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おっさんバックパッカーは異世界へ行っても自由気ままに旅をする。  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第15話 王都

「相変わらず大きくて立派な城門だ」


 目の前には厚い石造りの壁がそびえ立ち、門の両脇には騎士の紋章の刻まれた旗が誇らしげにはためいている。門そのものは黒鉄でできており、無数の鋲が打ち込まれた重厚な造りだ。その高さは軽く十数メートルを超えている。


 もちろん瞬間転移で王都の中に直接移動することもできるが、王都へ来る時は毎回城門の外に転移している。街によっては入場税を取ったり人の流れを把握するために入り口でチェックをしている場所もあるからな。


 特にここ王都はそういったセキュリティもしっかりとしている。まあ、瞬間転移スキルがあれば関係ないけれど、そういった配慮は大事だ。




「久しぶりに来るとだいぶ違うものだな。今回は少し辺境の地域ばかりへ行ってたから、それも当然か」


 城門をくぐった瞬間、目の前に広がるのは活気に満ちた大通りだった。石畳の道は陽の光を浴びて白く輝き、行き交う人々の賑やかな声が四方から響いてくる。


 通りの両側には色とりどりの旗がはためく商店が軒を連ね、焼きたてのパンや香ばしい肉の串焼きの匂いが鼻をくすぐった。大通りを行き交う人も様々で、商人や武器や鎧を身に着けた冒険者風の者、フサフサとした耳や尻尾を生やした獣人やヒゲモジャで背の低いドワーフといった人族以外の種族も目に映る。


 さすが王都というだけあって、この国の様々な場所から多くの人が集まってきている。


「市場を回りたいところだけれど、商業ギルドへ行くのが先か」


 王都は物の出入りが激しいから、しばらく来ないだけで市場に並ぶ商品が全然違う。どの街でも市場を巡るのは楽しいものだが、王都の市場は他の街から様々な商品が集まってくるので特に楽しいのだ。


 他の街の商業ギルドや冒険者ギルドの建物も大きかったが、それよりもさらに大きくて派手な王都の商業ギルドへ入る。


「ガクト様、お久しぶりです」


「ベルカさん、お久しぶりです」


 ショートカットの良く似合う商業ギルド受付嬢のベルカさんだ。


 1~2月に一度しか来ないのにこうして名前を憶えてくれていると嬉しく感じるものだ。まあ俺がちょっと特別ということもあるが、それでもである。


「輸送依頼が何件か届いておりますよ。そこまで緊急性の高い依頼はありませんね」


「ありがとうございます。いつものように明日と明後日に分けて輸送しますね」


 そう、これこそが楽に高額の報酬を得られる瞬間転移スキルを利用した俺の仕事だ。1~2月に一度数日間だけ、これらの依頼ともうひとつの依頼を受けて一気に大金を稼ぎ、あとはのんびりふらふらと異世界を旅するのが今の俺の生活である。


 ……えっ? 瞬間転移スキルというとんでもないチート能力があるのにそれでいいのかって? 女神にも自由に過ごしていいと言われているのだからそれでいいんだよ。


 三十代後半のおっさんが転生して異世界にやってきて、いきなりそこまで大それたことなんてできるわけがないし、できたとしてもする気はない。おっさんは現実をよく知っているのである。


「それと()()への連絡もよろしくお願いします」


「はい、承りました」


 そしてそれとは別にもうひとつの依頼である国からの依頼を引き受ける。明日明後日は輸送の依頼を受け、こっちの方はその次の日に引き受ける予定だ。


「あと今日ニッグはいます?」


「はい、副ギルドマスターはおりますよ。呼んでまいりましょうか?」


「いえ、伝言だけお願いします。今日はいつもの酒場で飲んでいるから、もし来られるなら来てくれとお伝えください」


「承りました」


「ありがとうございます。それではこれで失礼します」


「いつもありがとうございます、ガクトさん。またのお越しをお待ちしております」


 ベルカさんはにっこりと微笑む。


 本当に美人な女性なので、惚れないように気を付けなければならない。王都の商業ギルドの受付嬢さんは綺麗な人ばかりなのである。


 さて、夜まで時間があるから以来の準備をしつつ、王都の市場を回ってみるとしよう。




「おっ、来たか。こっちだニッグ」


「久しぶりだな、ガクト。相変わらずいつもいきなりふらっと現れやがって」


 王都のとある酒場。


 いつも俺が旅をする時は基本的に同じ店はあまり訪れず、新しい店を開拓するのだが、王都に来た時はこの店で飲むと決めている。料金は少し高いが、酒と料理がとてもおいしく、個室なのでのんびりと飲めるからだ。


 そして部屋に入ってきた俺と同い年くらいの男。分厚い胸板に鍛え上げられた太い腕が目を引き、その腕に浮かぶ筋肉の隆起は歴戦の傭兵や冒険者と思わせるが、実際には筋トレ好きの商業ギルド副ギルドマスターである。


「おまえと違って俺は自由人だからな。嫁さんと子供は元気か?」


「おう、元気すぎて困るくらいだぜ。学園の方も楽しそうに通っているぞ」


 若くして王都の副ギルドマスターになって、綺麗な奥さんと結婚して娘までいる人生勝ち組の男。


 なぜそんなニッグが俺みたいな旅人と友人なのかというと、初めて王都へ来た時に乗合馬車で数日間一緒になり、意気投合した。王都で別れたあと、商業ギルドで再会した時は驚いたものだ。


 旅をしているとこういった偶然が稀にあるから面白い。


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