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鉄 (くろがね)のアレス!  作者: ユッキング加賀


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10/10

2018年新春特別編「春は春でも子供に見せられない春が此処にある(一周回ってやっぱ新春)」後篇

※こちらのエピソードは2019/02/03に短編として掲載したものをシリーズに合わせるべく移動したものになります。

予めご了承ください。


 楓邸で昼間っから変態宇宙人のソードが持ち寄ってきたショタ物のPC用エロゲー数本で遊んでいた暇潰しに必死のアレス達。

だがそんな平穏の最中、玄関先で楓に拾われた1匹の全身真っ黒なタコのような何かがやって来て事態は急変。

悍ましい程に黒い生命体がイア、イアと鳴き声を上げると、傍にいた現家主の楓と毒蛇の魔物ことソフィア・ヒュドラントが瞬く間に洗脳。渾沌《カオス》な精神攻撃で万事休すかと思われた(一応)主人公のアレスだったが、時の属性《アルケー》を持つ前篇中盤におけるA級戦犯ことソードが自身の能力によって彼を救出。

時間を切り取り、それを一つの空間とした楓邸の縁側で今後を考えていたアレスとソード、そしていつの間にかその世界に付いて来ていた年齢不詳本名不明正体も不明なソードの師匠だったが…。

「ていうか前回までショタ物のエロゲー数本ぐらいやってたわな?途中からイアイア言ってる変なタコを楓が連れてきたわな?ソードのアルケーで時空間に緊急撤退したわな?そんで様子見たいつって一旦出てきたわな?」

……。

……。

……。

「3人まとめて捕まったわな?」

「捕まったわなじゃないでしょうがああー!!!早く楓邸《おうち》帰って録画してたアニメ放送直前特番をまた観たいのにいいいい」

「…………」

寝息を立てている。


考え無しに出てきたのはすこぶる不味かった。

空間を抜け出した直後、耳やら鼻やら口やらから蛸の足のような触手を伸ばした街の人々に囲まれてズルズルと足を引っ張られてきてしまった。洗脳こそされているだろうが、彼らは元々罪なき志木市民。当然ながら傷付ける訳にもいかないので、攻撃の類は行わず無抵抗とされるがままだった。


「あーもうめちゃくちゃだよ。オレ達3人共鉄橋の下でずっと荒縄で緊縛されてるってのに、ししょーは平気な顔《ツラ》して寝ていやがるわ、ショタ好きの変態宇宙人女騎士は何やら拘束されながら妙なオタ活してるし、特別編ってほんと何だろうな、もうこうなるぐらいなら著作権ギリギリを攻めたソシャゲのフェスガチャ大会編とかやってくんねーかな」

先程まで縁側でエロゲーしていた時なんかは状況とは裏腹に爽やかな快晴ハレルーヤを見せていた夏空だったが一転、時空間から戻ってきてからというものずっと先まで灰色の雲が隙間無く拡がっている。

