第三百八十七話
表彰式では、優勝を大輝、準優勝を秋として発表され、それぞれ表彰されることとなる。大会自体が意外な展開で盛り上がったこともあって、表彰式もたくさんの人が大輝たちを見にやってきていた。
大輝も秋も結果を受け入れ、賞金を受け取ったが、最後に優勝者インタビューということで挨拶することになった大輝はずっと思っていたことを口にすることにした。
「えー、どうも。今回優勝ということになった大輝です」
穏やかに微笑みながら大輝が名前を言っただけで、わっと観客席が盛り上がる。それほどに今回の大会における大輝の活躍はすばらしいものだった。
「ありがとうございます。……今回僕が優勝という形になりましたが、決勝はどちらが勝ってもおかしくない戦いでした。現に僕も最後には気を失ってしまいましたので」
苦笑いをする大輝。それを聞いた観客の中にはそれでも彼の実力を疑わない者や謙虚な姿に笑いを誘われるものもいた。
「今回は優勝という扱いをしてもらいましたが、運営さん次第でどうなっていたかわかりません。――なので、次に参加することがあれば圧倒的な力で勝てるように精進したいと思います」
静かに、しかし強気な大輝の言葉を聞いた観客たちは彼の熱い気持ちを感じ取って自然と拍手が沸き起こっていた。
すぐに元の柔らかい雰囲気に戻ってはにかむ大輝がその歓声に手を挙げて答えていると、ずんずんと秋が近づいて大輝が手にしているマイクのような魔道具をふんだくる。
「――大輝!」
秋が最初に口にしたのは大輝の名前、それは大きな声が更に増幅されたものであるため、観客席は彼女が何を言うのかと静まり返った。
「優勝おめでとう!」
まさか、わざわざ魔道具を掴んでそんなことを言うのかと観客は肩透かしを食らう。驚きに皆がキョトンとしていた。
「……でも!」
しかし、まだ秋の話は続くようだった。
「次に戦う時は……絶対に負けないわよ!!」
大輝に向かって力強い眼差しで大きく指をさした秋。大輝が圧倒的な力で勝つと宣言した、それに対する宣戦布告だった。
秋はそれだけ言うと、魔道具を近くにいた審判に渡す。
静まりかえった観客席は、秋が言った言葉を理解すると大きな波のように歓声が巻き起こり、秋のことを称える声が会場中を支配することとなった。
しばらくの間、観客席は盛り上がっており、秋たちが退場するまでそれは続いていた。
表彰式を終えた一行は、賞金を受け取ってホクホク顔で会場をあとにしていた。
「いやー、秋ちゃんすごかったねえ。まさかあんな宣言をするなんて」
会場の空気は全て秋が持っていったため、ニヤニヤと笑いながらはるなが秋のことを褒める。
「やめて! なんか勢いで言っちゃったけど、あのあとすごく後悔したんだから!」
会場の空気にあてられて思わずやってしまったことであり、秋は今でもなんであんなことをしてしまったのかと自己嫌悪に陥っていた。顔に手を当ててやってしまったという表情をしている。
「でも……秋、すごくかっこよかったよ!」
宣言された大輝もニコニコ顔で秋のことを褒める。決して彼女のことを茶化すつもりはなく、真っすぐな眼差しで言う大輝の言葉に秋は余計恥ずかしくなっていた。
「うー……大輝まで! ――でもあの宣言は本気だから、次やる時は負けないわよ!」
最初は頬を赤らめていた秋は恥ずかしさが自身の中で一周して、怒りに変わり、再度睨み付けるように会場での宣言を口にすることになった。
「うん、僕も負けないよ!」
それに対して大輝も真剣な笑みで言葉を返す。
そんな様子を仲間たちは暖かく見守るような笑顔を浮かべていた。
「腕試しの大会っていうより、二人のための大会だったねえ」
ふにゃりと笑ったはるなの言葉に冬子もリズも頷いていた。
「あー、決勝がそんな感じだったからね。でも秋との戦いは痺れたね、正直なところどっちが勝ってもおかしくなかった……」
大輝は厳しい表情で決勝戦を思い出していた。
「みんなでもっと強くならないと」
冬子は抑揚のない声で言うが、その言葉はみんなの心に響く。凛とした彼女の声は時に冷静に物事を判断させる手助けとなる。
「うん、二人に負けてられないね!」
「はいですっ!」
特にあの大会を第三者として見ていたはるなとリズの心には強く響いた。どんどん成長する大輝と秋の姿を見て置いていかれないようにしなければとずっと思っていたようだった。
「うん、私もがんばらないと」
だがそれは大会で活躍した秋も同じ心境だった。
「揃って強くなればパーティの力もあがるから楽しみだね。――さて、それじゃ強くなるために次の街に向かおうか!」
次の街、ドワーフの国で装備を整える。それは、本来の目的であり、装備を揃えることは魔王との戦いに向けて必須事項であった。
「大臣さんにもらった一覧の中に、地図も一緒にあったからドワーフの国にも迷わず行けるよ!」
ドヤ顔ではるながヒラヒラと見せる地図に他の面々は驚いていた。
「そんな便利なものが……」
これまではるなはこのことを誰にも言わず黙っていたため、みんなからジト目で見られることとなる。
「え? あれ、言ってなかったっけ? あははー」
みんなからの視線に笑ってごまかすはるなだったが、四人はため息をついて仕方ないと苦笑していた。
「――優勝おめでとうございます」
和んでいる四人に声をかける者がいた。
「あれ? 大臣さんですか?」
一行に話しかけてきたのはルードレッドだった。ゆっくりとあいさつ代わりの礼をした彼が近づいてきていた。
「はい、大会は私も拝見させて頂きました。……王がお忍びで見に行きたいとのことで、その付き添いだったんですけどね」
今頃は執務室で仕事に戻っている王のことを思い出してルードレッドは苦笑する。王を一人で行かせるわけにもいかず、その我がままに付き合わされたとのことだった。
「見ていたんですか……なんか恥ずかしいですね……」
知っている相手に、密かに見られていたと聞いて大輝は照れ笑いをしつつ、どこかむず痒い感覚を覚えていた。
「ふふっ、すいません。それで、みなさんの戦いを見た上で再度王から話したいことがあるとのことで、よろしければ明日城へいらして頂きたいのですが……」
これが本題だとルードレッドが確認する。
「え? あぁっと、僕は構いませんが……大丈夫です」
一人で決めてしまったことに気づいた大輝が慌てて四人の表情を確認すると、みんなが頷いたため、今度は明確な返答を返す。
「ありがとうございます。それでは、明日の昼時に城へいらして下さい。ゆっくりと食事でもしながら話したいそうですので」
ルードレッドは深々と一礼すると、城のほうへと戻って行った。
「……というわけで、ドワーフの国は一旦お預けだね。今日は地図を見て、場所をしっかりと確認しておこうか」
「わーい、お城のご飯楽しみだなあ!」
大輝の言葉を話し半分に聞いていたはるなは両手を挙げて大きく喜んでおり、すでに明日の城でのご馳走に意識が向いているようだった。
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