第82話 再会の時
しばらく触手が蹂躙する様を眺めていると、突如として異変が生じた。
無数の触手が結界に囲われて、そのまま圧縮されて消えたのだ。
「何だ?」
怪訝に思っていると、後頭部に何かが炸裂する。
感覚的に魔術だ。
超遠距離からの狙撃が命中したのだろう。
脳まで抉れていく感覚が走る。
気の狂いかねない激痛と共に、俺は膝から脱力して倒れた。
間もなく声が聞こえてくる。
「久しぶりね。やっぱりあんただったんだ」
視界の端に映るのは、勇者パーティの一員だった僧侶である。
服装は異なるが、その顔を見間違えるはずがない。
彼女は後ろに軍隊を引き連れていた。
自信満々な様子で、僧侶は俺のもとまで歩み寄ってくる。
そして割れた俺の頭部を踏み付けてきた。
「動けないでしょう? 専用の拘束魔術を何重にも改造して施してあるの。竜ですら逃がさない設計になっているわ」
僧侶が俺の頭を蹴り飛ばす。
顔の向きが反転し、首が嫌な音を立てて軋んだ。
「馬鹿ねぇ。五年ぶりに現れたと思ったら あたしたちの真似をして魔王になるなんて。落ちこぼれのあんたには向いてないわ。身の程を知りなさい」
僧侶はしきりに俺を罵ってくる。
暗殺に成功し、一方的に嬲れる立場に酔い痴れているのだろう。
よほど俺のことが憎らしいようだ。
「あの時せっかく生き残れたんだったら、そのままどっかに隠れて暮らせばよかったのに。欲張って調子に乗るからそうやって地面を舐めることになっているんじゃない」
僧侶が連続で頭を踏み付けてくる。
かなりの力が込められており、衝撃のたびに頭蓋が破損していた。
感覚的に脳味噌が潰れてはみ出している気がする。
視界には地面しか映っておらず、俺はただ蹴られるだけの人形と化していた。
そのうち僧侶が猫撫で声で語りかけてくる。
「ほら、なんか言ったらどう? 口が動くならの話だけど」
次の瞬間、俺は僧侶の足を払いのけて首を起こした。
奴の顔をぎらついた魔眼で凝視しながら笑う。
「――殺してやるよ、クズ女」
俺は幻創魔術を行使する。
周辺一帯の地面が沼となり、僧侶と取り巻きの軍隊が沈み始めた。
場が混乱する中、俺はいち早く沼に沈んでいく。
僧侶が術で身体を焼いてきたが、そんなものは関係ない。
俺は既に不死身なのだ。
頭部を吹き飛ばされようと死ぬことはない。
いくらでも幻で誤魔化せる身なのだ。




