4、晃二を諦めてくれ作戦パターンその1
フードエリアには、目移りするようなレストランやキッチンカーが所狭しと待ち受けていた。
洋風レストラン,ピザ専門店,ファーストフード店,可愛いカフェなど、歩けば歩くほど何を食べていいのか分からなくなってしまう。
一通り見てまわり、四人は最終的に〈ジャングルテラス〉というレストランに入った。
パーク内で一番広いダイニングスペースのため、広々とした店内には、たくさんのテーブル席が置かれていたが、お昼時のためか、ほぼ席が埋まってしまっていた。
そこで、四人は屋根付きのテラスで食べることにした。
おいしそうな匂いが立ち込めたトレイを持って、空いているテラス席に座る。
良平と晃二はハンバーグステーキセット、しのぶはチキングラタンセット、寛太がパスタセットをそれぞれおいしそうに頬張った。セットに付いている飲み物には、パークのキャラクターを型どったゼリーがグラスから見え隠れしていて、見る者を楽しませてくれている。
その時、良平は不意にあることに気付いた。
「あら、晃二ってばボタンが取れてるじゃない」
晃二の黒いブラウスの一つ目のボタンがなくなっているのを指差しながら、良平はわざとらしく困ったちゃんの顔を作った。あるアイデアが浮かんだのだ。
「ほんと、晃二ってば、こう見えて結構いいかげんよねー」
そう。察しのいい読者さまはすでに御存知の通り、良平の思い付いたアイデアとは、名付けて、晃二を諦めてくれ作戦パターンその1〈晃二を幻滅させよう編〉である。
これは、デート中、事ある事にわざと晃二の欠点を指摘してイメージダウンを諜り、彼女自身に晃二から離れてもらおうという、モテない奴が考えそうな、なんとも根暗な作戦であった。
「あ、そういえば、晃二、昨日もこの服着てなかったっ? やっだーっ、もしかしてー」
その瞬間、
「なに嘘を言ってんだ、こいつ~」
晃二の言葉と共に、良平の額にビシッ!と強烈な痛みが走った。そのまま、つつーと良平の額から鮮血が滴り落ちる。
晃二が強烈なデコピンをくらわせたからであった。
「や、やーねー、晃二ったら~っ。うふふふふ」
頬をひきつらせながらもなんとか笑顔を保ちつつ、良平は滴る鮮血もそのままに、こそこそと耳打ちで怒鳴った。
「なにすんだよっ、てめーっ! 血ィ出てもうてるじゃねーかっ!」
「うるさい、聞け。オレは昨日、この服を着ていなかった。なぜ、そんなありもしないオレの悪口を言ってるんだ」
「わざと言って諦めさせんだよっ! 俺は今日のデートで池端を諦めさせたいんだっ! そのためには、お前を幻滅させるのが一番だろっ!」
「俺のプライドが許さん」
「なっ! ……ちょっと待ったれ。この格好の俺に、よくそんなセリフを言えたな? 俺が今まで、どれだけ自分のプライドを削ってまでこんなに頑張ってきたと思とんや」
「許さない。いや、許せないんだ」
右手にナイフ、左手にフォークを持って、良平の両眼を突き刺そうとしている晃二に、
「……かしこまりました……」
良平は執事の如く、丁重な返事をするしかなかった。
読んでくださって、ありがとうございました。
次回に続きます。




