第二百五十八話
前回のあらすじを三行で
アトラのお手本
グレートラビットの角
依頼達成
レイラたちが依頼を行っている間、蒼太たちは図書館に向かっていた。
いつも通りの流れで蒼太とディーナは受付にいたレナとガイの二人に希望する内容が書かれている本をピックアップしてもらう。すぐに目的の本についてのメモを競り合うように渡してくる二人の仲は相変わらずのようだ。
「悪いな、いつも助かる」
「いえいえー、楽しくてやってるので」
「そうです。それにこれが我々の仕事ですから、当然のことです」
蒼太が礼を言うと、レナとガイは当たり前のことだから気にしないで欲しいと手を振りながら返した。
「いつも漠然とした要求なのに、それに期待以上に応えてくれるので助かってます」
長年図書館で働いている二人であったが、これまで面と向かってその仕事を褒められた経験はなく、ディーナの言葉は二人に笑顔をもたらしていた。
「は、ははは。そんな、大したことないですよ」
「そ、そうですよ。別にいつものことだし」
二人は途端ににやにやした顔になり、照れを隠しながらぎこちなく返事をする。
「そ、そうか。それじゃ俺たちは本を探しに行くよ」
「お二人ともありがとうございました」
蒼太はその様子を見て頬をひくつかせ、ディーナは何事もなかったかのように礼を言うと二人は書架に向かって行く。その後方からは二人の喜ぶ声が聞こえていた。
「あの二人、いいやつらだし仕事もできるんだがちょっと変わってるよな」
「そうですか? 良い方々というのは賛同しますが、変わってますかね?」
ディーナは蒼太の言葉に首を傾げながらメモに載っている本を探していく。もらったメモはわかりやすく、すぐに目的の本を見つけることができた。
「これで全部か……結構あるな」
「ですね……とりあえず始めましょうか」
受付の二人が紹介してくれた本はどれもボリュームのある本ばかりで、それが何冊も机の上に積みあがっていた。
それからは二人とも本に没頭していった。途中休憩は何度かとったが、閉館間際まで二人の情報収集は続いていく。
「あのー、そろそろ閉館時間が近いのですが……」
そう声をかけてきたのは受付にいた男性職員のほうのガイだった。
「えっ?」
「あれ、みなさん帰ってしまったんですか?」
蒼太たちが座っているテーブル以外にも何人か利用者が座っていたはずだったが、今は蒼太とディーナの二人だけになっていた。
「えぇ、そろそろ閉館になりますのでみなさん帰られました」
あなたがたはどうされますか? 彼は暗にそう言っていた。
「すまん、今片付ける!」
「ごめんなさいです」
二人は慌てて立ち上がり、本を片付けようとするがそれをガイは制止する。
「いえ、お気になさらず。本も我々で片付けておきますのでお二人は帰りの支度をなさって下さい」
ガイがそう言うと別の職員たちが数人駆け寄ってきて蒼太たちが書架から持ち出した本を手際よく片付けていく。
「なんだか、悪いな。時間ギリギリまでいて片付けもそちらに任せてしまうなんて」
「いえいえ、あれだけ熱心に読んで頂ければこちらとしても司書冥利につきるというものです」
穏やかな笑みを浮かべたガイは何度もここを利用してくれる二人に対して好感を持っており、今の言葉も心の底から出た言葉であった。
「そうか? 俺としては本を基本無料で読ませてくれるほうが助かってる。ここはいいとこだしな」
「そうですね、これだけの蔵書量の図書館もあまり見かけませんし、雰囲気も働いている方々もみなさん良い方ばかりです」
二人の言葉が耳に届いた職員たちは頬を緩ませて本の片づけをしていた。また、その言葉を面と向かって聞いてしまったガイはというと、何とか顔に出るのを抑えようとして失敗していた。
「そ、そう言って頂けると、ふふふっ、我々も励みになります。ふふっ」
こらえ切れなかった笑いがところどころで漏れており、少し気持ちの悪い雰囲気になっていた。
「……普段から褒められ慣れてないんだな」
蒼太がぼそりと言うと、自分がどのような表情なのか思い至ったガイは恥ずかしさが増し、がばっと顔を背けてしまう。
「ソータさん、そう本当のことを言わないであげて下さい」
とうとう目の前で言ってしまった彼に困った表情を浮かべてディーナはフォローのつもりで言ったが、それは更にガイの恥ずかしさを助長する結果となっていた。
「天然な言葉は強いな……」
追い討ちといわんばかりの彼女の言葉に恥ずかしさが自分の許容量を越え、処理しきれない感情にどうしていいかわからずすっかり身悶えているガイを見た蒼太はディーナについてそう称した。
「さて、いつまでも遊んでないでそろそろ帰ろうか」
このままでは帰れないと考えた蒼太は話を無理やり引き戻した。
「そ、そうでしたね。片付けもすぐに終わりますのでお二人はこのまま帰られて結構ですよ。っと忘れないうちに、これをお返しします」
ダンは保証金を取り出すと二人へ返却する。
「あぁ、ありがとう。閉館間際だっていうのに色々と手間取らせて悪かったな。また来させてもらうよ」
「ありがとうございました。またよろしくお願いします」
今日中に読み終わらなかった本が多数残っていたため、二人は明日以降も来ることを暗に伝える。
「はい、お待ちしています。本日はご利用ありがとうございました」
「「「「ありがとうございました!」」」
蒼太たちの言葉にダンが頭を下げて挨拶すると、閉館作業していた他の職員たちもそれに合わせるように挨拶をする。蒼太とディーナは全職員に見守られて退館するというなかなかない経験をすることになった。
ガイといつの間にか彼の隣にいたレナは入り口までついてきて見送ってくれた。
「ふう、結構色々とわかったな」
「そうですね、でもまだたくさん本がありましたから……明日も来ましょうか」
「そうだな……」
帰り道で二人は未だ読み終えてない本の山を思い出して辟易としていた。ただ、ディーナは蒼太と二人で調べ物をすることは楽しく思っていたため、来ることもやぶさかではない様子だった。
「さーて、あいつらはうまくやってるかな?」
蒼太の言うあいつらとはレイラたちのことを指しており、時を同じくしてレイラたちも依頼報告を終えて家に戻るところであった。この数十分後、家の門の前で蒼太たちの帰りを待つレイラたちと合流することになる。
家に戻るとそれぞれがやってきたことを話し、情報交換をして一日が終わる。
お読み頂きありがとうございます。
誤字脱字等の報告頂ける場合は、活動報告にお願いします。
ブクマ・評価ポイントありがとうございます。




