第二百七十五話
前回のあらすじを三行で
竜騎士部隊の歓迎演技
入場はすんなりと
わくわくしている一行
衛兵に教えてもらった通りに大通りを進んで行くと多くの商店が並んでおり、どの店も活気に満ち溢れていた。
「すごいな、人の数が段違いだ。それに、この通りも移動に不便しないように広さがしっかりととられている。これはこの街の設計段階で決まっていないとなかなかできないぞ」
人の通りが増えてきたことで、何とか道を広げようとすることはよくあることだったが、この街は最初から大都市を目指して作られているように感じた。
「これほどの人が集まるということは、それだけ住みやすいのでしょうね。見ていても楽しさにあふれている印象を受けます」
周囲の商店で交わされる楽しそうな会話をあちらこちらで見たディーナも素直に感心している。
「ねえねえ、あれあとで買いに行こう!」
レイラの興味は露店で売られている料理に集中していた。
「しかたない。とりあえず、早く宿を探すか……」
レイラに合わせるためという言葉ではあったが、蒼太自身も散策をしてみたいと思っていたため、まずは宿をとることが最優先事項だった。
「お兄さん、宿をお探しですか?」
そう話しかけてきたのはドワーフの少女だった。歳でいえばトゥーラのミリと同じくらいに見える。
「そうだが、どこかいい宿を知っているか? 条件としては、馬車を置ける場所があって飯がうまいところだな。あと獣魔が入っても問題のないところ。人数は人間三人と獣二体だ」
馬車をとめて彼女に蒼太は答える。蒼太が話している間、メモを取りながら聞いている彼女に期待できるかな? と考えていた。
「部屋数はどうされます?」
彼女からでてきたのは、追加の条件確認だった。
「そうだな、二部屋にしよう。俺と獣魔二体で一部屋、あとは女性二人で一部屋だな」
蒼太の条件を全てメモすると、どこからか出した何かの台帳と見比べていた。
「……大丈夫です。それならうちの宿が条件にピッタリです!」
部屋の空きを確認すると、彼女はにっこりと笑顔で蒼太に答えた。
蒼太は彼女の答えを聞いて、後ろにいるディーナとレイラの顔を見るが二人ともお任せしますと手でジェスチャーしていた。
「それなら、案内してもらおうか。条件に合わなかったらキャンセルさせてもらうからな」
「もちろんです! こちらへどうぞ!」
彼女は意気揚々と蒼太たちを先導する。しばらく大通りを進み、途中で横道に入っていった。一本横道に入っても今度はそこは小さな商店がいくつもあり、活気は損なわれていなかった。小さい店ならではのこだわりの逸品が並んでいるように見受けられた。
「大通りだけでなく、他の道も人がたくさんいますね」
ディーナもその様子に驚いているようだった。
「もう少しです。あ、あそこです!」
彼女が指し示す先には、一軒の宿屋があった。
「ほう」
蒼太は自然とそう漏らしていた。その宿は並んでいる店の中でもひと際目立つ外観をしていた。といっても、特別派手というわけではなく、上品な木材で作られた宿屋は一見シンプルな中に、季節の花々が飾られており、まるで森の中の宿屋にたどり着いたのではないかという独特の雰囲気だった。
「すごいです……」
「わー、すっごい!」
馬車から覗いたディーナとレイラも驚いていた。
「ふっふーん、あの花は特別な加工がしてあってなかなか枯れないんですよ。そして、あのデザインをしたのはなんと私なんです!」
蒼太たちが驚いていることに彼女は気をよくして、胸を張っていた。
「すごいな。センスがいい、これは他が取り入れようとしてもなかなかできないぞ」
「そうなんです! 前に他のお店が真似しようとしたことがあるんですけど、すぐに枯れちゃったり、虫が沸いたり、とりあえず飾り付けただけで外観が映えなかったりと、散々だったんですよ」
褒められて気をよくした彼女はさらに自慢の点を挙げていく。うちの店は特別なんだと言わんばかりに彼女の表情はドヤ顔になっていた。
「あっ、いけない。これいつも注意されるやつだ……ごめんなさい、つい調子に乗ってしまいました。案内続けますね」
親か誰かに注意されたことを思い出したであろう彼女は、気を引き締めて案内を続けていく。
「金額面とかの話もあるので、中でお願いします。馬車はそのあとにご案内しますね」
彼女はそのまま蒼太を中へ案内する。
「わかった、留守番頼んだぞ」
人通りが多いためレイラとアトラと古龍は馬車の見張りとして残ることにする。
「お母さん、じゃなかった。女将さん、お客様のご案内です。よろしくお願いします」
呼び方を間違えた彼女は慌てて訂正するが、女将の目が一瞬光ったのを蒼太は確認していた。中も外観同様、花や木々がセンス良く置かれており、清潔感ある空間が広がっていた。
「ありがとう。いらっしゃいませ、私が女将になります。本日はご宿泊でよろしいでしょうか?」
「あぁ、二部屋頼みたい。それと外に馬車が一台、あと獣魔が二体いるんだが中に連れて入っても大丈夫か?」
蒼太の条件を頷きながら聞いていた女将は笑顔で頷く。
「もちろんです、暴れたりした場合の責任はお客様になりますが、そこはよろしくお願いします」
蒼太はそれに対して頷く。
「宿泊日数は何日になされますか?」
「……そうだな、とりあえず一週間で頼む。期間の延長は可能か?」
その質問に女将も頷いて返す。
「はい、最終日までに言ってもらえれば大丈夫です。それでは、まずは料金の支払いをお願いします」
提示された料金の支払いを終えると、次は馬車の案内をと女将に目配せされた、案内役の彼女が蒼太たちを先導する。
「裏手に馬車置き場があるので、こちらへお願いします」
二回目以降の客であれば、馬車を預かって彼女のほうで移動させることが多いが、初めての客の場合はどんな場所に置くかを確認してもらうことになっていた。
案内された裏手は広く、遠目には洗濯物が風にたなびいていた。近くにあった馬房も広いながら隅々まで手入れが行き届いており、これならばエドもストレスなく過ごすことができそうだった。
「戻られましたね、鍵はこちらの201号室と202号室になります。階段を上がって左の突き当りとその隣です」
「わかった、ありがとう」
女将から鍵を受け取り礼を言うと、蒼太たちは部屋へと向かうことにする。
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