第二百二十九話
前回のあらすじを三行で
アトラ本当の姿
古龍本当の姿
そして、レイラ本当の姿
「それで、俺たちの装備は作れそうか? 材料は俺が用意するし、相談にも乗るが」
蒼太の言葉は耳に入らず、三人が輪を作るように向き合いながら相談している。
「おい、サイズ変化に対応できるか?」
「うーん、さすがにここまでの大きな変化は見たことないけど、魔道具に大きさ変化を使ったのを見たことあるよ」
「わたしも見たことあるけど、あれって結構複雑な術式組み込んでなかった? それこそ凄腕の錬金術師でもいないと無理かも」
その相談内容は反対に蒼太の耳には入ってきていた。
「なあ、ディーナ。凄腕の錬金術師ってのに心当たりがあるんだが」
「奇遇ですね、私もそう思っていました」
蒼太とディーナは同じ人物を頭に思い浮かべていた。
「じゃあ、そうするか」
「ですね」
二人の意思は一致していた。
「なあ、ちょっといいか?」
蒼太は声だけでは届かないと考えて、アントガルとボグディの肩を叩いて振り向かせる。
「ん? あぁ、なんだ。今どうすればいいか相談しているところなんだが」
アントガルの表情は邪魔をするなとでも言いたげだった。
「話が聞こえてきたんだが、凄腕の錬金術師のあてはあるのか?」
蒼太の質問に三人は一気に表情を曇らせた。
「いや、それは……ドワーフは物づくりが得意なんだが、どうも錬金術方面に特化してるやつはいなくてな……」
アントガルの言葉にボグディとアリサも頷く。
「だよな。それで相談なんだが、俺に錬金術師の心当たりがあるといったらどうする? それもかなりの凄腕のな」
それを聞いて、三人の目は輝く。
「そ、その人を紹介してもらえるのかしら?」
その中でアリサが一番に口を開く。それに対して、蒼太は大きく肯定の頷きを返した。三人ともが身を乗り出して蒼太に食いつこうとするが、蒼太は手でその動きを止める。
「だが問題がいくつかある」
「問題?」
オウム返しにアントガルが聞き返す。
「あぁ、その心当たりなんだがここからはかなり離れた場所にいる。連れてくることは、できなくはないが少し難しいかもな。となると……」
そこまで言うと蒼太は三人の顔を順番に見ていく。
「俺はどこにでもついてくぞ!」
「僕も大丈夫。ちょっと工房に戻って仕事の調整をしなくちゃだけど、こんな面白いこと最優先にするしかないでしょ」
「そうねえ、他の場所に行ってみるのも楽しそうだし……わたしも戻って作業の調整してこようかしら」
蒼太は答えを自分たちに出させることで、今回の依頼に関する本気度を計っていた。依頼だからこなすのではなく、作りたいと思ってくれているか、それを知りたかったのだ。
「それじゃあ、色々と調整があるようだから出発は明後日でいいか?」
「あぁ、俺のほうは特に細かい調整は必要ないからいつでも行けるが、こいつらはそうもいかないだろうからな」
アントガルは日頃受ける仕事量を少なくしているため自由に動けるが、ボグディとアリサは普段から色々と仕事を請けており、遠出をするとあってはそれらをいくつか片付けた上で、更にスケジュール調整をする必要があった。
「それじゃあ、ボグディとアリサはその調整をしてきてくれ。明後日の朝、アントガルの工房に集合して出発だ」
「わかりました」
「りょーかい」
蒼太の言葉に二人は頷き、返事を返した。
一行はこの場でできる範囲で各人のサイズの測定を行うと街に戻った。今回は人数も増えたためアントガルのところではなく、蒼太たちは街の宿に部屋をとって休むことにした。
翌日は蒼太たちはオフとし、それぞれ自由行動とし街中を散策することにした。レイラは全てが物珍しく興味津々といった様子であたりをキョロキョロと見回しながらディーナと共に買い物をしていた。
「すごい! すごーい! 何か全然街の雰囲気違うよ!」
「そうですね、エルフの国もこことは全然違う雰囲気で楽しいですよ」
竜人族の聖地と比べて雰囲気が違うという意味だったが、それをディーナはわかっていた。最初に工房に向かった時や工房から森に向かった時は目的地に移動するためだけで周囲の様子を見る余裕がなかったが、今は自由に見て周っていいと言われているため、レイラはその言葉通りにふらふらと興味がある場所を眺めていた。
同行しているディーナはその様子を微笑ましく見守っている。自身も蒼太とアントガルが作業している最中に、街中を散策して色々と興味をひかれるものを見て心を躍らせていたため、少し前の自分を見ているようでもあった。
「エルフの国も楽しみ! 次に行くんだよね? ディーナさんの故郷かあ、早く行きたいなあ」
レイラは純粋に色々な場所を見て回るのを楽しみしていたため、その言葉は心の底から素直に出た言葉であり、それはディーナの顔をほころばせるだけの力を持っていた。
「いい場所ですから、楽しみにしていてくださいね」
ディーナの笑顔にレイラも笑顔で答える。同じ笑顔だったが、ディーナは柔らかいふんわりとした雰囲気の笑顔で優しいそよ風のようであり、レイラのは元気な笑顔でまるで太陽のようだった。そんな二人とすれ違った住人や、この国に来ていた冒険者は思わず視線を奪われ二人を目で追ってしまった。
しかし、もう一人の同行者のアトラが周囲が彼女らによからぬことをしないようにと二人にはわからない範囲で睨みつけ威嚇して守っていた。蒼太に言われたわけではなかったが、今回同行する自分の使命はこれであると考えていたからであった。
一方で蒼太はアントガルの工房に行き、装備の構想について色々と語り合っていた。その話の中で予定していないものまで作る話になっていたが、アントガルはそれを余計な作業とはもちろん思っていなかった。それは作業意欲を刺激するだけのアイデアを蒼太が出してきたためだった。
古龍も蒼太と共にその場にいたが、二人の話に熱が入って来たところで興味を失いリビングで眠りについていた。
二人の話し合いは夜まで続き、そこへディーナとレイラとアトラが帰ってきて食事をし、出発の日を迎える。
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