楓邸近くの草が生い茂った土手に跨る赤い鉄橋、富士下橋のジメジメした足元で杭に荒縄で乱雑なグルグル巻きという憂き目に遭っている。

「あんまり適当な事ばかり呟かないで下さいよ。あと私は○○厨じゃないですから、ショタ好きですけどホモに媚びて少しでも人気を得ようとしているだけですから」

適当なのはどっちもだろうと思う、現在進行形で爆睡中のししょーであった。


「そんな事よりこの縄何とかしようぜ、そのうち緊縛プレイにどハマりした40代後半のマゾオヤジみたいになっちまいそうだ」

「さすがにキツいですねぇ…(色んな意味で)」

「せやろー?絵的にもアレやろー?小説だから絵無いけど」

流れるようにメタい発言をしていく。

「とにかく、これからどうするのアレスくん」

「何か分かりやすいよなソードって。ふざけてる時は敬語だけど、真剣になると割とそれが無くなるっていうかさ」

「そんなの今はどうだって…!」

「あっ」

何かを思い出したかのような阿保みたいな表情を浮かべたアレス。

「どしたの」

「いやさ……」

静寂が瞬く。

「日常回やらが続いて忘れてたけど、オレって鉄のアルケーで自在に姿変えられるんだった…」

「それ一番忘れちゃダメなやつですよねー⁉︎じゃん拳忘れた○悟空並みに不味いですよね⁉︎」

「それを言うなら○めはめ波なんだよなあ。んじゃ、早速アルケー使って液状化すっか」

中々どうでもよさそうな指摘をした後、荒縄の縺《もつ》れの間からかつてアレスだったものが銀色のドロドロした液体となって辺りに流れ出していく。

「んほおおおおお」

鈍く光る底の見えない水溜りのようなものから、原因不明のハイテンションな声色と見ただけでイラッとくる顔芸を見せつけるドロドロ顔のアレス。それはまるで人面はぐれメタルのような中途半端に感じる悍ましさとシュールさを一度に表していた。さすがの変態ソードでも若干顔がドン引いているように見受けられる。

「かーらーのー!『釖《かたな》、三日月宗近《みかづきむねちか》』…!」

瞬間的に普段の姿に戻ったアレスの右手に銀の稲光が迸《ほとばし》る。飛び散った閃光が一点に集まったかと思うと、それはずいずいと放物線のアーチを描いていき、やがて艶やかな輝きを刀身に映す優美な一太刀の姿を現した。その刀剣はまさしく、現在まで伝わる天下五剣が一つ、三日月宗近そのものである。

「―――剣舞《けんぶ》、梳斬《くしぎり》」

それは長髪を梳くが如く丁寧且つ美しく、それでいて断ち斬る力強さすら思わせる驚異の剣技。

玉をも弾く繊細な刀身を露わとしてそれを下ろし、対象を横切る。すると、2人を固く縛っていた荒縄は役目を終えたように自然と崩れ、解《ほど》けていった。なお、寝ていた師匠はドテーンと顔面をぶつけて泥塗れになってしまった。


「助かったわ。にしても、縄解く為だけに奥義使う必要性???」

早速ボヤきだす変態騎士。

「いいじゃんいいじゃん!使いたかったんだーい!それだけなんだーい!うわああああああ美織いいいい」

「勝手に歳下の先輩設定の母性の元へ帰還しようとしないで。まあ、それはそうとあの2人を探さないと。きっと、身体中の穴という穴から触手の一本や二本は平気で生やし始めますよ……(変態特有の微かな希望)」

「ええ……、草なんだが」


「あぁ〜、ぽきた」

漸《ようや》く睡眠という名の沈黙を破ったのはソードの師匠。案の定地球のインターネットに侵されつつある。…言わずもがなアレス達もそうなのだが。

「夢の中から今北産業やぞ」

「やっと起きたかおい。さっきまでオレら三人まとめて縛られてたんだからな」

 案の定マイペースを貫く5chや○witterに出没していそうな男、それがこのししょーである。


「まああれだ、状況は何とな~く理解できたかもしれないわな。こんな黒い集まりなんて視界の端から端まで出来ていりゃあさ」

 何処から湧いたのか、老若男女問わず土手を埋め尽くすような人、人、人。

 農作業中だった農家のおじさんか、授業中料理を運ぶ途中だったウェイトレスだったか、はたまた部活途中のバレー部員やらパトロール中だった警察官やらが真っ赤な絵の具で塗りつぶしたかのような眼をこちらに向けてくる。

しかも背中のタコの足みたいな触手がウネウネと彼らの後ろで動いており、これが大変気味が悪い。

『IA…IA…、『IA…IA…IA…IA…』

「ほどなるぅ…、市民を洗脳して駒としてぶつけて来やがったか。威力の高い攻撃でもしようものなら数えるほど罪を重ねてはいまいであろう住民を殺しかねない、かと言って弱過ぎると引いてもくれない。全く、意図してやったのかは定かじゃないにしても、方法がえげつねえなあのクソダコ」

 元凶は解っている、あの時の楓とソフィアも同じような瞳をしていたのだから。

「これは1人1人峰打ちしかなさそうですね…。攻略ルートがやたら枝分かれするタイプのアドベンチャー物でエンド集めを進めている時よりモチベが沸きませんけど」

「CG集めきった瞬間の達成感は何物にも代えがたいからね、しょうがないね。但し、首は落として集めたりするんじゃねぇぞ…。いくぞテメェらあぁぁぁぁぁぁぁーーー!!!」

