プロローグ
皆さま初めまして、ユッキング加賀です。
こちらは私の初投稿作品シリーズとなります。そこそこ打たれ弱いので、ご意見は、どうかどうかお手柔らかにお願い致します。
また、この投稿シリーズの投稿日は不定期更新でございます。
それでは、鉄のアレスをお楽しみ下さい。
時は平成28年、埼玉県志木市内のとある路地。
まだまだこれからだ、と言わんばかりの七月中旬の夏。
嫌気が差すほどの陽光が暑く眩しい昼下がり。
「だりーよー、あちぃーよー、解けちゃうよーっ…だ」
家々とアスファルトによって形成された、その人気の無い場所に奴は居た。
「ったくよー、日本にはレモネードの屋台一つねぇのかよー。喉が渇いてきやがったぜ」
ボサボサの青い髪。
橙色に光る瞳を宿す整った顔。
若干ヨレヨレな、ネクタイの絵が描かれた白いシャツに青いダメージジーンズを合わせている。
そんな一人のダサい格好な高身長の男は、履き古した黒いスニーカーでジトジトと歩いていた。
彼の歩く先に、
一体のとある異形の何かと、一人のブレザー姿の少女が一悶着起こしていた。
「フヒヒ。生き胆、生き胆を寄越せ!」
「誰かー!助けて…、助けてくださいっ!」
ゴツゴツとした緑の鱗に身を包んだ二足歩行のトカゲのような変な生き物が、
黒いショートヘアの少女の細い腕をガッチリ掴み、色々と喚いているように彼には見えた。
「さっきからギャーギャーとうっせえんだよ。ンなに乳繰り合いたいんなら、ベッドタウンで一発ヤってこいよ」
ポリポリと頭を掻いている。
「何だテメー、このアッパ様が見えとるんか。何モンじゃコラァ」
カッパだかナッパだかと名乗ったそいつは、オレに気が向いたのか少女から手を離した。
男が右手で握り拳を作ると、銀色の淡い光を溢れさせた。
「オレか?挨拶して欲しいのか?」
喋りながらジリジリと距離を詰める。
「そ、そうだっつってんだろオラァ」
その光は拳を包むように一つの形となっていく。
「そうだな、挨拶は大事だ。日本の古事記にもそう書いてあると、あるニンジャアニメでも言ってたしな。
ドーモ、ハジメマシテ」
律儀にも、彼はお辞儀をした。
「え」
唐突の行為に少女は呆然とした。
「―――やっぱやめた。こんなやつに名乗る気が失せてな」
彼は人では無かった。
「こんなやつだと!ファッキュー!!」
「これから死にに逝く野郎如きに、土産な事は言えねえからな」
右手には、グローブのような銀色のメリケンサックがハメられていた。
「あばよ、緑の化け物」
右腕を構えると、それを思い切り振り抜いた。
「……鏈錟!!!!」
物凄い速度でアッパにアッパーを叩き込む!
「ヴェァァァァアアアアアアアアッッッ‼︎」
衝撃は大きく、波打つ乾いた打撃音が辺りに響き、黄色い瞳を宿した眼は修正液で塗り尽くされたような真っ白へと色彩を変貌させて、仰向けに崩れた。恐らく気絶したのだろうか。
「おい、そこの……えっとhigh school student?」
「…え、あ、はい、そうですけど」
(さっきまで普通に日本語で喋ってたのに、高校生かどうかを英語で確認…?
日本慣れし切れてないアメリカ人か何か…?
でも今、変な能力みたいなの使ってたっぽいし。だとしても、能力持ちのアメリカ人なんてジャン○スクエアのマンガでしか見たことないし…)
この間わずか0.16秒である。
「怪我とかねぇよな?腕を掴まれてたみたいだが」
「わたしは大丈夫です。幸い、アザも残ってないですし」
「そうだな、骨折もしてなさそうに見える」
男は触りこそしなかったが、両腕を一目見て安堵を取り戻す。
「あの…」
「ん?今」
「何でもするとは言ってません」
「このネタが通じるのか…、たまげたなぁ」
女の子の切り返しに困惑しかけたのか、男は苦笑いを浮かべながら首を傾げた。
「そうじゃなくて…、まだお礼を言ってなくて」
「言われる程の事はしてねぇよ。お前が嫌そうにしていたから、ただ助けてやっただけに過ぎんよ」
「でも」
「でもじゃあねぇ。
電車の席に座ってる時に、目の前で立ち往生しているご老人が居たら、すかさず自分の席を譲るだろ。誰だってそーするし、オレだってそーする。そんくらいの事だってわけよ」
「はぁ」
「それによ…」
「?」
男はそっぽを向いた。
「"もう"、オレの目の前で誰にも泣いて欲しくなかっただけだ」
「え…」
「ほーう、安心してベソでも流しちまったか。流すのは風呂場の泡とションベン位にしておけよ」
「ちょっ」
「たっはははは!ジョークだぜジョーク!」
自分のジョークで笑っている謎の外国人。
「けっ、すっかり元気になったみてーだな!」
少女の顔はまるで、雨上がりの様に晴れ晴れとしていた。
2026年7月追記、10年振りに此方の非公開設定を解除しました。
至らぬ箇所も多々あると思いますが、何卒宜しくお願い致します。




