第二百六十八話
前回のあらすじを三行で
仲間集合
族長のいる集落に到着
敵がきた
「あいつらは来ていないみたいだな……とりあえずレイラが先行してくれるか?」
「うん、任せて!」
レイラは蒼太がどんな意味でそう頼んだかは理解していなかったが、彼に頼まれたのであればそれをこなすだけだと迷わず向かっていく。その右手には新しく作られた槍である紅王が握られていた。
『我々はどうすれば?』
レイラの背中を見送ったままアトラが確認をしてくる。
「レイラなら今来ているくらいの数は圧倒できるはずだ。だが、それでも全滅させるのは一人では無理だから、俺たちは時間差で攻撃に打って出るぞ。古龍は上空からの魔物を倒してくれ、それと万が一村にたどり着くやつがいた場合はそいつの対処もな」
蒼太が指示を出すと、二人は頷きそれぞれの役目を果たすために動き出した。
「俺は、少しでも殲滅速度を上げられるように動くか。こいつも試してみたいしな」
鞘から抜いたそれは新しく作った刀、蒼月だった。その青みがかった刀身を確認すると、蒼太も続いて動き始めた。
「持ってみるとしっくりくるな」
蒼太の名前から一文字引用したこの刀は彼のためにあつらえたこともあって蒼太の手にすんなりとなじんでいた。そのことに確かな手ごたえを感じ、走る速度をあげて魔物の群れへと突っ込んでいく。
蒼月は流す魔力の強さによって斬れ味が増していくという特性があった。普通の剣士であれば、魔力量が足らずその威力の上限は低いが、使い手が違えば上限も格段に上がっていく。今の使い手は蒼太であるため、その結果は想像の通りだった。
「これは……いいな!!」
前線の中央ではレイラが戦っているため、蒼太は左側の敵から討っていくが、走り出したその足は止まることなく爽快なまでに次々に魔物を真っ二つにしていく。しかし、魔物たちはそのことに気付かず、しばらくは動いていた。あまりにも滑らかな太刀筋と蒼月の切れ味に彼らが斬られたことに気付くのはそれから数秒たってのことだった。
「斬れ過ぎるのも問題だな。使いどころを見極める必要がある……今はこっちにしとこう」
このままでは魔物が倒れるまでに時間のロスが生まれ、囲まれてしまう。そうなっても切り抜ける力を持ってはいるが、わざわざ不利な状況に自分を置く必要はないと考え、今度は夜月を手に取った。
一方でレイラも紅王の使い心地に酔いしれていた。グニルが一撃特化型だとすると、こちらは手数を増やして確実にダメージを与えていくものだった。一撃一撃ではグニルに劣るが、それでも蒼太とアントガルとナルアスが共同で作り上げた武器であるため、その威力はそこらの武器をはるかに超えていた。
「すごいすごい!」
レイラは最初は紅王で次々に魔物を撃破していったが、固い魔物も出てきたためグニルを右手に、左手には紅王と二槍流で戦っていた。この戦闘スタイルはここにきて初めて行ったものだったが、思っていた以上に彼女の中でしっくりときていた。
魔物たちは蒼太たちの出現に混乱していた。彼らが命じられたのは小人族の集落を見つけること。そして、その命令通りに新しく集落がありそうな場所へとたどり着き、あと少しでその結果を報告するところまできていた。
しかし、現状はどうだ。次々に魔物たちは倒され、その命を奪われている。元々統率などというものはなかったが、それにしても魔物たちはなぜ自分がやられているのか? それを把握するのに時間がかかっていた。
中央からは槍を持ったレイラが、右は双牙を装備したアトラが、左には蒼月から夜月に武器を持ち替えた蒼太が、その間を縫って村に進もうとすると魔力によって作られた矢がその身に降り注ぐ。
「ごめんなさい、でも村までたどり着かせるわけにはいきませんから!」
謝罪を口にしながらもディーナは矢を放つ。彼女は弓での攻撃のため新しく作った片手剣を使うことはなかった、しかし銀弓も密かに強化をしてもらっており、以前に比べて矢の威力も格段に上がっていた。魔力の浸透率があがり、更には空気中からも魔力を吸収して矢の威力に変換する特性を持っている。更には属性付与により威力を底上げすることもできる。
今までに効果のなかった相手でもダメージを与えることができ、更に新しい防具の効果により視力があがっており、命中の精度も高く一矢で絶命させていく。
上空にも魔物がおり、そちらに集落を発見されればすぐに本隊に連絡がいってしまう。しかし古龍はその姿を風竜に変え、自らの飛行速度を上げて飛行タイプの魔物を次々に倒していった。
こちらももちろんディーナの援護によって、一匹として集落に近寄せることはなかった。
『さすがだのう、我も負けておられんな』
上空から見える蒼太たちの戦いぶりに古龍は奮い立ち、その速度を更に増して戦果をあげていく。
「こ、これは……」
蒼太たちが戦っている姿を族長ザムズは集落から呆然として見ていた。他の住民たちは蒼太の指示通り逃がしているが、族長の責任としてザムズはこの戦いを見届けようと、この場に残っていた。
「なんて強さなんだ……」
斥候部隊といってもかなりの数が押し寄せているが、蒼太たちはみるみるその数を減らしていく。
「ほら、あなた! みなさんの邪魔になるでしょ!! 行くわよ!」
しかしザムズは嫁に襟首をつかまれて、引きずられていった。
「お、おい! わしは見届けなくては、ああああぁ」
流れるように敵を薙ぎ払う蒼太たちの戦いに思わず見とれていた彼は抵抗むなしくそのまま連れていかれる。
「速度をあげるか」
蒼太はあまり長引いては後続が来ると考え、右手に夜月、左手にミスリルソードを取り出し魔物を倒す速度をあげていく。今回も蒼太は戦いの合間に器用に魔物の死体をすぐに格納することで足場を確保していった。
「よし、そろそろだな……」
蒼太は火球を更に奥から来る魔物たちへ放ち、爆発させる。
「レイラ、行くぞ」
そしてすぐそばで戦っていたレイラに近寄ると声をかけ、先ほどのザムズ同様襟首をつかんで退避していった。
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