第61話 問答無用
数え切れないほどのゴーレムを粉砕しながら前進していく。
今のところ危うい場面はない。
ひたすら不浄剣で破壊していくのみだった。
青炎も闇槍も絶好調で、ゴーレムの攻撃を呑み込んで蹂躙できている。
そうして迎撃の勢いが弱まってきた頃、宮殿から複数の魔力反応が接近してくる。
同時に無事なゴーレムが一斉に退避した。
剣を下ろして待っていると、武装した獣人族の集団が現れる。
総勢二十人くらいで、この街を管理する魔王軍だろう。
中央の一人は獅子の女だった。
しかし首筋や手足に鱗があるので、正確には混血種だと思われる。
赤いマントを翻るその姿には、一種の風格があった。
ただし、獰猛な顔立ちは極度の怒りに包まれている。
両手にはそれぞれ斧と鉈を握っていた。
どちらも強力な魔術武器で、漲る魔力は掠めるだけで人体を消し飛ばすだろう。
獅子の獣人こそ、裁きの魔王だった。
かなりの武闘派で、純粋な力勝負ではリエアも圧倒するほどらしい。
周辺の国々からも恐れられており、ルイズのやり方をそのまま乗っ取ったような形で戦力を拡大させていた。
周囲の獣人は幹部連中だ。
彼女に選び抜かれた精鋭は、下手な軍勢を蹴散らすほどの武力を有している。
裁きの魔王は重苦しい声で俺に問う。
「誰だお前は」
「ただの魔術師だ」
「この都市には結界を張っている。術による侵入はできないはずだが」
「気にするな。何事にも抜け穴はあるものさ」
俺がそんな風に答えると、魔王の怒りがさらに増した。
殺意が空間を軋ませんばかりに充満している。
「奇怪な魔術師よ。お前の目的は何だ。可能な範疇で要求を叶えてやる」
「意外だな。いきなり攻撃してくると思っていた」
「結界を掻い潜ってゴーレムの大軍を捻じ伏せる術者など、厄介に決まっている。戦わないに越したことはない」
魔王は淡々と答える。
絶対に負けるとは思っていないようだが、俺と戦えばそれなりの犠牲が出ると考えているに違いない。
怒りを押し退けられるほどの理性を持っているようだ。
だからこそ、この時代に強大な権力を持っているのであろう。
俺は相手の分析をしながら魔王を指差す。
「要求はただ一つ。お前の命だ」
「……誰に雇われた。人間の国か、それとも別の魔王か?」
「違う。個人的に決めたことだ。この剣の性能実験をしたくてね」
やり取りしながら、生け捕りにしなければいけないことを思い出す。
このまま勢いで殺すところだった。
ルイズの復讐相手でもあるので、生かしておかないと駄目だろう。
とは言え、これ以上の余計な問答は不要だ。
俺はおもむろに不浄剣を構えると、躊躇いなく突きを放った。
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