第二百五十五話
前回のあらすじを三行で
手紙は帝国のギルマスから
実は将軍から
無視して各自自由行動!
翌日
蒼太とディーナはいつも行く図書館へと帝国の情報収集へと向かい、レイラは古龍とアトラを伴って冒険者ギルドへと来ていた。
「えっと、まずは掲示板っと」
レイラは壁の掲示板にずらりと貼られた依頼を確認していく。
竜人族は閉鎖された環境にいるからこそ、小さい頃から文字の読み書きは徹底的に教え込まれており、依頼内容を読むのに不自由はしなかった。
「どれがいいかなあ」
『一人での依頼は初めてであれば、なるべくさほど難しくなさそうなものを選んだほうがよいのでは?』
人がまわりにいる状態で普通に喋るわけにはいかないため、アトラが念話で助言をする。
「うーん……素材収集系はソータさんがいないと、どれがどれだかわからないから厳しいなあ……」
『確か新しいマジックバッグをもらってきたのではなかったかのう?』
古龍も見かねて念話で声をかける。
「あ、そうだ。これなら確か……」
それ以上は口にしないよう慌てて自分で口を塞いだ。
レイラが背負っているリュック型のバッグは蒼太が改造したもので、空間魔法によって中の許容量を大きくしたマジックバッグであり、更に蒼太の亜空庫のリスト機能を使うことができた。依頼をこなすのに楽なようにある程度の素材が登録されているため、バッグに入れれば自動的に名前が簡易型のリストに表示されるようになっていた。
しかし、これらは絶対に誰にもばれないようにと蒼太からきつく言われている。
「うん、大丈夫だ。どの依頼でもいけそう」
レイラが一人でぶつぶつ言いながら依頼を眺めていると、冒険者パーティのリーダーらしき男が近づいてくる。
「嬢ちゃん、冒険者か? よかったら俺たちと一緒に受けないか?」
声をかけてきたその男は最近トゥーラを拠点にしている冒険者パーティのリーダーであった。
「うーん、この子たちと一緒に行くので結構です」
誰かに誘われた場合もやんわりと断るように、そう言い聞かされていたため、レイラの中ではかなり冷静な返しができていた。
「おいおい、つれねーじゃねーか。あんまり邪険に扱われるとお兄さんたちも怒っちゃうぞ?」
仲間の男の一人は朝から酒をあおっているらしく、顔を赤くしてレイラに絡んでくる。
「おいやめろ。すまんな、こいつも酒を飲んでない時はいいやつなんだが、どうにも酒癖が悪くてな」
リーダーの男が仲間の男を制止しながら謝罪をするが、レイラは何も気にしていなかった。
「いえ、気にしていませんから。それより、あたしはあなたたちとは行きません。それだけわかってもらえれば構いません」
レイラは普段は敬語が苦手だったが、冷たい時のディーナをイメージして敬語を使っていた。
彼女はそれだけ言うと、男たちから視線を外し掲示板へと向き直った。
リーダーの男はダメかと引き下がろうとしたが、先ほどの赤ら顔の男はこめかみをひくひくさせていた。
「おい! せっかく俺たちが誘ってやってるんだぞ! そんな犬っころなんかどうでもいいだろ!!」
そう言って男はアトラのことを蹴り上げようとする、がその足は空を蹴ることとなり男はその場に大きな音をたてて倒れてしまう。
「ぐはっ、いててて。おい! 犬っころ! 避けるんじゃねえ!!」
足元に転がっている男の前にレイラが立つ。
「ん、なんだ。なんか文句でもあるのか!」
いきり立つ男に対して、レイラは目は笑っていないものの口元だけ笑顔だった。
「消えて、欲しいかな」
しかし、その言葉は怒りに満ちたものだった。
「なんだと!」
更に男は言葉を続けようとしたため、レイラは一歩踏み出す。
「聞こえた? 消えて、欲しいかな」
再度言った言葉には、聞いたものが思わず震えてしまうような冷たさと圧力が篭っていた。
「お、おい。早く立て、行くぞ!」
酔っ払いの仲間たちは男を無理やり立たせると、慌ててギルドから逃げ出していった。
一連のやりとりは注目をホールにいた全員から注目を集めており、その結果全員がレイラの迫力にあてられていた。
「さっ、これでゆっくり見られるね」
レイラは周囲の変化には気づかず、ぱっと表情を戻すと依頼の確認に戻っていった。
『あれほど怒らなくてもよかったのではないか?』
「むー、アトランのこと犬っころなんて言われて黙ってられるわけないでしょ!」
レイラは自分が絡まれたことよりも、アトラのことを悪く言われたことに怒っていた。彼女にとってアトラたちは初めてできた大切な仲間であり、それを軽んじられることを黙って見過ごすことはできなかった。
『手を出さなかったことは評価できるのう』
口より先に手が出ることを心配していたであろう古龍がそう褒めるが、黙ってレイラは掲示板を見つめていた。しかし、その口元が緩んでおり、褒められたことに彼女が照れているのは二人にはわかっていた。
「よし、これにしよう。確か剥がさずに受け付けで言えばいいんだったよね」
『確かそれであっているはずだ』
アトラの返事を聞くと、依頼内容をメモして受付へと向かった。
「すいませーん。依頼を受けたいんですけど」
レイラはそう言ってメモを受付の女性に渡した。
「えっ、あっ、はい。依頼ですね」
彼女は先ほどまでのやりとりをずっと見ており、先ほどの迫力のあるレイラと今の柔らかく気さくな様子のレイラの違いに驚いていた。
「はい、ギルドカードです。手続きお願いします」
レイラは以前の手順を思い出し、カードを提示する。
「えっと……Eランクですか。はい、大丈夫です。それではこちらが依頼の受領書になります」
受付の女性は内心緊張しながらも何とか平静を保ち手続きを終える。
「ありがとうございます!」
元気に頭を下げるレイラに対して、ホールにいた者たちは彼女に対して良いイメージを持つようになっていた。実際に悪質に絡んできたのは酔っ払いの男であり、彼女にはなんの落ち度もないため仲間を守ったレイラのイメージが悪くなることはなかった。
むしろ彼女の評価が上がり、ファンができつつあったことを本人は知らなかった。
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