージビデオでしょ! 観光案内になってないって!


「ごめんなさい。あの、他の人に肌を晒すのはいけない事だって知ってます。だけどこれが皇女の仕事なんです……」

「分かってるよ。いや別に怒ってるわけじゃないし」


 そうこうしている内に宇宙船はバーナーナの登機場に着陸した。

 僕らは円盤を降りると白い建物に入る。

 そうして、前回と同じく入星審査も通らないまま街中へと出た。

 時差の関係でこちらはもうすぐお昼。通りのカフェはランチを楽しむ人々でどこも賑わっている。不況という感じは受けない。


 だけど。


「この辺は観光と官庁関係で成り立ってる地域なんですよ。観光は頑張っているので結構賑やかですよね」


 そう言うとナナは道に止めてあった車のドアを開ける。


「さあどうぞ。これで行きましょう」


 言われるままに助手席に乗り込むと、ナナは運転席に座った。

 やがて車は音もなく上空へと舞い上がる。


「勝手に車使っていいのか?」

「もう陽太さんったら、勝手じゃないですよ。ほら、ちゃんとカギも持ってます。わたしが頼んで置いて貰っていたんですよ」


 街中を少し離れると白く小奇麗な建物の前へと着地する。


「ここは?」

「はい、バーナーナ職業あっせんセンター、別名・こんにちワークです」

「日本のハローワークにそっくりなネーミングだな」

「日本こそどうして日本なのに『ハロー』なんですか?」

「うぬぬ……」


 負けた気分がした。


「ともかく中に入りましょう」



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