第98話 その後の話
聖剣の魔王――元勇者が死んでから数日後。
奴の支配していた広大な領土で争奪戦が始まった。
最も地位の高い者が死んで首都まで消えたことで、成り上がりを目論む者が続出したのである。
元勇者の部下には強い力を持つ人間や魔族が多数いた。
そいつらが好き勝手に土地の所有権を主張し、異論を唱える者は問答無用で粛清する。
力量が同等の者が言い争うことになれば、それは大規模な戦争へと発展する。
止める者はいない。
本来なら元勇者の役目だったからだ。
あいつはあいつなりに国を統治していたらしい。
圧倒的な強さを持つ聖剣の魔王が消えたことで、国民は無秩序な戦争を延々と続けることになった。
そこに他国の魔王が乗り込み、混沌が増していく。
奴らも元勇者の土地を狙っていたのだ。
今までは戦力差から手が出せなかったが、現在はどさくさに紛れて掠め取ることもできる。
誰もが己の欲のために他者を踏み台にする。
醜い争いが何カ月にも渡って続いた。
俺やルイズから何度か警告を行ったが、耳を貸す者は一人としていなかった。
争いは悪化の一途を辿っていく。
結局、戦いを終焉に導いたのは俺だった。
形式上の警告を済ませた後、領土に踏み込んで無差別に虐殺していった。
降伏も無視して見せしめに惨たらしく命を奪う。
何もかもを派手に吹き飛ばし、有力な英雄や魔族も容赦なく叩き潰す。
苦戦することは一度もなかった。
どいつも元勇者に劣る者ばかりなのだ。
幻創魔術で存在を弄ってやれば、あっけなく無力な存在へと成り下がる。
そこからは掃除をするように殺してやるだけだった。
皮肉なことに、元勇者が務めるべき役目を俺が代行していた。
虐殺を始めて二週間ほどで、戦争は沈静化し始めた。
俺の暴挙を知った有力者が慌てて自分の支配地へと逃げ帰ったのである。
巻き添えで死んでは堪らないと思ったのだろう。
紆余曲折を経て、聖剣の魔王の土地のうち三割ほどが俺の所有地となった。
他の七割は元勇者の部下だった者達が治めている。
別に根こそぎ奪う気はなかったので、それくらいがちょうどいいだろう。
いずれは手に入れた三割もどうにかして手放すつもりだ。
今の俺には王国があるから、それ以上の運営は面倒だった。
こうして元勇者に関する争奪戦はひとまずの区切りを迎えたのである。




