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再召喚された勇者は一般人として生きていく?  作者: かたなかじ
召喚された四人の高校生は勇者として生きていく

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第三百四十一話 

「よーしよしよし、いい子だから逃げないでねえ」

 はるなはあやすような声をかけながら森ウサギへと近づいていく。そっと手を伸ばしながら近づくその表情は愛らしい森ウサギを前にでれっと溶けていた。

「きゅうん?」

 首を傾げる森ウサギの姿はさらに愛らしく、我慢できなくなったはるなは捕まえようと飛びついた。

「きゅ、きゅーん!」

 しかし、はるながジャンプした先には森ウサギはいなくなっていた。ぴょんぴょんと力強いジャンプと共に走り去っていく。


「あ、あれ? おかしいな……」

 どうやら森ウサギははるなから漂う不穏な気配を感じ取って逃げてしまったようだった。あともう少しのところで逃げられてしょんぼりとしながらもここにはほかにも森ウサギがいるだろうと気持ちを切り替えて次の子を探すことにしたようだ。

「つ、次こそは……えいっ!」

 近くの草むらで食事をしていた別の個体に飛びかかるはるなだったが、それも空振りに終わる。森ウサギたちは皆、野生の勘ではるなの欲望に気付いて逃げてしまうのだ。

「うぅ、なんでなの……今度こそ!」

 それでもあきらめずに何度も挑戦するが、一向に芳しい結果にはならなかった。


「……全然ダメだった」

 全戦全敗に終わってがっくりと落ち込んだはるなが大輝たちのもとへ戻ってくる。終始草むらにとびかかっていたために服や髪に草などがついてしまっていた。

「はるな、あれじゃあ怖がってウサギも逃げちゃうよ。日本でも猫にあんな感じで近寄って逃げられてたじゃないか」

 大輝は同じようなシーンを以前にも見たことがあるため、はるなについた草などを取りつつ呆れながらそう言った。

「うぅ、返す言葉もありません」

 追い打ちをくらったはるなは、肩を落としてうなだれる。はるなは良くも悪くも素直で一直線、体当たりで感情を表現するタイプのために、警戒心の強い動物たちから一目散に逃げられてしまうのだ。


「はるな、大輝が言ってるのは日本にいた時と同じじゃ無理ってことよ。ここは異世界だし、今のあなたには魔法があるじゃない」

 それを聞いたはるなは驚きと感動で目を見開いていた。

 可愛いものを追いかける時は怖がらせないように声をかけながら、逃げる暇を与えないように飛びつく。それがはるながいつもやっている作戦だった。それではせっかく怖がらせないように近づいても最後の一手ですべて台無しにしてしまう。いつも失敗しているのにも関わらず、自分のお気に入りのものを見つけるとそれをすっかり忘れてしまうのがはるなだった。

「そうか! 魔法があった!」

 秋の言葉を聞いて何かを思いついたはるなは再び元気を取り戻して森ウサギを探しに行く。


 これまでに彼女が何体も飛びついて逃がしてしまったため、すぐには見つからなかったが、しばらく探しているとついに一匹の森ウサギが見つかる。その他の森ウサギは怯えてすでにこのあたりから逃げ出しており、もしかしたらこれが最後のチャンスかもしれないとはるなは考えている。

「今度こそ……てい!」

 静かに近寄るとはるなは再び森ウサギに飛びついた。ここまでは先ほどの何度も失敗と同じだった。

「きゅー!」

 もちろん突然とびかかってきたはるなに驚いた森ウサギはその場から飛びのいた。

「今だ!」

 その瞬間を逃さずにはるなは既に次の行動に移っていた。

 彼女は森ウサギが逃げた方向に魔法の障壁を生み出していた。とっさに驚いて逃げた森ウサギもまさか目の前に障壁があるとは思わず、それに思いっきり衝突してしまった。


「きゅーーーん!!」

「はい、捕まえたー」

 障壁にぶつかって飛ばされた先にいたはるなに捕まった森ウサギだったが、最初はもぞもぞと動いて逃げようとしていたものの、すぐに観念して抵抗をやめる。

「可哀想だけど、逃げないようにこれをつけてっと」

 そっとなだめるように撫でたあと、念のため魔物捕獲用の首輪を森ウサギにつける。これをつけていると、装着者の言葉に逆らうと動きがしばられるというものだった。


 抵抗をやめた森ウサギは首輪もすんなりと装着することができた。元々人懐っこい性格も相まって優しいはるなの雰囲気を感じてすっかり懐いている様子だった。

「これで依頼達成だね!」

 苦労の末に森ウサギの捕獲を完了したはるなは、達成感に満ちた表情で腕の中に抱いた森ウサギのことを優しく撫でている。

「はるな、その子は依頼の目的の魔物なんだから、戻ったらわかれることを忘れないでね」

 あまりにも森ウサギをかわいがるはるなの様子を心配した秋に指摘されて、そのことを思い出した彼女は苦い表情になる。飼おうとしていない動物に不用意に優しくすると別れがつらくなるからだ。


