第71話 魔王の視点
今後について方針の定まった俺は、ひとまずルイズに報告することにした。
彼の復帰を祝う宴が終わった後、呼び出して端的に伝える。
何一つとして誤魔化すことなく正直に話した。
特に大きな反応もせずに聞き終えたルイズは、やはり静かに頷く。
「そうか、分かった」
「やけにあっさりしているな」
「己に止める権利も義務もない。ただ事実を知っただけだ」
ルイズは淡々と答えた。
確かにそうだが、あまりにも反応が薄いので拍子抜けだった。
もっと色々と言われるだろうと思っていたのである。
まるで世間話のような相槌だったので驚いた。
もっとも、ここで話は終わりではなかったらしい。
何かを思案したと思しきルイズは、俺に質問を投げてくる。
「貴様は魔王になって何を為すつもりだ」
「世界を変えていく。術で歪ませるのではなく、国として介入するんだ。今までは第三者として動いていたが、今後は当事者として舞台に上がっていこうと思う」
「修羅の道を選ぶのだな。貴様の能力を用いれば、すべてが簡単に支配できるというのに」
「幻創魔術の過信は身を滅ぼす。俺は目を曇らせないためにも、自力で物事を成功させていかないといけない。能力頼りで強引に進めていれば、いずれ破綻するだろう」
俺にはその確信があった。
力に溺れた者の末路は何度も見ている。
自分が同じ轍を踏まないという保障は何もないのだ。
むしろこれだけ便利だからこそ、堕落する危険性は高いと思う。
きっと既にその路線に乗っているに違いない。
だからこそ修正しなければならないのだ。
「同じ魔王になるということは、己とも戦うつもりか」
「どうだろうな。状況次第だ。俺の正義に立ちはだかるのなら、容赦はしない」
「それは此方とて同じこと。覚悟しておくがいい」
ルイズはそう言うと、俺達の前で手を振った。
彼は冷酷な眼差しで言い放つ。
「協力関係は終わりだ。今すぐ出ていけ」
「ああ、そうさせてもらう」
俺は転移扉を生み出した。
それを開いて中に入ろうとしたところ、ルイズがぽつりと発言する。
「忘れていた」
ルイズが俺達を見る。
幾分かの躊躇を挟んだ後、彼は本心からの言葉を述べた。
「色々と助かった。感謝する」
「気にするな。先輩魔王に恩を売っただけだ」
「……フッ」
ルイズが笑った。
ほんの僅かに口端を曲げた程度だが、確かに笑った。
それを目にした俺は、ノアを連れて転移扉に入る。
白い空間で伸びをしてから、手を叩いて気持ちを切り替えた。
「さて、魔王になる準備をするか。まずは本拠地を決めないとな」
「我は何の役職になるのだ!?」
「じゃあ大臣で」
「大臣だとォ! とても頭が良さそうな響きではないかっ!」
ノアがにわかに盛り上がっている。
目がやる気に満ち溢れていた。
よく分からないが、大臣の役職を気に入ったようだ。
俺は腕組みをして白い空間を仰ぐ。
それから不敵に笑みを浮かべる。
(魔王が世界を変える時代だ。俺もそこに便乗してやるよ)
胸の内で立てた誓いは、なんとも心地が良いものだった。
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