「頭数なんて数えてたら祭りが終わってしまうな。アレスに続くぞ、ソード」

「やるしかないんだろうなあと薄々。…ええ、お供しますとも師匠!」

 3人の剣士(ししょーだけ素手)は覚悟を決めると、鍬や箒にお子様メニューのハンバーグプレートを構えた集団へ真っ直ぐ突っ込んだ。


……一方その頃、河川に挟まれて聳《そび》えるアーチ状で硝子張りの市役所、その屋上には人を待つように立ち尽くす二つの影が居た。

 何かを崇めるように両腕をいっぱいに禍々しい上辺へ向け、IA…IA…と呟く。

 影たちはクスクスと笑っていた。


「剣舞、打崩《うちくずし》し」

 アレスは宗近を己の眼前で縦に構え、閃光が抜けてゆくように人々の側を走りながら華麗な峰打ちを決めていく。

「第二時空戦術……」

 その時、世界が静止した。

「―― 此こそが私と瞬く剣の剪定……、ザ・プルーニング・モーメント!峰打ちバージョン!!」

 一糸も動《どう》さぬ10秒間の中で2~30人の後頭部を綺麗に打ち抜いた。


「小腹空いてきちゃった……」

 時の歯車が動き出すと同時にバタバタと倒れていく。

「いやー全体即死宝具みたいでスカッとしましたねこれは」

「いいけど、ホントに即死は取るなよ?」

「ムムっ、失礼ですね~アレスくん。これでも伊達に修行を積んではいませんから、ええそうですとも

。だっ」

「あともう一押しだッ!」

「あっ、おい待てっ!未読スキップは御法度ですよ~」

 宇宙女騎士は戦場でも相変わらずであった。


「ほいよっと。ほいさっさほいさっさ。勢いでやってみたけど、わざわざ手刀で峰打ちとかダルいな?」

 ただ一人、得物を持たないししょーは時々右手をぶらぶらさせながらボヤき、そして手刀を叩き込んでいく。

それにしてもこの入学したての高校生みたいな顔立ちにしては妙に歳食ったような喋り方をしている。

「外なるものが背中に植え付けたであろう憑き物が原因のようだから存滅は使えないし、こいつはもう親玉を速攻片づけて決着つけるしかあんめいな」

 ししょーの得意技の一つである存滅は無(・)機(・)物(・)にしか通用しないらしい。

植物の種子のようなものを埋め込まれて操られている状態故に、今は気絶させる以外に道はないだろうと背中を見て悟っていた。


「うーむ、やはり根源《もと》を叩くっきゃあねえわなっと…。ほぉ〜、おるねおるね。おーいアレスにソード!見つけたぞ、あのカーブした感じのガラス張りの建物の屋上から黒い気配を感じるわい」

丁度彼らがいろは橋の前に差し掛かった辺りで緊張感0な声が上がった。

「大将の居場所が分かりゃこっちのもんだな!っと、ありがとな三日月宗近」

アレスに握られていた日本刀が光の粒となって消滅した。と同時に、両足がぐるぐると足先から捻じ曲がり身体を沈めていく。

「鉄発条《てつばね》ぇ……!」

「こらアレスくん置いてくなー!」

アレスは力を込めてネジネジと縮んでいたバネを伸び放すと、気絶した住民達を後にするように地上との距離をグングン空けていた。

雲に手がスレスレで触れないぐらいの高度に達したところで上昇が終わる。すると、渦城に捻れていた両足が見る見るうちに人と同じそれに形状が戻り、代わりに背中から14枚の鉄板が左右に7枚ずつ向いて生えてくる。

「鋼翼《こうよく》!ぶっ飛ばすぜ」

灰色の雲以外に何も見えない大空の中を滑るように飛行し、我れ先にと市役所の屋上を目指す。

搔き分けた風の中で加速し続ける間、アレスは思った。

「あの2人は助けられるのだろうか)」

「(あのタコを引き摺り出せるのか)」

「(迷ってても埒あかねえな、とにかく戦うしかあるめえ…)」

2〜3秒後、迷いと大気を振り払ったように緑色の床に着陸していた。

案の定、そこには例の2人が足並み揃えて不気味な笑みを浮かべていた。

「やあ、楓にソフィア。その笑い方はなんだその…、変顔健康法でもしてるのかな?個人的にはノーパ」


「そこまでだアレス。今は君の変態的嗜好に耳を傾ける用は無い」

「ししょー、それにソードも」

「やっほー、ていうか置いてくな〜!」

そこには先程の2人が前触れもなく姿を見せていた。あとソードが軽くキレっとしている。

「何を不思議がっている、ただの瞬間移動じゃないか」

「た、ただのね…」

自身に出来ない事を目の前でされると引いてしまうタイプのアレスである。

「さて、と。とりあえずその娘《こ》ら返してもらってもよろしいかな?ヨグ=ソトスの幼生態くんよ」


A…A…、%・×:=2÷45〒ケ@!∃∫√ ゛='∠T@∬……。

(ああ…、そうだ!ヨグ=ソトス……。)


?????

