第二百五十二話
前回のあらすじを三行で
アレゼル片付け
三人で片付け
調べた内容
「そして、その物語で敵として書かれていたのは北からやってきた悪というものでした。それはつまり帝国にいると暗に示しているのではないかと考えています。そして、その者はなんらかの特殊な力を持っていて千年前にソータ殿たちを陥れ、かつ今でも帝国にいるのではないかと」
ナルアスの情報からの推測は的を射ており、それには蒼太も舌を巻いていた。
「よくそこまでわかったな……俺がこれまでに集めた情報のほとんどを言い当てられているようだ」
蒼太の言葉に対してナルアスは静かに首を横に振った。
「予想はあくまで予想です。ここでソータ殿に話さなければ、今もずっと予想のままの曖昧なものだったでしょう。ソータ殿は情報を集め、精査し、確実なものとしていますから精度が段違いですよ」
「ありがとう、そう言ってくれると救われるよ。それで、他には何かわかったことはあるか? ここまでだと、お互いが調べたことの答え合わせみたいなものだと思うが」
何か新しい情報が欲しいというその言葉にナルアスは表情を曇らせる。
「……これも私の予想になってしまうのですが、アレを行った者は帝国にいまいる者と同一人物であり、別人なのではないかと」
「なるほど……それはなかなか面白い推測だ。そして、俺もそうなんじゃないかと思いつつあるな」
強い根拠があるわけではなかったが、蒼太は今まで集めてきた情報からナルアスの言葉を肯定した。
「私の予想を信じるんですか?」
ナルアスは蒼太の反応に驚いていた。
「俺のほうも直感だから、信じるというより何となくそう思ったってほうが正しいかもな」
蒼太も確信があるわけではなかったがナルアスの言葉が正しいのでは? とそう感じていた。
しかし、どちらにも決め手があったわけではないため二人とも考え込み、部屋の中も静まり返っていた。
「あっ、やはりお二人だったんですね。声がしたからいるんだろうなあとは思ってましたが、すいませんお茶も出さないで」
二人に声をかけてきたのは食事を用意していたエルミアだった。
「あぁ、いや気にしないでくれ。工房のほうでアレゼルが寝てしまったからこっちに移動しただけだからな」
「そうです、それよりも食事の支度を任せてしまって申し訳ありません」
蒼太は気にするなと首を横に振り、ナルアスもそれに続く。彼女はエルミアに対して敬語だった。弟子の孫であり、娘だったが、しっかりとしており、彼女らが気づかない部分でフォローに回っている姿をみて一人の女性として扱おうと考えていた。
「い、いえ、私はこれくらいしかできませんから。それと、ナルアス様は敬語をおやめになって下さい。母たちの師匠にそう言われてしまうと恐縮してしまいます」
言葉の通りエルミアは身体を縮こまらせていた。
「確かに、母親と祖母に対してああいった口調で、エルミアに対してだけ敬語だと何というか変な気分だろうな」
「……そんなものですか。わかったよエルミア、これでいいかい?」
追い風といわんばかりに蒼太にも言われたことでナルアスは口調を改めることにし、エルミアもほっとして笑顔になっていた。
「そろそろ、みなさんを集めて食事にしましょうか」
落ち着いたエルミアはそう言うと、眠りについた者たちに声をかけようと部屋を出ようとするがナルアスがそれを止める。
「そちらは私がいこう。エルミアは食事の準備を進めてくれるかい?」
「じゃあ外のやつらには俺が声をかけてこよう」
蒼太も装備確認組に声をかけに外へと向かった。
みな声をかけられると空腹に気づいてすぐにダイニングへと集まったが、全員がその場に座ることは難しかったため、リビングと二手にわかれて食事をすることとなった。
その日は食事を終えるとそのまま就寝することになった。一度休んだ職人組も疲れが抜けきっていなかったため、全員がすぐに泥のように眠りについた。
翌朝
朝食を終えた蒼太たちは旅立つ支度を始めていた。昨日の片づけは蒼太たちが行ったため道具のメンテナンスまでは気が回らなかった。職人たちは国に戻るまでの間に劣化しないよう、最低限の手入れをして持ち運べるように準備していた。
「もっとゆっくりしていってもいいのに……」
準備をしている様子を見ながらアレゼルはそう呟いた。
「ごめんね、お店をずっと空けておくわけにはいかないの……」
それに答えたのはエルミアだった。彼女もアレゼルと別れることを寂しく思っておりその表情もうかないものであった。
「悪いな、ドワーフの三人もカレナたちもそれぞれ国に仕事が待っているんだ。俺たちにもやらなければならないことがある、そのためにわざわざこの国に装備を作りに来たんだ」
蒼太は申し訳なさそうな表情だったが、それでも彼女たちに期待を持たせないようそう言って断じた。
「……ううん、いいんです。寂しいけど久しぶりにローリー様にも会えたし、憧れのカレナ様にも会えて、何よりエルミアちゃんとお友達になれたんだからこれ以上を望むのは贅沢です」
目尻に涙を浮かべながらもアレゼルは笑顔で気丈に振舞っていた。
「アレゼルちゃん……また会おうね!」
彼女の強さを感じ取ったエルミアはぎゅっとアレゼルの手を握ってあえてさようならという言葉は使わずに「また会おう」という言葉を選んだ。
「エルミアちゃん、うん、またね!」
その言葉を選んだ彼女の気持ちを受け取ったアレゼルも、同様に手を握り返し涙ながらに「またね」と返した。そんな二人の様子を微笑ましく見ていた蒼太は笑顔で二人の頭を優しく撫でるのだった。
「今度はトゥーラの街に遊びに来てね」
「うん! 絶対行くよ!!」
すっかり表情が晴れたアレゼルはエルミアの誘いに大きく笑顔で頷いて答えた。
「その時は連絡をくれれば迎えに来よう。ナルアスはこの国を離れるのは難しいだろうからな……まあこっちの用事が色々と片付いてからにしてくれると助かるよ」
蒼太は二人の約束の後押しをして、自分がこれからやることを思い出して最後にそう付け加えた。
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