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魔眼の幻創術師 ~勇者パーティに見捨てられた三流幻術師は真の力に目覚めて世界を翻弄する~  作者: 結城 からく


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第93話 幻創魔術の世界

 首から上を失った元勇者が瞬時に復活した。

 今度は意識があるらしく、俺を見た途端に叫ぶ。


「……この野郎ッ! クズの幻術師ごときが、おれ、ぶぉっ、え……」


 途中から元勇者の身体が砂のように崩れていく。

 まるで自らの叫びに耐え切れなかったかのようだった。

 肉体が極度に脆くなっているらしい。


 原形を失った元勇者だが、また元通りに復活する。

 しかし顔色が悪く、すぐに嘔吐した。

 口から黒ずんだ内臓が飛び出す。

 元勇者は白目を剥いて倒れるも、やはり復活した。


 一連の現象を見ていた俺は首を傾げる。


(どういうことだ。こいつの身に何が起きている?)


 よく分からないが、元勇者は無制限に生き返ることができるようだ。

 ただし、奴の内面が肉体に反映されている。


 最初に固まっていたのは、奴の意志の強さを表現したのだろう。

 あまりの執念が本人を凍り付いたように止めていたのだ。


 二度目が脆かったのは、また別の側面に違いない。

 人間としての本質的な弱さではないか。


 三度目に腐った内臓を吐いたのは、奴の性根だと思いたい。

 仲間を見捨てながらも進んできた部分を象徴しているはずだ。


 そして四度目の元勇者は、全身に鎖が絡まって身動きが取れない状態だった。

 これは魔王として大きな力を手にしながらも、立場や因縁に縛られる様の暗示か。


(好都合だな。ここは俺が有利な空間だ)


 俺が幻創魔術を全開にしたのには三つの理由がある。

 一つ目は正々堂々と対決して叩き潰したかった。

 二つ目は、ほぼすべての要素を可視化できる点だ。


 術の出力が普段とは段違いで、ただでさえ全能に近かった汎用性がさらに高まっている。

 聖剣による妨害も無視して元勇者に干渉できているのが良い証拠だろう。


 もちろん全力を出す危険もあった。

 いつもの幻創魔術は原則的に俺が不利にならないように意識しているが、今の状態はそれを保てない恐れがあった。

 けれども元勇者の執念深さを感じて方針を変えた。

 こいつには全開でぶつかるべきだと思ったのである。


 今のところ俺の肉体に致命的な欠点は見当たらない。

 全体が透明で極彩色の血管があるくらいだ。

 不気味な外見だが、これも俺の内面を表現しているのだろうか。


 色々と考察していると、元勇者を拘束していた鎖が壊れ始めた。

 心臓の辺りが強く発光して、そこから幾本もの剣が飛び出して鎖を切断していく。


(まだこんな手を隠していたのか)


 俺は素直に感心する。


 ここは幻創魔術の影響力が極めて高い。

 したがって浮遊する剣は、実際にはまったく別の能力だろう。

 俺からは剣として認識されているだけだ。

 元勇者は卓越した剣術の印象だから、そんな風に変換されているのだと思われる。


 そして、俺が力を全開にした三つ目の理由は、この展開を警戒していたからだった。

 幻創魔術は様々な概念を可視化する。

 これによって元勇者の持つ切り札を暴きたかった。


 現実世界で使われると、正体が分からず対処できない可能性がある。

 ここなら特定の形を強制的に押し付けることができる。

 正体の分からない能力も、別の何かとして実体化してしまう。

 普段も似たような真似はできるものの完璧ではない。

 今回は未知を逆手に取ったのであった。


 俺は元勇者の底力を信じていた。

 どれだけ追い詰めても、必ず逆転を狙ってくると確信していた。

 だから多少の賭けを許容して全力を出した。


 そして案の定、元勇者は限界を超えてきた。

 幻創魔術に支配されたこの空間でさえ、こいつは己の力を振るってくる。

 自由になった元勇者は、浮遊する剣の一本を掴み取り、勢いよく斬りかかってきた。

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