え、あいつ今喋ったのか?まるで聞き取れなかった、人はおろか万人の言葉でコミュケーションが取れるはずの神ですら何を言っていたのか理解出来なかった。

「世界が違えば言語だって違うものさ。アレス、あのヨグを2人から引き離すぞ」

「……、おうよ」

緑の床に響き出した2人の鼓音がその場から微動だにしない2人の元へドドドドと駆けていく。

「遠くからお二方の勇姿を見守…きな粉の揚げパンうまっ」

いつのまにか一人で日本の給食メニューみたいな物を頬張っているソードである。時間操作の能力は体力の消耗が激しいらしい。


「おい」

「んだよししょー」


「おいパン食わねえか」

突然視界に映し出された一枚の何の変哲も無い食パンに面食らってしまい、思わず足を止めるアレス。

「……………は?」

「いや、パン食わね」

「いやじゃねーよ!、いや、嫌ではねえけど、いや今はやっぱ嫌だわ、この状況で食パン食える確証がないわ」

よくよく考えても意味不明過ぎる。まあ、別に考えたりだとかしなくても十分意味不明だが。

「この食パンはな、一袋に2〜3枚ぐらいしか入っていないのに店頭では150円以上はするんだ。だが売れる。何故だか解るか?それは美味いからだ。6〜8枚纏めて入っていても、それが味が悪かったりパサつき感が目立っているとまた買いたくはなくなるだろう?ところが物は試してガテン系とそいつに挑んだところ、コイツぁ美味ぇ…、また食いてぇ…と思わせてくれたんだ。このパンは美味いんだよジョージィ…。だから、」

「単刀直入に話すんだ。あとオレはジョージじゃねえアレスだ。あとこれはつまり…、何だ?」

「いいから俺がこの前近所のコンビニで見つけた美味え食パン食ってみろって話なんだよ!!!!黙って口に突っ込めぇぇぇぇぇえええええええええええ!!!!!!そして!!!!とくと味わえええええええええええええええええ!!!!!!!!!!」


―――― ぷっつん。


「「早く攻撃してこいや貴様らァァー!!!!」」

取り憑かれている方の2人がやり取りに痺れを切らして突撃してきた——が。

「今だ!闘争求身凍結波《とうそうきゅうしんとうけつは》!!」

持っていた例の食パンをアレスの口に無理矢理押し込むと、ししょーは自身の胸の前で右手を時計回りに一周動かした。すると、その軌道を追うように青く光る帯状の線がドーナツみたいなリング型の輝きが出来上がった。

「その怒り120え〜ん!オラァ!」

「(120円はパイの方では……)」

ししょーがそのドーナツ?に回し蹴りを撃ち込むと、その穴は斜め方向を向きながら混沌系女子2人組の頭上まで飛んで行く。

そのまま一気に腹辺りまで降りてくると急に縮み始め、遂に纏めて拘束した。

「この技は相手が戦う意思を見せなければ成功しない。人を混沌の力で惑わす外なるもののお前には、更にそれを上回る狂気を見せつけることで焦らし苛立たせる。怒り心頭で殴りかかりそうになったところを闘争心の条件クリアに利用させてもらったという訳だ。なお、あの食パンの味は本物である」


光の輪に縛られている2人の表情は先程のものとは一転、苦悶と悔しみで苦い顔を見せている。


「師匠凄いですね……」

「まだだソード、仕上げが残っている」

ししょーが指をバキバキ鳴らしている。アレス的には(もうあいつ一人でいいんじゃないか)などと考え始めている。


¥☆%+##々〒¥%%°÷……!

(何をする気だ貴様……!)

「まずはだなヨグ。この世界に従ってもらおう」


……?


