第68話 祝杯のそばで
その日の夜、居住区では祝杯があげられた。
闇の魔王ルイズの再起を記念した催しである。
立派な白い城の前にルイズと住人が集まり、演説の後は食事会が始まった。
かなり豪勢な料理は、城に残っていた食材が使用されている。
いずれも超が付くほどの高級食材ばかりだ。
たぶん裁きの魔王とその幹部達の分なのだろう。
他人を信用しない性質だが、料理には並々ならぬこだわりがあったらしい。
食事会は非常に盛り上がっている。
住人達は、主であるルイズの躍進を喜び讃えていた。
ルイズもそれに応えられるだけの心構えを持っている。
その光景だけ見ていると、魔王であることを忘れてしまいそうだ。
俺とノアは、彼らの様子を木陰から見守っていた。
涎を垂らすノアは、料理を羨ましそうに眺めている。
「ううむ、我も参加したいのだが……」
「できればやめてほしいな。俺達は英雄陣営だ。いくら共闘関係でも、魔王の再起を祝うのは良くない」
魔王は世界の敵だ。
そこをはっきりさせておかないと、俺達の立場も曖昧になる。
魔王討伐のために立ち上がったのに、進むべき道が分からなくなってしまう。
ノアは木の枝を齧りながら俺に尋ねた。
「レードは嬉しくないのか? 落ちぶれた宿敵が盛り返してきたのだぞ」
「嬉しいわけがない。奴は世界を支配するつもりだ。決して応援できない」
「それならなぜ全盛期以上の肉体を与えたのだ? あれが再起のきっかけになったのは否定できないだろう。本当に再起を望まぬのなら、そもそも手助けする必要がなかったはずだ」
「…………」
俺は言葉に詰まる。
何も言い返せないのは、痛い指摘だったからだ。
ノアの言う通りである。
確かにルイズに手を貸したことで、今後の展開が明瞭になった。
各地を支配する新時代の魔王とも戦いやすくなったろう。
無視できない利点が発生しているのは事実である。
しかし、それらは必須ではない。
別に俺とノアだけでも行動可能だった。
仲間を増やすにしても、因縁のない相手を選ぶこともできた。
足りない実力は幻創魔術でいくらでも補える。
ルイズの復活は、本来なら存在しない問題を掘り起こした形となっていた。
そういったことを分かっていながら、俺はあえてルイズに接触して力を渡したのである。
どうしてなのか。
意識していなかっただけで、答えはもう出ている。
俺は、ルイズの持つ王の側面に期待していたのだ。
これからの世界に必要ではないかと考えている。
初めて会った時に絶対的な悪ではないと感じたから、こうした関係に落ち着いたのだろう。
それは向こうにとっても同じに違いない。




