第二百五十四話
前回のあらすじを三行で
ドワーフの国へ
家についたら来客あり
ミルファと手紙
「ふむ……」
蒼太はそう一言口にすると、中身に目を通していく。手紙といっても封筒に入っていたのは用紙一枚だけだったため、蒼太はすぐに読み終える。
「どのような用件でした?」
みんなが聞きたがっている質問をディーナが代表して尋ねる。
「うーん、よくわからんな。ギルド経由で来ただけあって、帝国の冒険者ギルドのギルドマスターが差出人ということになっている。だが、内容は城に遊びに来ませんかみたいな感じだ」
そこまで言うと蒼太は手紙をディーナへと手渡した。
「……ソータさんの表現が適切なのかどうかはおいておくとして、確かにそういった内容ですね」
内容を確認したディーナは蒼太の言葉を肯定すると、手紙を彼へと返した。
「どうなさるんですか?」
ミルファは蒼太たちの決断を確認する。
「特に興味はないかな、とりあえずは無視。しばらくはトゥーラでゆっくりしようと思う」
手紙を封筒にしまいながらの蒼太の言葉に反対する者はいなかった。
「そうですか、ではマスターにもそのように伝えます」
特に異常はない様子にミルファは用事を終えたと判断し立ち上がる。
「そうか、茶も出さずにすまなかったな。せめて玄関まで見送ろう」
蒼太は立ち上がって玄関に向かい、ディーナも続いてミルファの見送りをする。
「それでは、失礼します。トゥーラに滞在するとのことなので、よければまた冒険者ギルドにもお立ち寄り下さい」
ミルファは一礼し、屋敷をあとにする。蒼太とディーナは手を振り、扉が閉まり、更にミルファの気配が遠ざかるまでその場で見送っていた。
「さて、この手紙だが」
リビングに戻ってきた蒼太がテーブルの上に手紙を置いた。それにきょとんとした表情のレイラが蒼太を見た。
「ん? それがどうかしたの? お誘いは断ることにしたんだよね?」
蒼太は首を横に振り、先ほど手紙を確認し全てわかっているディーナは笑顔で頷いていた。
「さっきのは嘘だ。差出人はよくわからんが、将軍だかなんだからしい。聞いたことのない名前だったがな……それに遊びに来ませんかというよりは、来い! みたいな感じだった」
蒼太が欺いた内容は大きくは違っていなかった。差出人がギルドであるか将軍であるか、これだけの違いであったが帝国の将軍といえば戦力の要である。それが蒼太にコンタクトをとるとなると勧誘の可能性が出る上、そうなると戦力として取り込まれるとも考えていた。
『今までの流れから考えて十中八九、その者がお主と敵対するものであろうのう』
古龍の言葉は的を射ており、蒼太は頷く。
「つまり、これは敵からのお誘いってわけだ」
蒼太は手紙を指に挟みプラプラ揺らしてみせた。
「えっ!? それってやばいんじゃ……!」
敵に居場所がばれている、このことは大きなデメリットであるため、レイラは部屋の中であるにも関わらず慌てて辺りを見回していた。
「おちつけ。完全に居場所がばれていたらここに直接手紙が届いただろうさ。まあ、この街にいるのはばれているようだから、それなりの情報網を持っているんだろうな」
蒼太は落ち着いた態度でそう返す。この場にいるメンバーで慌てているのはレイラだけだった。
「こんな手紙で誘われて、のこのことあちらに出て行ったら罠があるかもしれない。そもそも帝国自体の情報も今現在は少ない。俺たちは今まで行動する時は、まず情報集めから始めていた。今回も一緒だ」
蒼太の言葉に一同は頷いた……レイラ以外。
「うー、情報集めって本とかでしょ? あたしそういうの苦手だー」
彼女は片手で頭をかきむしり、首を横に振っていた。
「無理することはないさ。時間はまだあるだろうから、俺とディーナで図書館に行く。レイラはギルドの依頼でもやってればいい、ただしランク上げはDまでだぞ。それ以上はどんなに誘われてもダメだ……もしC以上になった場合は、浮島に強制送還だぞ?」
蒼太はにっこりと笑顔で彼女にプレッシャーをかける。
「ひぃ! わ、わかりました」
返事を返しながら、いざとなったら助けてくれるよね? という視線をディーナに送るが、彼女は悲しい顔で首を横に振るだけだった。レイラは自分に味方がいないとわかりしょんぼりと頷くしかなかった。
「はあ、登録の時に聞いたかも知れないが一応言っておくぞ。Cランク以上になると指名依頼が来ることがある。もちろん全員にじゃないが、実力がある者は声をかけられることが多いだろうな。そして、お前の実力はCどころかそれこそAやSランクになれる力が十分にある」
そこまで言うとレイラは頬をひくつかせて照れていた。
「い、いやあ。それほどでもないですよ。そんなに褒められるなんて困っちゃうなあ」
その姿をディーナは微笑ましく、蒼太は目を細めて見ていた。
「おい、調子にのるなよ。この中じゃレイラの実力は下のほうなんだからな?」
自分が言った言葉で調子付かせてしまったことをやや後悔した蒼太は少し強い口調でレイラをたしなめる。
「うぅ、わかってるよう。いいじゃない、少しくらい……」
「……俺の言い方もきつかったな。ただ、指名依頼を受けると面倒に巻き込まれる可能性が高いこともわかってくれ」
「うん……」
蒼太は一息つくと声のトーンを抑え表情を柔らかくしたため、レイラもすんなりと受け入れることができた。
「レイラが納得してくれたところで、明日からは各自にわかれて行動だな。手紙のほうはとりあえず保留、あとでまた考えよう」
『私もレイラ殿の依頼遂行について行こう』
『ならば我もついていこうかのう』
蒼太はレイラを一人で行かせることに一抹の不安を抱いていたため、二人の申し出はありがたかった。
「すまん、頼む」
「よろしくー、楽しみだね!」
しかしその意図をわかっていないレイラは、二人がついて来てくれることを単純に喜んでいるようだった。
蒼太とディーナは理解していない彼女の素直さこそ良さであると考えているため、そのままでいいと笑顔で見守っていた。
お読み頂きありがとうございます。
誤字脱字等の報告頂ける場合は、活動報告にお願いします。
ブクマ・評価ポイントありがとうございます。




