第二百九十五話
前回のあらすじを三行で
レイラVSボーガ始まる!
黒古龍!?
古龍の名は
イシュドラたちがぶつかりあった頃、蒼太とディーナは更に上の階に進んでいた。
「戦いを見たかった気もするが……」
そう言って二人は装置に乗りながら上を見据える。
「そうも言ってられないよな。みんなが繋いでくれているわけだから」
「ですね」
ディーナもこれまでの階で仲間を置いて進むことに後ろ髪をひかれる思いがあったが、それを振り切ってここまで進んできていた。
装置が止まり、そのフロアに足を踏み入れると今までと違う空気が漂ってくる。
今までのフロアは全て野外だったが、このフロアは城の大広間のような空間だった。
「やっとここまで来たか。待ちくたびれた、というほどでもないか」
蒼太たちがいる場所から更にずっと奥に向かった場所に玉座があり、そこには本郷が座っていた。
「早く来てほしかったら、あいつらを順番に配置するなんて真似しなければよかっただけじゃないのか?」
蒼太は冷たく言い放つが、それは本郷の笑いを誘う。
「ははっ、そう言ってくれるな。言っただろ? 各階のボスを倒して上がってこいって。俺も昔、漫画だったか映画だったかわからんが見た記憶があってな。それを実践してみたってわけさ」
本郷は悪びれずにそう言った。
「まあ、どっちでもいいさ。早速やるのか? それともそいつらが俺たちの相手になるのか?」
蒼太の視線は本郷の背後に向いていた。玉座に隠れるようにしている二人の気配があった。
「気付いたか。隠していたわけじゃないが、俺たちの話の邪魔をするなと言い含めていただけだ」
本郷が指で合図をすると二人が玉座の隣へやってきてその姿を現した。向かって左隣にいるのは褐色の肌で、腰まで伸びた髪はディーナと同じ銀色をしている。耳は尖っておりエルフの特徴を持っていた。少し冷たい印象の顔立ちだったが、美人であることに疑問を持つものは少ないだろう。
「だ、ダークエルフ!?」
ディーナは声を出して驚いていた。蒼太からすればダークエルフは種族の一つであり、ゲームなどでもお目にかかる別段珍しいものではなかった。しかし、この世界でダークエルフといえば千年前から、いやそれよりも昔から絶滅した種族と言われていた。
「やはりお前は驚かないみたいだな。俺たちからすればただの種族の一つだからな」
「エルフの亜種とか、源流から二つに分かれた一つとかじゃないのか?」
蒼太はなぜ驚くのかわからないと疑問を口にした。
「……私も言い伝えで聞いたことがあるレベルなので、詳しくは知りませんが。ダークエルフは神に歯向かった種族だと言われています。そして、神の怒りを買ってしまい、一族全てが滅ぼされたとか」
言いよどみながらもそうディーナは昔に聞いたことを口にしただけだったが、それはダークエルフの怒りに触れてしまったようだった。
「我らの一族はそのようなことをしておりません。そもそもはあなたがたエルフ族が考えの違いで争った我々を滅ぼそうと、夜襲をかけてきたのが始まりです。そして多くのダークエルフが命を失ったのち、そのような流言飛語を流されたのですよ?」
彼女の言葉は淡々としていたが、その胸の内の強い怒りがディーナに向かっているのは誰もが感じ取っていた。
「だとしても、そんな昔の話を持ち出されても困る。今は今、昔は昔だ」
自らの知識とダークエルフの彼女の知識が食い違うことに複雑な表情をしたディーナの肩にそっと手を乗せた蒼太は、そう言って切り捨てた。
「俺もそう思うよ。種族性が薄い俺たち日本人からしたら、気にし過ぎだってな」
本郷も蒼太の意見に同意していた。ダークエルフの彼女はその意見を聞いても表情一つ変えず本郷の隣に立っていた。
「隣の彼女は魔族か……あんたの仲間もこっちに負けず劣らず多彩なようだな」
魔族だということを見抜かれた彼女はダークエルフの彼女とは本郷を挟んで反対側に立っている。ピンク色の彼女の髪は肩のあたりで切りそろえられ、豊満な胸を隠すのは数少ない布だけだった。
「よくあたいが魔族だってわかったね。あんた他の魔族にあったことがあるのかい?」
彼女は魔族の特徴である角を髪型で隠していたが、髪をほどくとその角があらわになった。
「まあ、魔族なら何人かな」
千年前に魔王を倒した。それを口にしなかったが、本郷はわかっているようだった。
「ふーん、でもあたいをそんじょそこらの魔族と一緒にしてもらっちゃ困るよ。なんて言ったってあたいは先代の魔王の娘だからね!」
その言葉に蒼太は電撃にでもうたれたかの衝撃を受ける。しかし、あえて表情には出さずにいた。
「そうか、それはさぞや強いんだろうな」
その言葉に彼女は得意そうに胸を張る。
「ふっふーん、当たり前じゃないか。あんたたちなんか軽くひとひねりさ。あたいに勝てるのなんて、エルダードくらいなもんだよ!」
そう言って彼女はうっとりとした表情で本郷の肩に手を置いた。その時ぴくりとダークエルフの耳が動いたのを蒼太は気付いていた。
「そう煽るな。こいつらは強いぞ?」
本郷は蒼太たちの強さを見抜いており、油断をするなと魔族の女を嗜めた。
「ふん、別にいいじゃないか。こんなやつらにあたいたちが負けると思うのかい?」
ダークエルフの彼女には仲間意識を持っているらしく、彼女は交互に指差していた。
「お前たちがこいつらに勝てるかどうかはやってみればわかることだ。わかることだが、そう慌てなくてもいいだろう。改めてこの場を設けて、ここまでたどり着くことができたんだ。例えそれが二人だけであってもな」
相手は三人、蒼太たちは二人。楽しげににやりとする本郷はこの数的優位であることで余裕を持っている……というわけではなさそうだった。
「これくらいの人数差、お前たちには問題ないだろ。それに、こうして面白い見世物をやっているんだ。せっかくだからゆっくり鑑賞としゃれこもうじゃないか!」
本郷がそう言って両手を広げると、空中に大きなモニタが現れる。そこには、エドとアトラ、レイラ、イシュドラが戦っている姿が映し出されていた。
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