第49話 本格始動
帝都の城から上空に人影が飛び出した。
青い炎を纏って浮遊するのは、黒ずんだ一体のスケルトンだった。
スケルトンは顎骨を鳴らしてこちらを指差す。
「おいおいおいおいおい! 何が起こったかと思えば、ルイズの旦那じゃねェか! どうした、見た目が男前になってるぞ!」
軽薄そうな声が響き渡る。
まだ相当な距離があるが、魔術で拡声しているのだろう。
俺は遥か遠くに浮かぶスケルトンを注視する。
(いきなり魔王が来るのか)
あれが今回の標的――青炎の魔王だった。
少なくとも城に辿り着くまでは登場しないと思っていたが、そうでもないらしい。
短期決戦を望んでいるのかもしれない。
或いは自身の手で終わらせたいのか。
自陣の犠牲をなるべく減らすためという線もある。
何にしても好都合だった。
俺達としては青炎の魔王だけを集中狙いできればいいのだから。
黙っていたルイズが前に進み出た。
彼は全身から闇を放出しながら声を絞り出す。
「青炎リエア……貴様は絶対に許さんぞ」
「ああぁ!? 何を言ってんのか聞こえねぇよォ! もっとはっきり喋ってくれ!」
青炎の魔王リエアは煽るように声を返してくる。
真面目に取り合うつもりはないらしい。
その時、ノアが剣を大きく振りかぶった。
彼女は怒りを隠さずに魔力を注ぐ。
太陽のように眩い光が刃から発せられていた。
「外道魔王が! お前には不可避の死を与えてやろうッ」
ノアの叫びと共に斬撃のブレスが放たれる。
それは上空のリエアに向かうも、途中で青い炎に阻まれて散った。
余波が帝都を再び襲うが、やはり被害は少なかった。
リエアは冷めた顔で舌打ちする。
「……うるせぇな。あんたが竜の力を使ったのか。邪魔だからどけ」
奴の手から青い炎が矢となって飛来する。
それは正確な軌道でノアを射抜こうとしていた。
「ぬおっ!?」
「大丈夫だ。俺が守る」
俺は幻創魔術で青い炎に干渉する。
炎は急速に小さくなると、ノアに当たる前に消滅した。
攻撃の失敗を目にしたリエアは、皮肉っぽい笑みを見せる。
「へぇ、やるなァ。分かったぞ、あんたがこの妙な空間を作ってんだな。そっちの竜やルイズの旦那にはできない芸当だ」
「ご名答。俺は幻術師のレード。元勇者パーティの一員だ」
「おほっ! 英雄サマってことかい。まさか旦那は、人間の英雄と手を結んだってことかよ!? こいつは面白ぇ冗談だなァっ!」
挑発的な言葉が次々と投げかけられる。
俺は隣の魔王に忠告する。
「ルイズ、抑えてくれよ」
「……分かっている。問題ない」
拳を震わせるルイズは、辛うじて理性を保っていた。
ここで迂闊に仕掛ければ、痛烈な反撃を食らうと分かっているのだ。
それこそが向こうの狙いだった。
俺はリエアを指差して宣告する。
「青炎の魔王。お前は目障りだ。だからここで殺す」