「法則変更《ルールチェンジ》。ヨグ=ソトスは『こちらの次元に存在する限り』、日本語でしか話せなくなる…!ついでに、『この世界のお前』にはクソ寒いダジャレを言われると人体から分離してしまい、最低10時間は他生物に乗り移れなくなる弱点も追加しておいてやったぜ」


何かしらの動作があった訳ではない。

特にエフェクトのようなものの類は出ていた訳でもない。

ししょーはただ、それを口にしただけ。


「「何を言い出したかと思えば…!?ハッ!!!???」」


2人してこの反応。そう、今、ヨグ=ソトスは『日本語を使って話している』のだ。

「それともう一つだ。アレス、何かくっそつまらんダジャレを言ってみろ」

「はぁ〜???オレに、ダジャレを、言えってか!そりゃないぜ」

思えばどうしてあんな頭おかしいような弱点を植え付けようなどと考えたのか。あのタコよりよっぽどSAN値をゴリゴリ削ってきている。

「助けたいんだろ?あの2人を」

「まあ…、確かにそうなんだけどよ」

「じゃあ言え。言うんだ、今すぐ。でないと、冷蔵庫に入っているお前の一個298円の焼きプリンを食われる羽目に」

「わーった!わーった、言うから!言うからもう…」

アイツらの為だ、もう腹はくくった。それもあるのだがせっかくのおやつを食われる気などない。アレはオレが買ったのだ。


「…布団が吹っ飛んだ」

「んん〜?聞こえないなぁ〜!もういっぺん言ってみろ」

「布団が!!!!吹っ飛んだあああああああ!!!!」


吹っ飛んだああああああああああああああ!!

吹っ飛んだああああああああああ

…………………。


「ああああああああああああああああああああああああああああああ!!何だこれは!!剥がされる…!んああああああああああああああああああ!!」

2人の背中…、触手の根元辺りから黄金色の光が溢れ出す。引き摺り出される痛みからか、より表情が歪んで見える。

「理解しろ。これが『弱点』だ。この世界に存在する限り、俺を倒す事は不可能なんだぜ。これは今の世界のルールなんだよ。俺がついさっきそう書き換えた。だから大人しく正体を現せ。本来、ヨグ=ソトスといえば外界にて時間と空間を司る副神なのだろう?故に、俺の言う事を聞けば命は取らずに元の世界に送り届けてやろう…」

「くそおおおお!!……観念したよ、名は何と申す」

心を根元からへし折られたかのような態度で呟いた。『勝てない』のだと頭で理解してしまったヨグ=ソトスには、最早抗おうとする力が微塵も湧き上がってこないのだ。逆らえば確実に消される。その確信が戦う意志を打ち消している。

背中から漏れ出した輝きが沙羅双樹みたく絡まり合い、やがて東洋に居るような胴長の龍のような姿を見せた。表面を覆う鱗のようなもの一つ一つは、目を凝らすと鱗というよりも手提げの籠のように編まれた例の触手である事が分かる。

「名前なんざねえさな、ヨグ=ソトスなんてかっけえ名が付いている奴が羨ましいなんてもんじゃねえよ。……そうだ、今度からニャルラトホテップとか名乗ー」

「這い寄る混沌は頭可笑しくなりますからやめて下さい師匠」

ソードがブリックの牛乳をチューチュー吸いながら師匠を静止しようとしているようだが、行儀が悪いので出来ればそれを先に止めてもらいたいと切に願うアレスであった。


「アレスくーん、またやろうかあのショタゲー」

「おいおい…、今度は腹上死ルートなんて晒さないでくれよな?」

慣れた操作でおねショタ物のエロゲーのセーブデータを開く。…今更だがおねショタ物のエロゲーって何だ…?

正直なところ、アレスはそういったシチュエーションの作品なんて物はコミケの同人誌ぐらいでしか見かけた事が無い。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


あの事件から2、3日の昼下がりであった。

ヨグ=ソトスに操られていた間の記憶が無い楓とソフィアの2人であったが、何事もないように日常へ戻っていた。

「アレスさんにソードさん!いま玄関の前で凄い生き物を見つけたんですよ!見てくださいよこれー!」

「「え」」


そして、アレス達は思い出した――。


「¥%×〒Å≦〜!!IA!IA!」

「「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?!?」」


IA、IA……。

前篇に居た節はどうなったって?

ヤツなら長い長い冬休みに入ったよ。

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