第69話 己の道標
「俺は世界を救いたいが、どうすればいいんだろうな」
自然と言葉が洩れた。
一度は覚悟したものの、徐々に分からなくなってきた。
世界を知れば知るほど答えから遠のいていく気さえする。
何が正義で何が悪か。
俺やルイズは、どちらにも傾き切れない立場にあるだろう。
ではそんな人間ができることは何なのか。
なんでも可能だからこそ分からなくなってしまう。
俺の考えを聞いたノアは、不思議そうに持論を述べた。
「別に何も迷うことはない。レードの好きにすればよいだろう。それが許されるだけの力を持っているのだから」
「俺の、好きなように……」
そんな言葉は思い付きもしなかった。
ずっと大義のために衝き動かされてきた。
いや、そう思っているだけで実際は違うのだろう。
俺は世界のために行動している自分に酔っていたのかもしれない。
どこまで行っても他人の目や評価を気にしている。
だから魔王を殺して満足しているのだ。
それがたぶん良いことだと信じているからこそ、安心して実行できたのである。
ところがノアは真逆の方針を示してきた。
自分の好きなようにする。
とてつもなく壮大かつ無謀なことのように思えた。
だから堪らずノアに尋ねた。
「俺が好き放題にやったら、間違って世界を滅ぼしてしまうかもしれない」
「その時はその時だ。一人の力で潰されてしまうのなら、そのまま台無しになった方がいい」
「滅茶苦茶な考えだな」
「絶対的な答えなど存在しないのだ。我が極論を掲げても問題ないだろう」
ノアは自信満々に言い放つ。
欠片の疑念もなく、それで解決できると確信しているようだった。
凄まじい心の強さが窺える。
(とても鵜呑みにはできないが、ノアなりの筋は通っている)
単純明快で分かりやすい。
ずっと悩んでいる俺が馬鹿に思えるほどだ。
そう、分かっている。
絶対的な答えなど存在しない。
まさしくノアの言う通りだろう。
その中で人間は自分になりに模索して、納得できる妥協点を探していくのだ。
きっと俺は、妥協しなくてもいいから迷っている。
下手に全能に似た能力を持っているせいで、こんな風に考え過ぎてしまっているのだろう。
とは言え、幻創魔術を封印するつもりはない。
俺には俺しかできないことがある。
それだけは確かなのだから。
もし『面白かった』『続きが気になる』と思っていただけましたら、下記の評価ボタンを押して応援してもらえますと嬉しいです。