「うぅ、そうだった……」

 森ウサギの愛らしさに夢中ですっかり依頼のことを忘れていたらしく、はるなはショックを受けていた。

「まあ、今回は依頼だから仕方ないよ。もし、どうしてもということなら、また後で捕まえにくればいいさ」

 あんまりにも落ち込むはるなを見た大輝はその肩に手をおいて優しく声をかけた。はるなが一生懸命捕まえるために頑張っていた姿を見ていたからこその発言だった。

「うぅ、わかった……じゃあ、戻るまでよろしくね、ウサギさん」

 渋々頷いたはるなは報告するまでは腕の中にいる森ウサギをかわいがろうと決めていた。さっそくむぎゅっとその豊満な胸に森ウサギを抱いてその毛並みを堪能している。


「それじゃ、次はリズが受けたかった依頼ね。まだ日は高いからいけるわね」

「はい! 確か、この森の南西のほうに薬草の群生地があると聞きました」

 自分の番になったと表情を輝かせたリズは情報収集に抜かりなく、目的地を見定めていた。自分の知識をやっとみんなのために活かせるとどこか興奮を抑えきれない様子だった。

「よし、それじゃ向かおうか」

 大輝の声かけに頷いた一行は、薬草を求めて出発する。


 森ウサギのいた小さな草原からリズの先導で向かった先には驚くべき光景が広がっていた。

「ここをこえれば薬草の群生地があるそうなんですが……」

「う、うん、これはすごいね」

 リズの言葉に困ったという表情でどもりながら返事をする大輝。他の面々も皆、その光景に驚いていた。

 そこには確かにいたるところに薬草があるようだった。しかし、そこには巨大なオークが闊歩している。そのサイズは以前戦ったビッグボアを超えていた。


 しかも、それが数十体はいるように見える。姿を見られずにまっすぐ突っ切って薬草を採取するのは困難だろうという状況だった。

「ど、どうしようか」

 どうしたものかといった大輝の質問にみんなも黙ってしまう。まさか薬草採取にきて巨大なオークたちに遭遇するとはだれも予想していなかったからだ。

「……それでも、依頼を達成しないとです」

 だがその中でも唯一リズだけが、強い想いを持ってその光景を見ていた。ドスンドスンと地響きのような大きな足音で歩く巨大なオークを目の前にしても必ず目的の薬草を手に入れてみせるという決意が胸にあった。

「う、迂回しましょうか」

 まっすぐ突き抜けていくのが最短ルートなだけで、このオークがいる場所を避けて進めば、少し遠回りではあるが薬草がある場所に辿りつくことができる。


「……やろうか」

 リズの真剣な表情を見ていた大輝は剣の柄に手をあて、オークたちを睨み付けていた。

「大輝、あなた本気なの?」

 危険なのは目に見えている、そして薬草の収集依頼の報酬は低いためここで無理をする必要はなかった。わざわざ自分から無茶をしに行かなくてもいいだろうと秋が思わず大輝の肩をつかんだ。

「いや、だってさ、このままにしておくのは危険だろ?」

 少し首を曲げて振り返った大輝は他の冒険者や森にやってきた者の安全性を考えていた。薬草の依頼はわりと常時ある依頼のひとつなので、大輝たち以外にもここに立ち寄る者がいないというのは断言できなかった。


「それは! そうだけど……」

 思わず手を引っ込めてしまった秋はそれを聞いてもなお、乗り気ではないようだった。ここにいるオークは、オーク種の中でも上位に位置するジェネラルオークだった。そして、ジェネラルがいるということはその上のキングがここにいる可能性も否定できなかった。まだただのオークだったら彼女も賛成して戦いに挑んだかもしれないが、もしもキングオークが現れたらたとえ勇者である自分たちでも危険であることに変わりがないからだ。

「うちはだいくんの意見に賛成だよ、こんなにたくさんいるのは危険だよ。もしこれ以上増えたら街やさっきの農場にも行くかもしれないし」

 はるなは大輝同様、このまま放置することの危険性を説いていた。それに以前、ここに来る前に小さな村で自分たちが勇者としていろんな人を助けたい、と言っていたことも大輝に賛成した理由の一つだった。


「秋、やろう。こうなった二人は何を言っても動かない」

 秋の肩になだめるように手をのせた冬子は大輝とはるなの幼馴染コンビの性格を考え、そうするのが一番だと判断する。いつも正義感にかられる大輝とそれについていくはるな、それをずっと見てきたことを思い出す。

「……わかったわ。でも、ちゃんと作戦を練ってやりましょう。何も考えずに行ったら、囲まれてこっちがじり貧になるだけよ」 

 色々反対はしていたものの、秋も危険性を認識していたため、最後には倒すという案にのることにした。

 四人のやり取りを見ていたリズは黙ったままだったが、自分の危険よりも他者を思いやる彼らを見て、これが勇者というものなのかとごくりと唾を飲んでいた。

お読み頂きありがとうございます。

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再召喚された勇者は一般人として生きていく? エルフの国の水晶姫 1/21発売です!

ナンバリングされていませんが、2巻にあたります!

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新作投稿始めました。 五百年後に再召喚された勇者 ~一度世界を救ったから今度は俺の好きにさせてくれ~

本作「再召喚された勇者は一般人として生きていく?」コミカライズ連載中!

配信は電子コミックサービス「 LINEマンガ 」、漫画担当は濱﨑真代さんとなります。

コミカライズ2巻は8月7日発売です! i484554

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