第二百五十一話
前回のあらすじを三行で
アトラの装備
古龍の装備
防具とアクセサリも配布
装備の使用感を確かめた終えた蒼太は一足先に工房へと戻っていた。
「あれ? ソータさんもう戻ってきたんですか。早かったですね」
工房の片付けは終わっておらず散らかっていたため、アレゼルが掃除をしていた。
「一人でやってるのか?」
「はい! みなさんお疲れのようなので、ボクから掃除するって言ったんです」
職人三人はもちろん、錬金術師三人も思っていた以上に疲れていたらしくそれぞれが仮眠をとっていた。
「エルミアは?」
「あー、エルちゃんはご飯作ってくれてます。大人数だから仕込み手伝うよーって言ったんですけど、こっちの片付けもやらなくちゃだから一人でやるって」
二人はだいぶ打ち解け、愛称で呼ぶ間柄になっていた。
「そうか……俺も少し片づけを手伝おう。さすがにこれを一人で片付けるのは大変だろ」
蒼太があたりを見回すと、大小様々な金属片や蒼太が用意した素材のなれの果てなどが散らかっており、扱いを間違えると危険なものも見受けられた。普段からナルアスたちの作業の片づけをやっているといっても、今回は武器防具の作業が大半をしめているため、慣れていない素材が多くアレゼルだけに任せるのは蒼太も不安だった。
「えっ? いいんですか。でも、ソータさんも疲れてますよね?」
気遣った視線を蒼太に送るが、どこか期待している気持ちも隠せない様子だった。
「いや、俺は大丈夫だ。それに、俺がいると多分格段に早く終わるぞ」
そう言うと、蒼太は散らばっている素材を次々にマジックバッグへと格納していく。実際はいつものごとく亜空庫にいれているため、中で全て分類されているが、アレゼルは何でもかんでもしまって大丈夫なのか? と不安そうな表情をしていた。
「ん? あぁ、気にするな。大丈夫だから」
何が? ということも、どうして? ということも言わずにただそれだけ口にした。しかし、そう言われたアレゼルは蒼太さんなら大丈夫なんだな、と信頼して自分の作業を行っていく。
しばらく片付けを続けていると、ナルアスがやってきた。
「そ、ソータ殿、申し訳ありません片づけをさせてしまって」
ナルアスにとってソータは世界を救った伝説の勇者の一人であるため、どこか上の存在として敬う部分があった。そんな彼に散らかしたものの後片付けをやらせるのは気の引けることだったらしく、慌てた様子で駆け寄ってきた。
「あぁ、気にしないでくれ。みんなには装備作りでがんばってもらったからな、これくらいのことはやらせてくれ」
蒼太は返事をしつつも片付けの手は止めずにいた。ナルアスはこれ以上言っても彼の作業の手は止まらないと考え、自分も片付けに参加することで蒼太の負担を減らそうとしていた。
そこからは三人で黙々と集中して行ったため、早々に工房は綺麗になっていった。
「こんなもんでいいか。二人ともお疲れ様」
アレゼルは蒼太が来る前から片づけをしていたので、すっかり疲れた様子で一息つくようにソファに座っていた。
「あ、はい。お疲れ様でしたー。はぁ、これをボク一人でやってたらと思うときついですね……ありがとうございました」
蒼太とナルアスが手伝ってくれたことに感謝し、ぺこりと頭を下げた。
「気にするな。というかそもそも俺たちが作業したあとに片付けなかったのが悪いんだからな、むしろアレゼルには感謝だ」
「そうですね、アレゼルありがとう」
ナルアスもアレゼルへと礼を伝える。
「わわわ、ふ、二人とも頭を挙げてください! ボクが片づけをするのはいつものことですから、気にしないで下さい!」
アレゼル自身、技術的な面で自分が出来ることはないとわかっていた為、こうやって自発的に掃除を始めた部分もあった。だがそれでも自分の師匠や恩人にお礼を言われるのはどこかむず痒いのかわたわたと慌てふためく彼女を見て、蒼太とナルアスは自然と笑顔になっていた。
「あー、そうだ。ナルアスに聞きたいことがあったんだった」
「はい、なんでしょうか?」
突然話を振られたナルアスは小首を傾げて蒼太へと聞き返す。
「俺がこの国を発った時に、ナルアスのほうでも色々と調べてくれると言っていただろ? 何か新しい情報でもないかと思ってな」
蒼太に言われて、ナルアスは思い出し手をぽんっと打った。
「あー、そうでしたそうでした。すいません、完全に忘れていましたね……あのあと私のほうでもコネをつかって色々と調べ物をしてみましたよ」
城にある書庫などにもナルアスは自由に入ることができたため、そこでの情報収集がメインになっていた。
「それで何か変わったことはわかったか?」
「うーん、どれがソータ殿が望む情報にあたるか難しいのですが……少々お待ち下さい」
そう言ってナルアスは工房から出て行き、すぐに戻ってきた。
「すいません、メモ帳を取りにいってました……」
そう言ったナルアスの視線はアレゼルを見ていた。そこにはいつの間にかソファーでうとうととしている彼女がいた。
「……リビングに移動しようか」
アレゼルを起こさないようにそっと囁いた蒼太にナルアスは頷いて工房をあとにし、それを確認したあと彼は毛布を取り出すとソファで寝ている彼女にかけてから工房を出た。
「それで、何がわかったんだ?」
部屋に入りソファに腰掛けると、先ほどの続きをナルアスに促した。
「えぇ、それほど多くのことがわかったわけではないのですが……まずは小人族の長老、グレゴールマーヴィン殿の書が何冊か見つかりました。グレヴィンというのは彼の愛称でよろしいですよね?」
蒼太はここでもか、と驚きながらも頷いて返す。
「他愛のない物語がほとんどでしたが、その中に一つ気になる本がありました。それは勇者たちが魔王を倒す物語です。暗にソータ殿たちの戦いを示しているものだということはすぐにわかりました。勇者たちが魔王を倒して大団円、かと思われたが倒した魔王以外に何か世界に害をなそうと動く者がいるという話でした。最後はこの世界を守ることができるのは、この本を読むあなただ。という締めくくりにして、綺麗にまとめていました」
そこまで話すと、ナルアスの目は蒼太に何かを聞きたそうにしていた。
「……俺たちが今回装備を新しく用意したのは、おそらくその害をなそうとするやつらと戦うためだ。おそらくなんて言いかたになったのは俺も敵の全容がつかめていないからなんだが」
「その者がソルディア様や、他の勇者の皆様を手にかけたものなのですね」
そこまでの真実にナルアスがたどり着いていたことに驚きつつも、蒼太は深く頷いた。
「よくそこまで調べたな」
「父さんが……父が言っていたのです。ソータ殿が仲間を手にかけるはずがないと、世に出回っている本には誤りがある、と」
蒼太が仲間を殺していない前提で調べ物を進めていたナルアスには色々と見えるものがあったようだった。
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