第三百話
前回のあらすじを三行で
ギガントサイクロプスに止めをさすエド
倒れたエドに攻撃をしようとするブルグ
次の戦いは……レイラとボーガ
「どこからでもかかってこい。我が鉄壁の防御が全て防ぎきってくれよう」
全ての攻撃を受け止めるように立つボーガは自分の鎧をドンと叩きながら言った。
「ふーん、そんなことを言っちゃっていいのかな? あたしは……強いよ?」
強い。そう口にしたレイラの目はまるでボーガの防御を射抜かんと言わんばかりの鋭さだった。
「なかなかいい顔をするじゃないか。受け止めてやろう、来い!」
ボーガは左右の拳を合わせて構えをとっている。
「舐めてる、わけじゃないんだよね。それじゃあいくよ!」
レイラはそのままボーガへと真っすぐ走り出した。右手にはグニル、左手には紅王が握られている。蒼太は使いやすいほうをメインにして、もう一方は壊れた時用にサブ武器にすればいいと言っていた。
しかしあえて彼女は二本使うことを選択した。
両の手から繰り出される攻撃は同じ一点目がけて一本の槍であるかのようにボーガへと突き刺さっていく。
ぶつかる瞬間に聞こえてきた音は、槍が弾かれる音でも盾が砕かれる音でもなかった。
金属と金属が擦れるその音は、キキキーっという音で二人の耳を傷めていた。
「ぐうううう、はあ!」
ボーガはグニルを左手で、紅王を右手で、二本の槍の穂先を滑らせて力を外側に受け流していた。
「くっ、こんなもので!」
レイラの腕は槍とともに左右に勢いよく吹き飛ばされそうになるが、強引に力技でそれを食い止めると、ボーガの腕を踏み台にして彼を飛び越える。
ボーガも攻撃を受け流すことだけで精一杯であり、隙をついての反撃はできなかった。
「はあはあ、なかなかやるじゃないか。これまでに受けたどの攻撃よりも強力だったぞ」
二人は振り向き、再度距離をとって対峙している。
「まさかあの攻撃を防がれるなんて思わなかったよ。鉄壁って名はだてじゃないみたいだね」
しかし、全力で攻撃を防いだボーガに比べてレイラからは余裕があることが見てとれた。
「一撃必殺が駄目なら……次は手数だよ!」
すぐに頭を切り替えたレイラはボーガの傍まで駆け寄ると次の攻撃を繰り出していく。
その攻撃は速く、強く、多彩だった。
「くっ、だがこの鎧は特別製だ。これを貫けることは、ない!!」
迫りくるレイラの攻撃をなんとか捌こうとするが、全ての攻撃を防げているわけではなく、何度も鎧を突かれていた。
「ふう、これだけ攻撃しても傷一つつかないなんて……それ本当に鎧だけの力なの?」
一度距離をとったレイラが訝しげな表情と共に質問を投げかける。
「な、なぜそう思う」
ボーガはここまでの攻撃で自分の鎧の秘密の一端に気付き始めているレイラを脅威に思い、どもってしまう。
「だって、この武器。こっちがグニルで、こっちのやつが紅王っていうだけどね、これ作ったのソータさんとアントガルさんなんだよ? それで使ってるのがあたし。それで傷一つつかないっておかしいでしょ」
レイラの中では筋の通った考えだったが、ボーガにはそれが何を示すのかわからないため首を傾げている。
「お、おかしいのか?」
そして、困惑のままそんな言葉を返してしまう。
「おかしいよ! ソータさんたちが作った武器なんだから、最強に決まってるじゃない。素材だってものすごいやつ使ってるんだよ! だから、直撃を喰らっているはずなのに壊れないその鎧……おかしいよね」
なぜそんな質問をされるのか理解できないとレイラは再度自分の主張を続ける。
「わ、わけのわからんことを言うな! とにかくお前の攻撃は俺には効かない……だから、今度は俺の番だ!」
それまで足元に転がしておいた大剣をボーガは片手で持ち上げる。そしてそのままレイラへと向かってきた。
「いくぞ!!」
刀身の太く大きなそれをボーガはまるで片手剣のようなスピードで扱っている。
「すごい!」
レイラはそれを避けながら素直に感心していた。
「力持ちだね! それなら鉄壁っていうより怪力って二つ名でも許されると思うよ!」
それはレイラの本心だった。確かに彼は固い、強固だった。しかし、自身の装備や力に自信があった彼女はボーガに何かトリックがあるように思えた。
だが、今現在大剣を振り回しているその力は紛れもなく彼自身の肉体の力だと思ったのだ。
「ぬかせ! 俺に攻撃を通すこともできない、そして俺の攻撃を避けることしかできない。追い込まれているのはお前だぞ!」
攻撃範囲の広い大剣、それをボーガは軽々と振り回す。
「確かに、これは、なかなか近寄れないね」
そう言いつつも、その攻撃全てをなんなくレイラは避けていた。
「むう、そろそろ、当たれ!」
一瞬込める力を最大にしたその一撃は、それまでの攻撃とテンポが変わったため、レイラの髪を何本か斬ることに成功する。はらりと舞い落ちたそれを視認したことでレイラははっとした表情になった。
すると彼女はそのまま足を止めた。
「足を止めたな、くらえ!!」
なぜ足を止めたかはわからなかったがボーガはチャンスと思い、強く大剣を振り下ろした。
それは大きな金属音と共に弾かれることとなる。
「あたしの髪……切ったね」
レイラは淡々とそれだけ呟いた。
ボーガにとって彼女が動きを止めたことはチャンスでその隙に攻撃したため、それを防がれたことに驚いていた。その驚きと共になにか異様な雰囲気を感じ取ったボーガは彼女から距離をとった。
彼を数歩後ろに下がらせるに至った理由はレイラのその変貌ぶりだった。
「髪……よくもよくも!」
睨み付けるようにボーガを見るレイラの怒りは頂点に達しており、その瞬間、彼女の纏う力に耐えきれなくなった偽装の腕輪が音を立てて壊れた。そして見た目も変化し始めた。
皮膚の色が変わり、鱗がその表面を覆っていく。頭には角が生えてきていた。
「お、おいそれは一体……」
その変貌ぶりに驚いたボーガは更に数歩後ろへと下がる。
顔以外の皮膚を赤い鱗が覆ったところでレイラは戦闘に戻る。
「逃げないでよね、あたしに火を点けたのはあなたなんだからさ」
そう言うと、その場でレイラは大きく振りかぶっていた。
「いっけええええええええ!!」
そのままグニルをボーガに向かって思い切り投擲した。その速度はまるで弾丸のごとく一瞬のうちにボーガまで到達した。
「なっ!? はやっ!」
そう口にした時には既にボーガの胸のあたりに触れていた。
「ぐおおおおおおおおおおお!!」
呆気に取られていたボーガは防御が間に合わず、強固な鎧を貫こうとするグニルの威力に押し込まれる。何とかその場にとどまろうと踏ん張るが、その身は勢いに押され、徐々に後ろに下がっていた。
「なん、で、こんなに!」
その威力は今までに受けたどの攻撃よりも強力なものだった。
しかし、レイラの攻撃はそれで終わりではなかった。
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