第27話 報酬の受け取り
「お待たせしました。こちらが今回の依頼料となります」
「ありがとうございます」
商業ギルドのとある一室。ギルドの職員であるベルカさんが大量の金貨を載せたトレーを持ってきた。ちゃんと金貨が10枚ごとに並べられていて数えやすいように配慮されていた。
ある一定の金額を超えると、報酬の受け渡しは個室となる。いつもの商業ギルドの受付で大金を支払うのは悪いやつらに目を付けられてしまうからな。
「国からの依頼の方は今回も依頼料が少し上乗せされておりましたよ。さすがですね、ガクト様」
「満足してくれたようでよかったです」
ありがたいことにカトレアは依頼料を上乗せしてくれたみたいだ。どちらかというとミレディさんか。ただでさえ結構な金額をもらっているのにありがたいことだ。
旅をしているとお金はいくらあってもいいからな。遠慮なくいただくとしよう。俺が教えたレシピも使い方によっては結構な財産になるだろう。
そして王都で稼いだお金をいろんな場所へばらまいていく。うむ、経済はこうして回していかないとな。
「それでは一月後くらいにまた来ますので」
「はい、よろしくお願いいたします」
もらった金貨をバックパックに収納し、ベルカさんに挨拶をして商業ギルドをあとにした。
「そこの兄ちゃん、良かったら見ていってくれよ!」
「あら、そこの綺麗なお嬢さん。うちのお店は安いわよ!」
どの屋台のお店も必死にお客さんを呼び込んでいる。ここ王都の市場はお客さんも多いが、お店の数も非常に多いので、店同士での競争が非常に激しい。
そのためお店の入れ替わりも非常に多いのである。市場のお店は賃貸のような感じで期間を決めて商業ギルドと契約をするので、先月来た時にはあった店が別の店に替わっていることなどザラだ。
俺みたいに定期的に王都を訪れるのならいいが、ずっと王都で暮らしている人は大変だろうな。
「おっ、久しぶりじゃねえか、ガクト」
「久しぶりだな、ローグ」
そんな数々の店が並ぶ市場の中、とある一軒の店の前へとやってきた。
ローグは人の良さそうな40代くらいの男性で、頭からはケモミミ、腰のあたりから茶色い尻尾が生えた犬の獣人である。
「またいろいろと買いに来たよ」
「おう、助かるぞ。おかげさまで、なんとかこの王都で商売ができているからな。王都は稼ぎもでけえが、物価も高えから暮らしていくのが大変だぜ……」
王都は他の街と比べて物価が高いから、ここで生活をしていくのはとても大変なのである。毎回ここに来ると、このお店が残っていることにほっとしてしまう。俺は一月か二月に一度くらいしかこの店に来ないが、その分一度にたくさん買い込むため、名前を覚えられてしまった。
「前回購入したルミールの実はなかなか良い味だったから、また頼む。おかげでいつものお得意様にうまい飯をご馳走することができたよ」
昨日パッタイを作る時の味付けでタマリンドの代わりに使ったのはこのルミールの実だ。そのおかげでカトレアたちも満足してくれた。
甘酸っぱいこの実は他の料理にも使えそうだから、また購入していくとしよう。
「あいよ。ガクトはそこまで安くねえ香辛料や調味料をたくさん買ってくれるからありがてえぜ」
「俺の方こそローグの店はいろんな商品を置いているから助かるよ。それに値段も王都にしてはかなり良心的だからな」
犬の獣人であるローグは他の種族に比べて嗅覚が非常に良い。そのため、この店で仕入れている香辛料や調味料は品質が良く、種類も豊富だ。ただ、あまりにも刺激臭があるものはローグが駄目で仕入れられないらしい。
「さて、今回もいろいろと買わせてもらうぞ。これとあれ、それとこの辺りも全部もらおう」
「……相変わらずどこの貴族かってくらい気前よく買っていくな」
手当たり次第に店の商品を選んでいく。確かに高価な商品も多いが、依頼の報酬をもらったばかりで懐は温かい。それに香辛料はそれほどかさばらないからバックパックにたくさん入ってくれるのだ。
食に関する物についてはケチるつもりはない。それにあまり使えなそうな香辛料であっても、思わぬ料理に使えることがあったりする。前世の知識に加えて、こちらの世界のその地域の人たちの情報を組み合わせていろんな料理を作ることができるからな。
「そうだ、こっちのやつは先月から新しく仕入れたものだ。特にこいつは結構高かったな。ほんの少しだけなら味を見てもいいぞ」
「どれどれ……。うん、こっちのやつは辛味が強めだが、辛いだけでなく深い風味があるな。よし、こいつももらおう」
「毎度あり!」
そんな感じでいろんな商品を買っていく。たまに地方の村で手に入れたものがこの店にも仕入れられることがあるから面白んだよ。まあ値段は輸送費なんかもあるから、例外なくこっちの方が高いんだがな。
さて、これで王都に来た目的はすべて果たした。またしばらく新しい場所へ行くとしよう。




